サキュバス、家族旅行時の父親のテンションにマジついていけない感じでした4
いいよもう! 気にせず進もう! 俺に過去を振り返る時間はないんだ! ホテルに向かっていざ参る!
と、言いつつ駅直通のラグジュアリーホテルを取ったので数分で到着するのだがね!
ふふ……そうさ、今日に備えて塗装済みのレッドミラージュとアシュラテンプルをフリマサイトに出品し旅費を蓄えていたのさ。ククク……ガレキは作るのに手間がかかる分、ガンプラよりも高値で売れるからな……既にホテル代がまるまる賄えるくらいの額が口座に振り込まれているのよ。それにしてもまさか金のために制作済み作品を手放すなどとは思わなかったが、俺のリッチな休日とマリ、プランのハイソサエティエクスペリエンスのための犠牲だ。致し方なし。それに、こんな事もあろうかとファイブスターストーリーのガレキは全て複数購入してあるんだ。また作ればいい……名残惜しくもあるがこれもまた運命。あの二機には新たな持ち主のところで大事にされてほしい。さて、スタスタ歩こう。スタスタスタスタ。
「お待たせ」
「遅いよ。遅すぎるよ」
「すまんすまん。じゃ、行こうか」
マリの悪態も華麗にスルーしてスタスタのスタ。なぁに。子供なんて憎たらしさがデフォルトよ。気にしたら負け負け。
「プランちゃん。あれ知ってる? 美味しいヤミー! ってやつ」
「はい。存じております」
「……」
「今度ね? クラスのみんなで給食の時やろうかなって」
「素晴らしい考えだと思います」
「でしょーーーー!? あと、その様子を動画にしてYouTubeにアップしようと思って!」
「まぁ! 素敵ですね!」
「……」
「野球の再生数も伸びてるし、このままインフルエンサーになっちゃうかも!」
「夢が広がりますね! マリさん!」
「……」
それはできればやめてほしい!
YouTubeにアップするのも給食でデリシャッ! 謝! 謝! 謝! するのも!
しかしこれもジェネレーションギャップというか、オールドタイプである俺の感覚では判断できない部分もあるから、頭ごなしに否定するのもよくないだろう。一旦持ち帰って有識者の判断を伺う事にする。
「でも、先生が許してくれるでしょうか」
「大丈夫だって! だって志田先生(担任)ってニコ生で育った世代だよ! 理解示してくれるって!」
「それもそうでございますね! で、私も参加いたします!」
「うん! 約束ね!」
「……」
……ニコ生やってた世代がもう社会人になってるのか……時代の流れを感じるな……なんか、そこはかとない不安を感じるが、言葉にすると叩かれそうなのでやめておこう。
そんな事よりホテルに到着だ。うぅん、豪華。連絡通路からしてモダンな造りだったが、中はもっと凄い。THE 高級って感じ。ゴス美と行ったホテルライヒを思い出すぜ。まぁあれもつい数日前の事であはあるが。
そういやあの日以来ゴス美がおかしいんだよな。普通に喋るんだけど、どうも料理がゲテモノになってたり俺の洗濯物だけ畳んでくれずしわくちゃだったり……
いやね? 俺も申し訳ない事をしたとは思うけれども。でもそんなお前、婚前不純行為なんてお前、ねぇ? 許されるもんじゃねぇよ。確かに据え膳食わぬはっていうし、あそこまでいったらもはや了承したも同然ってのも分からんでもないし、結果として逃げちゃったし分からんでもないけれども……けどさぁ……
……
……ちょっと続くようなら対策考えよ。
でも今は! そんな事より!
「どうだ二人とも! 中々いいホテルだろう! この宿を取るためにガレキを売っぱらったのだ! 喜んでくれたかな!?」
この瞬間を楽しもう! メメントモリの精神マジ大事! 今日死ぬと思えばなんでも思いっきり楽しめるんだ! さぁ! マリとプランもエンジョイしようぜ! 最初で最後のこの時間をよ!
