サキュバス、メイドインヘブンのためにドロローサへの道を歩みました15
「は~い。じゃあ生お出ししますが~注ぎ方どうなさいますか~?」
「注ぎ方? 注ぎ方に種類なんかあんの?」
「そうよ~? スタンダードなものだと一度注ぎ二度注ぎ三度注ぎにミルコってのがあって~どれも味が違うんだ~」
「具体的どう違うんだよ」
「ざっくり言っちゃうと注ぐ回数が多い方がビールの味が凝縮されてく感じ~? 回数を分ける事で炭酸濃度が変わってね~? ポップの風味がマイルドになったり甘みを感じやすくなったりするんだって~」
「なんだい随分詳しいじゃないか」
「聞きかじりだけどね~。私ビール好きでね~? 行きつけのビアホールがあるんだけど~。そこのマスターから教えてもらったのよ~。で~。それを鳥栖さんに話したら~是非ともこの店でやってみようって事になって~」
「ふぅん。面白そうだけどその売り方ってターゲットと合ってるの? メイド喫茶とこだりビールっていまいち合致しない気がするんだけども」
「そうかな~? 多分親和性あると思うよ~? メイドカフェ来る人って基本オタクじゃ~ん? で~やっぱりオタクの人って~こだわりが強くて~かつアニメっぽい女の子が好きだと思うの~。その二つが同時に満たせたら~? これって満足度に繋がらな~い?」
「……なんか納得してしまうな」
「でしょ~? あと~二度注ぎ三度注ぎは時間がかかるから~二杯目からご注文いただくと時間が稼げるのよ~? お得~」
「そりゃ店からしたら得だろうけど客からしたら堪ったもんじゃねぇだろ」
「まぁそこはパフォーマンスでカバー? みたいな~ね~? 女の子が一生懸命ビール注いでる姿見たら~あんまりクレームとかも出ないかな~っていうのが思惑かな~」
「ふぅん。どうだろうな。俺からしたらバイトが生兵法で中途半端なビール作ってるって思っちゃうかもな」
「お~? 喧嘩か~? やるかこのヤロ~?」
「あぁすまん。ただ、そういう意見も出るかもしれんって事だ。初回だったらなおの事」
「ふぅ~ん。でも~それってあなたの感想ですよね~? 飲んでみてもらってからもう一度ご意見聞かせていただきたいな~」
「面白い。では見せてもらおうか。ビールの注ぎ方の違いとやらを」
「はいはい~じゃ、まず一度注ぎね~? これはその名の通り一度で注ぎきっちゃう方法で~? 余計な炭酸が抜けてまろやかな旨味が楽しめます~。はい。そうこう言ってるうちに注げましたよ~ご賞味あれ~」
「どれどれ……あ、なんか居酒屋で飲むより美味いな」
「そうでしょ~? ちゃんとサーバ―の管理もしてるし~炭酸濃度と温度調整もバッチリよ~樽も新しいから新鮮だよ~」
「ふぅん。凄いな。どうよピカ次君」
「さぁ? 凄いんじゃねーの?」
「ね~? 凄いでしょ~? で~お喋りしている間にできたのがこの二度注ぎだ~。これは泡のきめ細かさと旨味が口に広がるんだ~どぞ~」
「お、泡の感じで随分変わるな。なんか、洒落た店で飲むビールって感じだ。どうよピカ次君」
「知らん。美味いんじゃねーの?」
「ほら~全然違うでしょ~? じゃ、三度注ぎね~? これが一番ビールの味を感じられるような気がして~私は一番好きかな~? はい~できましたよ~どうぞ召し上がれ~」
「あ、なんか高原で飲んだビールを思い出すわ。懐かしいなぁ行きたくもない社員旅行で山登ったの。登ったつってもロープウェイでお手軽ハイキングだったわけだが、そこにあったログハウスみたいな場所でクラフトビール飲んでな~? なんかスゲー感動した覚えがあるんだわ~。休日潰れて気分最悪だったけどあれはよかった~山行きてぇ……どうよピカ次君」
「山でも海でも好きなところ行ってこい」
「行きたいのは山々なんだが休みがねー? 最近有給もクソ程使っちゃったし新規案件もドバドバ入ってくるしで暇がないのよ~さっきも課長から見積もり頼まれたしさ~まぁ課長の案件は癒着みたいなもんだから楽でいいんだけども。あ、でも最近成果上げ過ぎて出世の危機なんだよ。ヤベーよここにきて大型案件の受注は。なんとか他の人になすりつけないとこのままじゃ俺が責任者になってしまう。ちょっと根回しメール送っとこ。え~っと、鳥栖システムから新規受注くるかも。担当してくんない? っと。よーし送信! さ! 飲もう! くぅ~うまいねぇこのビール! なんだっけ? クロコップだっけ?」
「三度注ぎです~ミルコはこの次ですよ~」
「そうだったそうだった! いやしかい美味い! どうよピカ次君!? 楽しんでる!? あれ? どうしたのピカ次君!? なんか仏頂面じゃん! どうしたん?」
「もういいんだよビールとかお前の仕事の話とかは。ピチウだ。ピチウはどうなんだ。いい加減に話せ」
「あぁすまんすまん。そういやそんな感じで引き留めたんだったな。で、なにが知りたいんだっけ?」
「あいつのよく行く店やスケジュール。行動パターンすべてだ。お前の知っている事を全て吐け」
「なんだか尋問みたいだな」
「本当に尋問してやろうか? なんなら拷問に変えてやってもいいんだぞ?」
「うっわこ目マジじゃん。怖。勘弁してくれよ」
「だったら早く話せ」
うわ~どうしよ。実は適当に喋っただけでピチウの事なんてほぼ知らねーんだよな~これ本当の事言ったら絶対ぶっ殺されるやつじゃん。どうしよ。
「ん~?」
「ん? なんだ? どうしたクリスタル。妙な声出して」
「いや~? ピカ次さん、ピチウちゃんの事知りたいの~?」
「なんだお前、ピチウを知っているのか?」
「知ってるっていうか~……」
バタン!
扉が開く! それも勢いよく! 開閉はもっと静かにしよう! というか看板オープンにしてないんだろ? 誰だいったい。あ、そうか。メイド役がもう一人くるとか言ってたな。どんなガサツな奴だ。顔を見てやろう。どれどれ……
……
……なんでやねん。
「すみませーん! 遅れましたー! っと、おぉ? ピカお兄ちゃんにピカ次お兄ちゃんじゃん。どうしの? 二人して」
ピチウよ。なんでお前までこんなとこに来るねん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます