サキュバス、メイドインヘブンのためにドロローサへの道を歩みました9

「で、コースはどうしますぅ~?」


「コース。そういうのもあるのか」


「っていうかぁ~? そういうのしかないんですよね~」


「ふぅん。コースの種類と概要は?」


「えっとね~……はい。この邪経典イービルバイブルを見ていただけると分かるんだけど~ワイトコースがソフトドリンク飲み放題で千五百円。ゴーストコースがそれにノンアルコールカクテル追加で二千円。バフォメットコースがアルコール追加で三千円。サタンコースが高級酒追加で三千五百円。ルシフェルコースは一万円で当館オリジナルのお酒、失楽シリーズをお楽しみいただけます~」


「最後の大丈夫? 酒税法に抵触しないんですか?」


「大丈夫大丈夫~そういう設定なだけだから~ちなみに~失楽シリーズは失楽の純血、失楽の花蜜、失楽の後光っていうのがあるんだけど~それぞれ流通ワイン、養蜂場のミード、ダルマだよ~?」


「言っていいんですかそれ」


「まぁ大丈夫じゃないかな~? 知ってる方が頼みやすいし~」


「ふぅん。ちなみに時間制限は?」


「三十分で~す」


「三十分でダルマ五本空けないと元取れないのか。さすがに厳しいな」


「あ、元と取るとかさもしい事考えるんだ~輝さ~ん。こういうお店でケチるのは野暮天よ~? 料金が高いのはその分サービス料も入っているからなんだからね~? その辺りちゃんと理解してね~?」


「まぁ確かに“サービス料”って名目にすると途端に渋る奴もいますからね」


「そうなのよ~私もモデルの仕事する時はけっこう大変でね~? ちょっと高めに設定しとかないと時間ギリギリまで拘束されて参っちゃうのよね~高すぎても依頼こないし~」


「大変そうですね。どっかの専属になったらどうです?」


「う~ん。起用してくれるところがあればいいんだけどね~? ほら~私くらいの身長の人ってそういないでしょ~? だからブランドは限られてて椅子の取り合いなのよ~」


「なるほど」


「ま、正直フラフラしてる方が楽だし~? やりたい事やれてるから別にいいんだけどね~?」


「そんなもんですか」


「そんなもんそんなもん~。あ、そうそう~今更だけど~、敬語はやめてね~? なんだかヨソヨソしいから~」


「申し訳ないんですがあまり親しくない方に気安く話すのは慣れてないもので」


「そうなの~? じゃ、親しくなろっか」


「え?」




 チュ。




「……」


「はい。これで友達ね~? で、どのコースにする~?」


「……サタンで」


「はいは~い。サタンね~? じゃ、弟君はワイトでい~?」


「って、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!」


「キャッ! なにぃ~? 急に大きな声出すからびっくりしちゃったじゃな~い」


「びっくりしたのはこっちじゃゴラァ! いきなりなんだぁ! 俺の頬に何したぁ!?」


「なにって~kissだけど~? K・i・s・s。キッス~」


「いきなり何さらしてくれとんねん! こちとら婿入り前(?)やぞぉ!?」


「え~? だって~敬語止めてっていっても聞いてくれなさそうだし~? 仕方ないかな~って?」


「仕方ない事あるかいボケェ!? お前ホンマあれやぞ!? なめとったらボコスカにいわしたるからなぁ!?」


「あ、全然関係ないんだけど~ボコスカウォーズって知ってる~?」


「なに話そらしとんねん! なにぃ!? ボコスカウォーズゥ!?」


「そ~そ。ボコスカウォーズ~。昔~友達のお兄ちゃんにやらせてもらったんだけど難しくってクリアできなかったんだ~」


「そらお前、移植版はファミコンのスペックの関係で味方キャラクターが少なくなってるうえに運要素が強いから子供がやってもクリアなんかできんよ。俺だって今やったら難しい」


「だよね~。輝さんはクリアしたの~?」


「ま、一応」


「え~!? 凄~い! あ~そうだ~今度一緒にゲームやろうよ~! このお店のテレビにケーブル繋げてさ~」


「お、いいねぇ! どうせならドカポンやろうぜドカポン。俺今度レトロハードの互換機とソフト持ってくるからさ」


「ほんとに~? 約束だよ~?」


「あぁ。ついでに知り合いも連れてくるよ。そいつ社会不適合者でさぁ。いっつもガンプラの話ししてんだよねぇ」


「え~? それって店長じゃな~い? この前の飲み会にいた~」


「そうそう。あ、そういえばあの時いたな店長。すっかり忘れてたわ」


「も~可哀想じゃ~ん。でも~確かに店長来てくれたら面白いかも~」


「だろぉ!? 店長頭おかしいけどめっちゃいい奴で面白いんだよ! 俺めっちゃ好きでさぁ!」


「へぇ~お友達なんだね~」


「いや、友達って程でもない」


「え? そうなの?」


「まぁ、うん。気は合うけど別に友情は感じてないかって」


「そうなんだ~あ、はい。これ瓶ビールね」


「あ、どうも。あれ? 俺頼んだっけ?」


「頼んでた頼んでた。“ヘィネケェン一丁! 大盛でぇ!”って言ってたよ~?」


「そっか。じゃあいっか」


「うんうん~大丈夫大丈夫~。で、弟君は~……はい。コーラね~? 後、サービスでお菓子あげちゃう。これはお姉ちゃんがこっそり食べるように隠しておいたミニポテトチップスだからね~? しっかり味わって食べるんだよ~?」


「……」


「おいピカ次。ありがとうくらい言ったらどうだ」


「……お前……後で本当に覚えてろよ?」

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