サキュバス、諸行無常の響きを奏でました25
それよりもベンチ休憩からそれなりに歩いているが一向に駅が見えてこん。なにこれ道間違えた? 馬鹿な。線路沿いずっと歩いてんだぞそんなわけあるか。なにか? いつの間にかスタンドバイミーにでもなってんのか? まぁ映画は観てないし小説は読んでないんだけど。ところであれ、原題The Body(死体)っていうらしいな。物騒なタイトルだよなぁ。
「いやぁ歩きましたねピカ太さん! しかしこの旅ももうすぐクライマックスを迎えますよ! 終わりを前にすると心なしか名残惜しい気がしますね!」
「いや、全然。早く食べて帰りたい」
「そんな事言っちゃって! 私知ってるんですよ!? この誰もが眩む美の妖精、島ムー子と一緒にお散歩できてうれしいって事をね!」
「全然ひとつも嬉しくない。一ミクロンもそんな気は起きない。なんならこの場で死んでくれねーかなーとさえ思っている。更にいえばこの俺自らお前を亡き者にしたい」
「発想が過激~~~~~でも大丈夫。それはお腹が減ってイライラしているKA★RA! 先程も申し上げましたが終着点は近いですよピカ太さん! 外資系バーガー屋は目の前です! 最後の最後まで張り切っていきましょう!」
「そうは言うがまったくに駅が見えんぞ。本当に近いんだろうな」
「あれ? ピカ太さんご存じないんですか?」
「何が?」
「隣の駅は現在改装中なんですが、一回スクラップしてるんで肉眼では捉えらなくなってるんですよ。」
「え? なにそれ? 初めて知ったんだけど」
通勤は上りで今向かってるのは下りだから見覚えがないのは確かにそうなんだが、こんな近所の情報知らないなんてある? 俺どんだけ地域情報に疎いんだよ。びっくりだわ。
……いや、これは仕事に追われている今の環境が悪いな。朝早くに出社し日付変わる前後に帰宅。そこから諸々をの時間を過ごして出勤なんていう殺人的なローテーション。会社と趣味以外の情報など入る余地もなく、非地域密着型の生活を余儀なくされる事も致し方なく。いやぁ全部社会と会社が悪い。転職も前向きに視野に入れつつひとまず有給申請しとこ。あれ? まだあったかな有給……ま、いいや。なければないで親戚の叔父さんにでも死んでもらって忌引き休暇と洒落こもう。釣りバカ日誌とかでしか見た事ない手だけど、ベタベタな古典的手法であるからこそ疑われる事なく利用できるかもしれない。これはちょっと要検討だな。それと並行しつつ休みの日に何をするか考えておこう。お、そうだ、そろそろニコニコ超会議の時期じゃないか。いやぁ一回行こう行こうと思ってもう何年も経ってるから、今年挑戦してみようかなぁ。とはいえ今のニコニコ動画で何が流行っているのか全然分からないんだけども。あ、でもゲーム実況関連は割と熱いと聞くな。YouTubeにはない独自性で一部の界隈が凄い盛り上がっているらしいが、何が熱いんだろうか。そうだ。丁度隣に詳しそうな奴がいる事だし、ちょっと聞いてみるか。
「なぁムー子。今、ニコニコのゲーム実況って何が流行ってんの?」
「急ですね……私もあまり詳しくはないんですが、Apexとマイクラは鉄板じゃないですか?」
「あぁマイクラ。あれも息長いよな」
「あらゆるプレイが可能なゲーム性に集団と遊べるコミュニティ性。それに加えて今なお継続的なアップデートが続いていますからね。もはや一種のツールとして機能しているような気さえします」
「ふぅん。他なんなないの?」
「あとは……あぁAmong Usとか」
「あの人狼ゲームみたいなやつか……少し古くないか?」
「まぁピークは過ぎましたけど、未だに根強い人気はありますね。これもオンラインを使っての対人プレイが人気の秘訣でしょうか。さっきのエぺとマイクラにも共通してますが、複数人でワチャワチャやるゲームが昨今のトレンドです。これは自分達がプレイしても面白いのは勿論ですが、それよりも好きな配信者やVチューバー同士がワイワイやってるのを見るのが楽しいという点が強いと思います。私もメーシャちゃんとかとコラボ配信でやってましたよAmong Us」
「ふぅん」
「せっかくだし今度ピカ太さんもやりましょうよ! 私が手取り足取り教えてあげますから! ね!」
「興味ないね」
「突然のクラウド~~~~~~~~~~~なんで~~~~~~~~~~~~~~~? 興味があるから話を振ってきたんでしょ~~~~~~~~~~~~~~~~~~? 滅裂~~~~~~~~~~~~~支離で滅裂な状態~~~~~~~~~~~~~~~~!」
「今度ニコニコ超会議にでも行こうかなと思ってトレンドを聞いただけだ。お前とレトロゲーム以外する気はない」
「レトロゲームならいいんですか……基準が不明……ところで、ニコニコ超会議いくんですか? じゃ、一緒に行きましょうよ。アボガドさんの展示を観ましょう」
「アボガド……あの十代二十代の女性から絶大な人気を誇っているイラストレーターか」
「そうですそうです! いやぁ! いいですよねあの心臓をえぐり取られるような世界観! 私の闇と病の部分にバチコーンとヒットしますよ! えぇ!」
「……やっぱ行くのやめた」
「なぜ~~~~~~~~~~~~~~~?」
「なんか、属性が違う」
「え~~~~~~~~~~なんですかそれ~~~~~~~~~~~」
……年齢層が合わないような気がして完全に気が引けてしまった。休日は映画でも観に行こう。
あとムー子お前、闇と病を抱えている人間はバチコーンとヒットなんて言葉使わねーからな?
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