サキュバス、アルパチーノとロバートデニーロの不仲説を聞いて思わずオレンジを口に含みました38
「最悪意識を乗っ取っるという手段もありますが、さすがにそれをやっちゃうと色々と問題がありますので、あくまで最終手段とさせていただきます」
「ずっと使うなそんな手段。いつぞやに課長が言ってたぞ。意識ない相手と関係を持つなんてのはサキュバスの矜持に反するみたいな事」
「その辺りは個人の価値観ですので……とはいえ、精神論云々関係なく正式な手順を踏まないと業界の信用が損なわれますから、経営者としても極力避けたいところではあります」
どの業界のどんな信用だそれは。
いかん。突っ込みだしたらキリがなくなる。もうここは一旦話を切り上げてさっさと部屋に移動しよう。
「どの道俺はそんなつもりはないから、何かいい方法を考えておいてくれ、じゃあ、そんなところで。悪いが部屋を借りるぞ」
「はいどうぞ。オープンユアハートについても検討いたします。それでは、ごゆっくり」
会話終了。
そんなわけで移動。
扉を出て階段。上り切り廊下。渡って直線。部屋にIN。
……広。
なんという事だろうか。一室にしてリビングのようなゆとり。そんな中で冷蔵庫、電子レンジ、トースター、ウォーターサーバー、コーヒーメーカー、ジュース各種、氷、果物、パン、生ハム(原木)、ワインセラー、各種蒸留酒が置かれたコーナーが大きく陣取っている。これだけの質、量を有する設置物があるのにも関わらず悠然と広がる部屋面積。なんだこれ? え? スイートルーム? なんか腹立つなぁ……
「あ! ピカ太さんようやくきましたね!? この部屋凄いですよ! 専務は客室と言ってましたがもはや住めます! 居住ですよ居住! いやぁすごい! それにほら見てくださいよこのテレビ! なんとスーファミが内蔵されてるんです! ね!? 凄いでしょ!」
「話には聞いた事あるが本当にあるんだなそんな奇怪家電。テレビデオといいCDラジカセといい、日本人は本当にフュージョンさせるのが好きだなっと、なんだこのゲーム?」
「ドルフィン・ザ・エコーというらしいですよ! 説明書がないんでなんのこっちゃ分からないんですけど、割と中毒性があります! 目的とかまったく不明なんですがグラフィックがいいですね!」
「……確かにスゲーぬるぬる動くけど、センスが海外なんだよなぁ……なんでイルカを主人公にしちゃったんだろう。動物を操作するゲームなんてドンキーコング以外全部外れてるよな」
「そんな事ないですよ。風のクロノアとかテイルコンチェルトとか面白いですよ?」
「あいつらは擬人化じゃねーか。認められねーよ」
「拗らせたケモナーみたいな事言いますねピカ太さん。ところで、一緒にゲームしません? ボンバーマン入ってますよ?」
「やらない」
「え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~? そんな事言わず~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~! 一緒にやりましょうよボンバーマ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ン! 絶対楽しいですよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~?」
「うるさいなぁ……俺は忙しいんだよ。お前はそのイルカのゲームやってろよ」
「イルカ飽きた~~~~~~~~~~~~~~~~爆破したい~~~~~~~~~~~~~~兎にも角にも爆破炎上させたい~~~~~~~~~~~~~~~~~~やりましょうよボンバーマン~~~~~~~~~~~~~~~~~~~もう起動しちゃいましたし~~~~~~~~~~~~~~~~一緒にみそボンにイライラしましょうよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
「うるせぇなやらないっつーの。だいたいこれスパボン一作目じゃねーか。まだみそボン実装されてねーよ」
「じゃあドクロで苛立ちましょうよ~~~~~~~~~~~~~~行動制限されて不快度指数をあげていきましょうよ~~~~~~~~~~~~~~~~~」
「なんでお前はさっきからリアルファイト止む無しなプレイを推奨してくるんだよ」
「なんでって、さっきも言ったじゃないですか。私はピカ太さんの暴力欲求を根本から直すため、あえて煽りまくっているんですよ。私の煽りに耐え、非暴力を貫けたら大したもんですよピカ太さん。その時こそ日本のガンジーを名乗れますよ。だからファイト! ファイトです! 頑張ってください!」
「……さっきゴス美と話したんだがな。お前が舐めた事言う度に報告してほしいとの事だ。報告の回数分、地獄研修のレベルが上がるんだってよ」
「え、ちょ、待って。それはちょっとピカ太さん。リアルにやめてもらってもいいですか? 無理」
「なに? そんなに酷いのその研修」
「酷いもなんてもんじゃないですよ。地獄研修はその名の通り地獄の研修でして、八熱八段階と八寒八段階のコースがあるんですが、どっちにしろ死ぬより辛い事態になる事確定でして、とにかく尋常じゃないんです」
「ふぅん。ちなみに今はAの三つってたな」
「八熱の衆合ですね。不眠不休でテレアポを実施する研修です。ノルマはなく、三日間ひたすら荷電して一日寝るの繰り返しを二十サイクル繰り返す地獄です」
「どんだけアポとっても終わらないの? キツくないそれ?」
「キツいに決まってるじゃないですか。何度心が折れても叱咤叱責により強制荷電ですよ? 眠くて頭も回らないので、意識朦朧としながらひたすら呪文のようにテンプレートを繰り返す作業です。いやぁ、しんどい」
「ふぅん。ちなみにその次は?」
「叫喚。これは飛び込みですね。衆合と同じく、三日間ひたすら飛び込み一日眠るという営業を四十サイクル繰り返すんです。これ、GPS付けられててサボる事もできず、飲食も制限されているから下手したらマジで死ぬんですよ。二度とやりたくないですね」
「そっか。じゃ、課長に電話するわ。二回目頑張って」
「ちょ! 鬼! 悪魔! 人でなし!」
悪魔のお前が言っちゃ駄目だろその台詞……っと、あれ?
「……命拾いしたなムー子」
「え?」
「圏外だこの部屋」
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 神は我を見放していなかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! センキュージーザス!」
悪魔が神に感謝するな。
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