サキュバス、アルパチーノとロバートデニーロの不仲説を聞いて思わずオレンジを口に含みました26
スマフォタップタップ。
連絡先表示。
タップタップ。
トゥトゥトゥ。
トゥトゥトゥ。
トゥルルル。
トゥルルル。
トゥル……
「はい鳥栖です」
「あ? 課長? 俺だけど」
「どうしたんですかピカ太さん。御用があるなら直接部屋にいらっしゃればいいのに」
「いや、もう出るから、一旦戻るのも面倒くさいなって」
「出る? タクシー到着までまだ時間はありますが……」
「いや、諸々考えてみたんだが、あいつらの狙いは俺なわけじゃん? 一緒に行動した場合、マリやプランは勿論、罪なきタクシー運転手まで被害に遭うんじゃないかと思って」
「そんな事ありますかね。向こうは会う時間と場所を指定しているんですよ?」
「それが全部阿賀ヘルの独断だった場合、全部反故にして親父が動いてくる可能性もあるなと」
「……なるほど。その発想はありませんでした」
「というわけで今から別行動でデ・シャン宅まで行ってくるから、ちょっとムー子借りていく」
「あ、はい。それはどうぞ、あんなクソでも囮か盾くらいにはなるでしょうから」
「おやぁ? なにか失礼な事を言われている気がしますねぇ? ムー子レーダーにそんな気配をムムッ! っと感じますよ? ゴス美課長~~~~~~~~~~~~~~~!? 聞こえますか~~~~~~~~~~~~~~~~!? 今私の悪口言いましたか~~~~~~~~~~~~~~~~!? ゴス美課長~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?」
「すみませんピカ太さん。ちょっとムー子に代わってくれませんか?」
「あいよ……おいムー子」
「はい。なんですか?」
「課長が代われってよ」
「あ、すみません。今いないって言ってください」
「了解……あ、もしもし課長? ムー子、今いないって」
「……そのまま少々おまちください。」
♪~ねぇ、そんな事より私の●●●●!
ちょっと見ていかないかしら!
ラビアンローズのラブアンドピース。癖になるでしょ? ~♪
「あ、私に電話です。ちょっと出ますね……はい! 貴方の死後にもこんばんわ! 年中無休でラブ熱中! 島ムーk……はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃすみませぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん課長ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! いえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ決してふざけているわけでわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ申し訳ございませぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん……」
トゥルリン……
「……」
切れたか。なんかムー子の奴、この一瞬で一気に老け込んだな。あしたのジョーみたいだ。
「もしもしピカ太さん? 失礼しました。それでは、ムー子は好きに使っていいので、どうぞお気を付けて」
「あぁ。それじゃ」
プッ。
ツーツーツーツー……
さて、じゃあ、準備して行くか。まぁ準備といっても着替えるだけだし、そこまで時間がかかるもんじゃないんだがね。服ももう面倒くさいから居間に置いてある戦力外廃棄処分待ちの二軍を着用しよう。服って不思議だよな。もう着ないかなって思っても何故か捨てられずこんな風に肥やしになってしまうんだから。それで久々に着てみると、「お、なんだなんだ意外といけんじゃん」みたいな感じになるんだよ。いやぁ断捨離が進まねぇよな。と、いうわけで着用完了。財布もスマフォも持ったし、いつでも出発できるぞ。
「じゃ、行くぞムー子」
「はぁ?」
「あ? なんだ?」
「いや、私まだ化粧もしてないし、そもそも服も部屋着なんですが」
「別にいいだろ。早く行くぞ」
「いや、いやいやいや。いやいやいやいやピカ太さん。このパジャマ、手に入れるの苦労したんですよ。ジェラピケのスーパーヒゲ男コラボなんですけど、めちゃ人気でどこも品切れ状態。通販サイトやフリマサイトでは転売ヤ―続出で高額取引当たり前な超レアな逸品なんですよ。それで外を歩けと? 馬鹿を仰る」
「なんで部屋着一着揃えるのにそんな苦労すんの? ジャージでいいじゃん」
「……はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……ピカ太さん。私はガッカリ。ガッカリですよ。よもやピカ太さんがそんな凡百な台詞を吐くとは思いもよりませんでした。いいですか? 女の子は何処にいたって綺麗になりたい。どこでもしこでもシンデレラ状態なんです。部屋着一着にしろ、こだわりがあるんですよ色々と。それをなんですか? ”ぬわぁんでぇ部屋着一着揃えるんのぬぃそぉんぬわぁ苦労すぅんのぉ?”ですって? いやぁもう、低俗。レベルが低い。低すぎます。女の子の気持ちとかはこの際置いておいて、個人の趣味、趣向を小馬鹿にするってアンタ、実に人間としての質が悪いですよ。ちょっとその点見直した方がよろしいかと存じますよ私はえぇ」
「……」
「お? なんですか急に黙っちゃって? やる気? やる気ですか? いいですよ私は! 個人の尊厳のために戦いますよ! そのための痛みなら甘んじて受けますよ! 戦って死ぬよりも個人の自由が奪われる方がよっぽど怖いですからね! さぁどこからでも来るがいいですよピカ太さん! しかし覚えておいてください! どれだけの痛みを伴おうと、私は決して負けはしないと! 自由万歳! ジェラピケ万歳! スーパーヒゲ男万歳! さぁやりなさいピカ太さん! 私は逃げも隠れもしませんよぉ!?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……えぇっと、ピカ太さん?」
「あ?」
「あの、なんか言っていただけると」
「……」
「……」
「……」
「ピ、ピカ太さん?」
「……すまんかった。お前の言う通りだ。早く着替えてこい」
「……えぇ?」
「だから、早く着替えてこいって」
「いや、それよりも、今、すまんかったって言いました?」
「言ったよ」
「……ピカ太さんが私に謝るなんて、そんな事あります? 体調悪かったりしません? 大丈夫です? おっぱい揉みます?」
「……」
「な、なんか調子狂いますねぇ。まぁいいですけど……じゃ、着替えてきますからね。待っててくださいね」
「あぁ。早くしろよ」
……個人の尊厳か。
確かに、ムー子の言う通りだ。これに関しては全面的に俺が悪い。
しかし、あいつに指摘されるとムカつくなぁ……
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