サキュバス、アルパチーノとロバートデニーロの不仲説を聞いて思わずオレンジを口に含みました39
だが、どうして圏外。何故? これだけもてなす用意がされているのに電波だけ不備が生じているという違和感。今日日中継施設など簡単に増設できるだろうに行わないのは不自然すぎる。という事は、これは意図したものか?
「ふぃ~~~~~~~~~~~~~~~安心したら喉渇きぴっぴ! せっかくだし私はこの特別な処置を行って高いリラックス効果が付与された小麦を原材料とする茶色い瓶に入ったドリンクを炭酸で割って飲んじゃお! あ、ピカ太さんも飲みますか?」
「あぁ……」
もし仮に何らかの理由で電波を遮断しているのだとしたらどういった理由が想定される? これについては、最初から圏外なのか、俺達が来る事が分かってから圏外にしているかによって話が変わってくるのだが……いや、後者の場合は無理があるな。そもそも俺がここに来ることはデ・シャンには伝えていない。時間的猶予は玄関チャイムを押してから奴のいる部屋に入るまでの間。そんな僅かな時間にキャリア最大手のスマートフォンの通信を妨害する設備を用意するなどできるだろうか。普通に考えればまず不可能。できるはずがない。
「ピカ太さんどうやって飲みますか? 炭酸で割ります? 水? お湯? あ、それかそのまま? そのままいっちゃいますか? 男気溢れる原液飲みで小粋な朝を満喫しちゃいますか?」
「そうだな……」
が、それは普通の人間であった場合の話。デ・シャンはあくまで悪魔なのだ。人知の及ばない超常的な力を使って即座に対応したかもしれんし、もしかしたら結界的なファンタジーパワーで一時的に送受信を妨げているのかもしれない。しれないが、俺にはそれを知るすべがない……くそ、こんな時ピチウかゴス美がいれば断片だけでも察知できるかもしれないというのに。
……
……ゴス美はどうだろうな。デ・シャンはあいつの上司だから、いざとなったら俺を見捨てるかもしれない。本日なにやら妙な告白をされたがあいつとて悪魔である事に変わりなく油断はできん。用心しなければ……まぁ、しかし、最初の話に戻るのだが、仮にデ・シャンが何か企てをしているとして、その理由がさっぱり皆無なわけだ。何を狙っているのか全然見当もつかない。というか、そもそもこの部屋から出れば電波は届くわけだし、やはり最初から携帯機器の使用ができない仕様となっていると考える方が妥当だろうか。そもそも外部との通信を遮断したとして俺が困る事などないしな……うん、そうだそうだ。
……うん? もしデ・シャンが親父と繋がっていた場合どうだ? 連絡ができず助けを呼べない状態というのは、奴にとって好都合ではないか? そうだ。親父にとっての天敵はお母さんだ。お母さんの法力、呪術は規格外。大概の攻撃を受け付けない親父にほぼ唯一といっていいダメージリソースを持っている相手。そことの連絡を断ち切られたとしたら……
「はい、できましたよピカ太さん! ムー子特性! 大ジョッキストレートです! どうぞ召し上がってください!」
「あぁ……」
……考え過ぎか。そもそもデ・シャンと親父が繋がっているという前提を証明するための根拠が浮かばん。俺の知らないところで繋がっている可能性もなくはないかもしれんが、だったらもっと早くに動いているだろう。まぁこれも仮定の話だからなんともいえんが、発想の起点が悲観であるため建設的な想定ができていない気がするな……だが万が一……
うぅむいかん。ナーバスになっている。少し落ち着こう。お、ドリンクあるじゃん。そういえばなんかムー子がぶつくさ言ってたな。何を用意したかしらんが、ま、色的に麦茶か紅茶だろう。麦茶は嫌いだが飲めん事もないし、一旦喉を潤して思考をリセットするか……
「さぁ始まりました今回のハイライト! 輝ピカ太! 手にしたジョッキを口に運んだ! 休暇の朝に始まるショータイム! 飲んで飲まれて涙して! 僕らは大人になってきた! 日頃の苦しみ一滴! 宴の席で呑み込んで! 頑張る明日の糧としよう! そーれ! 仕事のためならエンヤコラーーーー! ピカ太の飲んでるとこを見たーーーー! はい! よいよいよいよい酔いどれ日和! せいせいせいせい世界一ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
「……」
「飲み干した~~~~~~~~~~~~~~この男前~~~~~~~~~~~~~~~~! 今日はいい日だ酔っ払い! 楽しく笑って酒だ酒!」
「……ムー子」
「はぁいなんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? おかわりですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 今注ぎますよ喜んでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「これ酒じゃねーか!」
「今更ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁそしてジョッキで殴打するのやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
いかん! 意識が散漫としている! つい乗せられて飲んでしまった俺も悪いがムー子この馬鹿野郎! 酔ってる場合じゃねぇんだぞ今は!
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