サキュバス、諸行無常の響きを奏でました21

「あら~~~~~お可哀想にピカ太さ~~~~~~~~~~ん。この劇的なカレーが味わえないなんて、誠に残念~~~~~~~~ま、でも? もし? もしもですよ? ピカ太さんがど~~~~~~~~~~してもと言うのであれば~~~~~~~~~~~~~~? 一口に限り分けてあげも差し支えなく~~~~~~~~~~~~~~~? 試飲したいというのであればやぶさかでもなく~~~~~~~~~~~~~~~~? まぁ、頭を下げればですけれども~~~~~~~~~~~~~~~~~~? 土下座して請えばですけども~~~~~~~~~~? けども~~~~~~~~~~~~~? どうですか~~~~~~~~~~? けどもけども~~~~~~~~~~~~~~~~~~~?」


「いや、そこまでではない」


「え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!? ちょ、いいんですかぁ!? このスパイシーな缶カレーをお飲みにならない! それってあんた、超不幸ですよ~~~~~~~~~~~?」


「他の自販機でも売ってるだろうし別に。あとお前の飲んだ後の缶とか死んでも口にしたくない」


「おっと聞き捨てなりませんなぁ? この私との間接キッスがお気に召さぬと?」


「召す召さない以前に断固拒否だ。脱ぎたての革靴で泥水飲んだ方がまだましだな」


「おぉっと言ってくれちゃって~~~~~~~~? じゃ、飲んでもらいましょうか泥水~~~~~~~~そこに丁度ある水たまりに路傍の土を混ぜ混ぜしてごっくんしてもらいましょうかぁ~~~~~~~~~~~~~~?」


「いや、俺、今からコーラ飲むからいいや」


 ピ。ガコン。カシュ!



「ふぅ。やっぱりコーラは缶が一番だな。お前もそう思わんか?」

 


「ちょっと~~~~~~~~~~~だったら私もコーラが良かったんですけど~~~~~~~~~~! 熱いし~~~~~~~~~~~! 汗ばんでいるし~~~~~~~~~~~~! シュワっと爽やか炭酸弾ける世界のコーラがよかったんですがぁ~~~~~~~~~?」


「うるせーなカレー飲んでろテメーは」



 ざまぁないぜムー子め。お前のその悔しがる顔が最高のスパイスだよ俺にとっては。

 しかし、当てつけのつもりで買ってはみたがきついなコーラ……久々に飲んでみるとこんなに飲みにくかったかなってなってる。甘さもそうだけど炭酸が強い。おかしい。ビールやハイボールは秒で身体に浸透していくのに何故……というか十代の頃は本当にゴクゴクゴクゴク喉を通っていたというのになんだこの変化は。これが……老化……? か、考えたくねぇ……



「あれ? ピカ太さん、あんまり進んでないですね。コーラ」



 こいつそんなとこだけ目敏く気付きやがって! これはまずいぞ? 俺がコーラがキツくなってるなんて知ったらこいつ、完全に煽り倒してくるに決まっている。別にそれ自体は殺して報復してしまえばいいんだが問題は場所と時間。太陽も天頂に向かって加速を始めている頃合い。道行く人も数多く、目撃者ゼロでの始末は難しい。もしファイナルアトミックバスターでフェイタリティK.Oした際に通報なんぞされたら大変に迷惑かつ面倒である。故に、この場で即殺しは控えねばならないのだが、その間モヤモヤは終始継続するわけで精神衛生上すこぶる良くない。ただでさえ空腹でストレス許容度が低くなっているのだ。不要な負荷はかけないのが得策だろう。


 というわけで、如何にしてこの馬鹿にコーラ限界値を悟られぬよう誤魔化すかという話になってくるわけだが、どうしようか……あ、そうだ。いい事思いついたぞ?



「ムー子。お前、占い好き?」


「なんですか藪から棒に……まぁ好きというか、半ば仕事的なところでもありますが」


「え? サキュバスって占いも司ってんの?」


「そこまでではないんですけれど。なんと言いますか……春色オーディションとでも申し上げましょうか……ともかく、本業ではないんですが真似事くらいはできますよ」


「ふぅん。実は、俺も占いできるんだよ」


「え? 本当ですか? 初耳なんですが。というか、そういった類の物完全に嫌いかと思ってました」


「何言ってんだ俺の実家はそういった類の総合商社だぞ。いわば得意分野と言っても過言ではない。占いの一つや二つ朝飯前だ」


「へぇ。じゃあ、試しに私を占ってみてくださいよ」


「お安い御用だ。じゃ、両手を開いて、掌を見せてくれ」


「はい。どうぞ」


「う~~~~~~んなるほど……よし、次、上向いて口を開いて」


「はい。あ~~~~~~~~~~~~~~~~……なんかこの格好って少しエッチじゃないですか?」


「賛同しかねる。はい、じゃあ目を瞑って」


「え? いやいや。本格的にこれ。そういう目的じゃないんです?」


「そんなわけあるかぶち殺すぞ」


「すみません……はい。瞑りました」


「はい、じゃ、いくぞ~~~~~~~~」



 コーラ投下。



「ヘァァァァァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァボボボボボボボボボボボボボボゲヴァハァ! ゲハッハ! ゲホォ!」


「あっはっは!」



 いかん。思わず笑てもた



「ちょ、ちょっと! な、なんですかこれは!?」


「何って、コーラだが?」


「それは分かる! それは分かるんですよ!? 何故に? 何故に急に水攻めを?」


「いや、コーラ飲みたいって言うから……」


「だったら普通に渡してくれれば……ははーん? 分かりましたよ?」

 

「な、なにが?」



 くそ!? バレたか!?



「ピカ太さん。私にコーラをあげたくて! でも普通にあげるのが恥ずかしくて! 仕方なくこんな方法で照れ隠しをしたんですね!? いやぁもう! 小学生か~~~~~って! 好きな子に意地悪しちゃう感じのやつか~~~~~~って! かぁ~~~~~~~~~~~~!」


「……」


「……え? マジでそうだったんですか?」


「いや、お前が馬鹿で助かたなって」


「え? 馬鹿? 誰が? え? え? え? あと、助かったってなに? なんですか?」


「さ、そろそろ行こうか」


「ちょっと~~~~~~~~~疑問~~~~~~~~~~~私の疑問に答えてくださいよ~~~~~~~~~! ピカ太さ~~~~~~~~~ん! ねぇ~~~~~~~~~~」



 ボロはだしたくない。ここは無視の一手。それしかない。

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