サキュバス、家族旅行時の父親のテンションにマジついていけない感じでした5
チーン。
エレベーター停止。六階。部屋まで移動移動……到着。
「じゃ、荷物置いてこい。すぐ出発するからな」
「はぁい」
「承知いたしました」
よし。それでは俺も部屋に入るかなっと。
ドアオープン。インルーム。お、一人用だけどそこそこ広いな。ソファも机もある。こりゃ夜にゆっくりできそうだ。普段観ないテレビでもつけながらだるーく夜更かしでもしようかな。いやぁいいねホテルってのは。現実から隔離された自分だけの世界。疑似的マイプレイス。この整理された空間はいつになっても胸が高鳴る。どれ、早速ソファに腰かけてみるか……
ガンガンガン!
っと、なんだ? このけたたましくドアを叩く音は。ノック音ストレスフルだぞ。
「お兄ちゃ~~~~~~~~~~ん! まだ~~~~~~~~~~~~~!? 遅いんですけど~~~~~~~~~~~~~~!」
「ピカ太様~~~~~~~~~? 出立の準備完了しておりませんでしょうか~~~~~~~~~~~~~?」
……
……ま、予想はしていたけどね?
けれどもさ、一応このホテル、高いとこじゃん? しかもお前らの部屋ワンランク上げてもらってるんだわ。普通ちょっと部屋の中でワチャワチャしない? 「うわぁ~~~~~~~凄い部屋だね~~~~~~~~~~! 見て! 景色もいいよ~~~~~~~~~~~~~~!」とか言ってさ、はしゃぎ過ぎちゃったりするもんじゃないのか? それで俺の方から「おいおいおいおい~~~~~~~~~~~いくらなんでも~~~~~~~~~~~~~いくらなんでもはしゃぎ過ぎぞなもし~~~~~~~~~~~~~いくらお高めのラグジュアリーホテルといえども~~~~~~~~~~~~~自重しなされ自重~~~~~~~~~~~」とかいって迎えに行くまでが定番じゃん。これじゃ逆だよ。なんでお前らそんなに行動が早いんだよ。経営者のマインドでもお持ちなのか?
「お兄ちゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん! ホテル到着から既に十分以上経過しているよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!? ゆとり教育では時間の大切さを習わなかったの~~~~~~~~~~~~~~~~~~!? タイムイズマネだよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!? 失った時間はどうやったって取り戻す事はできないんだよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!? よく”今から頑張れば巻き返せる”なんて言ってる人いるけど~~~~~~~~~~~~じゃあ最初から頑張っていれば今から頑張るその努力必要ないって事なんじゃないの~~~~~~~~~~~~~~~! 非効率的じゃな~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~い!? そんなモラトリアムに汚染された人間にお兄ちゃんはなりたいの~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!? どうなの~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?」
「ピカ太様~~~~~~~~~~~~~~~~~~善は急げと申しますし~~~~~~~~~~~~~~~~~あまりお時間を無駄にされるのはよろしくないかと~~~~~~~~~~~~~~~~人間の一生は短いと聞き及んでおります~~~~~~~~~~~~~~~ちょんまげの方が仰っておられました~~~~~~~~~~~~~人生五十年~~~~~~~~~下天の内をくらぶれば~~~~~~~~~~~~~~夢幻の如くなり~~~~~~~~~~~~~~~と~~~~~~~~~~~~~~~~~ピカ太様もぼやぼやしておらず~~~~~~~~~~~~~~~~早急に参られるのがよいかと~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
モラトリアムとかいうな。織田信長をちょんまげの人と評すな。
くそうるさいなぁもう。出るよ。ほら!
ソファから離脱。
ドアガチャリ。
「遅いよお兄ちゃん。もうちょっとテキパキ行動してよ」
「ピカ太様。大変申し上げにくいのですが、私もマリさんと同意見でございます」
「お前らなぁ……こういう時子供は普通、普段見なれないホテルの部屋を前にして浮かれ気分でついつい集合するのを忘れちゃうってのが定番だろう? なに速攻で荷物置いて出てきてんだよ」
「え? だって夜帰ってくるんだよ? 別にその時にはしゃげばよくない?」
「まぁそうなんだが……」
「ピカ太様は少し非合理的な面がございます。それはそれで貴族的美点ではございますが、もう少し短命種族である人間らしく、計画性のある人生を送った方がよろしいかと」
「そのナチュラルに見下したような言い方やめろや。種族問題に発展してえらい事になるぞ」
まったくどいつもこいつも好き勝手言いやがって。なんかホテルの部屋入って楽しい気持ちになってた俺が馬鹿みたいじゃん。確かに最先端テクノロジーを享受しこの世の娯楽のだいたいを若い内から経験できる令和キッズからしたらホテル泊なんてのは茶飯インシテントなのかもしれん。しかし平成チルドレンの俺はもうなんかホテルってだけで別世界に足を踏み入れたみたいになってドキドキワクワクなんだよ! お前達には分からないだろう! 普段家で不自由なく暮らしているものの何か刺激が足りないそんな日々に訪れた旅行という名の非日常で体験する宿の力を! あぁ、この場で力説してやりたい。俺にとってホテルがいかに特別なのかという事を!
「どうでもいいけどもう行こうよお兄ちゃん。ほら! 早く早く!」
「ピカ太様。こっちでございますよこっち」
「分かったよ! 袖を掴んで走るな! この服結構高いんだからな!?」
そんな暇もなく、連れ去られてしまう現実。子供の力強えーなオイ。
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