サキュバス、メイドインヘブンのためにドロローサへの道を歩みました7

 キャバクラの楽しみ方なんて知らねーんだよこちとら漫画アニメゲームの話しかできないんだから。そりゃキャバ嬢が「あ、私最近水星の魔女観てるんですよ~いいですよねディランザ」なんて言ってきたらこっちも「いやぁ分かってらっしゃる! 鎧兜みたいなカッコよさがありますよね!」と応酬もできるというのに。そういえば最近ようやくダリルバルデを買ったんですよえぇ! いやぁやはり最近のプラモはデキがいい。ディティールの細かさと稼働領域の広さなんて昔のモデルと比べ物にならんね。部分部分塗装など施さなければならんがパチ組でも全然問題ないレベルだしこれは是非とも皆様にがっていただきたい。お近くのおもちゃ屋さんなどにGO!





「お客様。到着いたしました」


「あ、はい。ありがとうございます」


「すみません電子決算でお願いします。はい」


「はい、はい、はい。こちらレシートでございます。ご乗車ありがとうございました」


「ありがとうございました」


「ありがとうございました」




 ドアオープン。ガチャリ。




 うん、外に出て解放感。いい天気だなぁ。散歩行きたい散歩。散歩行こうよ。最近開発で広くなったところがこの近くにあるし。都市って生物だよな。人と建築物とディペロッパーが入れ替わり新しくなって成長していく。なんだか夢があるよ。ここ数年同じ毎日を繰り返している俺とはまるで違う。俺の時は止まったままだ……あぁ、歳だけを重ねて何をやっているんだろう……




「時間は八時五十三分! 出勤前だが余裕はない! さぁ走りますよピカ太さん! タイムカードを押さなければ!」


「なんだか疲れちゃったから帰るわ。お疲れ」




 辛いからお家帰って寝たい。もう無理。




「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? なに寝ぼけた事言ってんですかここまで来て! ほら! 早く行きますよ! お酒もありますから!」


「今飲んだら確実に深酒になってしまう……」


「いいんですよ深酒したって! 人生そんな日もありますって! ほら! 早く! じゃないと私が叱られてしまうんですから!」


「お前一人で行ってこいよ」


「約束したでしょう約束! 悪魔との約束破ったら大変なことになるんですよピカ太さん! 分かってるんですかぁ!?」


「もう俺の人生大変な事になってるんだ……今更どうなったって構やしないよ……」


「なんなのもぉこのいきなりのダウナァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ! ちょっとマジでしゃっとしてくださいよめんどくさい! 十代二十代の女の子なら可愛いですけどピカ太さんがヘラってもウザいだけですよ」


「それはヘイトスピーチだぞ。ピエン系おじさんがいたっていいじゃないか」


「建前上は許されるけど本音はみんなウザいと思いますからねそんなもん!」


「年齢や性別によっては病む事も許されないのか……窮屈だなこの国は……」


「なんか深そうな事いってますけど浅瀬もいいところですから! 大人なら自己管理くらいしてください!」


「お前それは問題発言だぞ。俺がマジに病んでいたらどうするんだ」


「マジで病んでるならね! どう考えてもピカ太さんはなんか一人で妄想して一時的な感傷に浸っているだけじゃないですか!」


「おぉ、よく分かったな。その通りだ。実は、もうさっきまでの落ち込んだ気持ちも何処かへ消え去り酒を飲む事しか頭にない」


「ならとっとと行きましょうよ! 時間が! 時間がないんですよぉ! 本当にもう! やばいんですって!」


「そうだな。丁度待ち合わせていた奴も来たようだし、そろそろ行くとしようか」


「へ? 待ち合わせ?」


「そう待ち合わせ。ほら、そこにいるだろう」


「え? 誰? 誰ですか? ……あ! あの人は……!」


「どうやらこちらに気付いていないようだな。呼ぶか。お~~~~~~~~~~~~い! こっちこっち~~~~~~~~~~~~~~~~!」




 ……




「……街中で騒ぐな。大声で呼ぶな」


「よぉ久しぶりだなピカ次。どうしたんだよそんな顔して。寝起きか?」


「“お前ら”と知り合いと思われるのが心底嫌なんだよ。恥ずかしい人間にしか見えんぞ」


「なんだそんな事か。大丈夫大丈夫。かき捨てだから」


「……」


「ピカ太さんが呼んだのってピカ次さんだったんですね。あ、どうも久しぶりです。貴方のラブにレボリューション。島ムー子です」


「なんだその恰好。ふざけてるのか?」


「ふざ!? え? ふざ!? ふざけてないですよ! ピカ太さん! なんですかいきなりピカ次さん! 失礼じゃないですか!?」


「まぁお前は存在が失礼なんだから許してやれよ」


「え? なに? 私悪くないよね? なのになんでこんな悪者みたいに扱われてるの? 理不尽」


「どうでもいいが、何の用だ。わざわざこんなところまで呼び出して」


「そうだな。積もる話もある。ちょっと場所を移そうか。行くぞムー子」


「はいはい…はい!? おわ! 出勤一分前! これマジで死ぬ! ちょ、ちょっと先行ってるんでお願いしますね! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! デスペナは嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


「……なんだ? あいつ」


「さぁ。更年期だろ」




 適当に話を濁して、向かうはメイド喫茶。

すまんなもう一人の俺よ。道連れになってもらうぞ。

 



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