「えぇ? あぁ……うん……」
うん? なんだぁマリ。その微妙な返事は?
「あん!? なんだマリ! このホテルは気に入らなかったのかね!?」
「え? いや? 凄くいいホテルだと思うよ? わぁ~~い。お部屋どんな感じかな~~~楽しみだな~~~」
白々しい。
マリの奴、何か隠しているな?
「プラン」
「はい。なんでございましょうかピカ太様」
「マリの様子がおかしいのだが、何か知らんか?」
「お、おかしくなんかないよお兄ちゃん! ね! プランちゃん! おかしくないよね!」
「そうですねマリさん。実はここには一度、私とぺーと一緒に来た事を隠していらっしゃるくらいですね」
「ちょ! ちょっとプランちゃ~~~~~~~~ん! なんで言っちゃうの~~~~~~~~~~~~~?」
あ、なんだそういう事。
「なんだ。来た事あったのか。言えばいいのに」
「そうですよマリさん。別段隠し立てするような事でもないのですから」
「だって、せっかくお兄ちゃんが予約してくれたのに、”私二回目なんだ~”なんて言うの、申し訳なくって……」
「マリ……」
お前、普段クソガキムーブかましてるくせにそんな気遣い心遣いをしてくれていたのか……くぅ! 心に沁みやがるぜチクショウ!
「それにお兄ちゃん、ここを予約するためにロボットのプラモデル? を売ったっていうし……」
「プラモじゃなくてガレキ。ガレージキットな? 二つの違いはというと、使われるている素材や組み立ての難易度などが……」
「知らないしどっちでもいいし説明もいらないよ!」
え? いらない? お子様なら結構興味ある話題かなと思ったんだけども……
「もういいよ! チェックインしようよ! 早く! フロント! あんまり遅いとまた先行くからね!」
「分かった分かった」
……少しばかりほっこりしてしまった。いかんいかん、俺らしくもない。気を取り直して、受付を済まそう。さ、移動移動と……よし、来たぞフロント! するぞ確認!
「いらっしゃいませ」
「あ、予約している輝ですが」
「はい。ありがとうございます。恐れ入りますが、フルネームを伺ってよろしいでしょうか?」
「あ、輝ピカ太です。十時に予約している」
「ありがとうございます。本日十時に二部屋ご予約の輝ピカ太様でございますね。では、お手数ではございますがこちらに記入お願いいたします」
「あ、はい」
え~~~~~~~~~っと、住所氏名に生年月日と年齢っと……はい。記入完了。
「あ、書けました。これでお願いします」
「ありがとうございます。お預かりいたします……はい、確認いたしました。それでは輝ピカ太様、お部屋は六〇一と六〇二でございます。こちらカードキーでございます。お出かけの際にはお預けになられなくとも問題ございませんので、どうぞよろしくお願いいたします。なお、本日お部屋に余裕がございましたので、二名様でご利用になる方はご予約よりも広いものをご用意しております」
「あ、そうですか。ありがとうございます」
「それでは、お部屋には奥のエレベーターをご利用ください。どうぞごゆっくり」
「あ、はい」
……俺の部屋はグレードアップしてくれんかったのか。まぁいいけど……
「本日はご利用ありがとうございます。お荷物お持ちします」
「あ、はい。ありがとうございます」
高いホテルは荷物持ってくれるのか。ありがたいんだが、なんか申し訳ないな。
チーン。
エレベーター到着……うわぁ中も豪華だなこりゃ。花とか飾ってあるよ。
「どうぞ」
「あ、どうも」
「それでは、お荷物はお部屋にお持ちいたします」
「あ、はい」
……
あ、一緒のエレベーター乗らないんだ。
まぁ、そりゃそうか。客用だもんな、これ。
「お兄ちゃん」
「あ? なんだ?」
「何か言う度語頭に”あ”ってつけるの、やめた方がいいと思うよ?」
「……言ってた?」
「言ってた」
「……そっか」
ホテルの雰囲気に呑まれてコベニちゃんみたいになってたんだな。完全に無意識だった。気を付けよ。
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