サキュバス、黄鶴楼にて上司の恋路に之くを送りました6

 仕事……仕事……仕事……

 仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事。

 仕事! 仕事! 仕事! 仕事! 仕事! 仕事! 仕事!



 終わらね~~~~~仕事終わらね~~~~~~!?

 何故!? 今日まであんなに頑張ってきたのに!? 一生懸命終わるように終わるようにってコツコツコツコツ! どうして~~~~~なんでこんなに仕事あるの~~~~~~? というかなにこれ? え? Vライブ同接比較? Vちゅっば日別再生回数推移? 配信サイト比較レポート? おま! これおま! 全部不破付さんの案件やんけ! どうなっとるんや!?




「ふぁ……ふぁっき……不破付さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」


「あれ? どうしましたか輝さん」


「どうしましたかっておま……ちょ、ふっざけ!? ふっざけやがらないでくださいってこれぇ!? この仕事量ぉ!? このタスクゥ!? このスケジュールゥ!? なんこれぇ!? これなぁん!? なんなんすかぁこの細々としたレポートの数ぅ!? なしてぇ!? なしてこっちにぃ!?」


「なしてって輝さん……そりゃあ共同案件だからじゃないですか」


「きょ~~~~~どぉ~~~~~~~あんけぇ~~~~~~~ん!?」


「そうですよ。言ったじゃないですかこの前。伊佐さんとこの企業と提携してV関連の業務増えるから一緒にやりましょうねって」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? 言ったけぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇそんな事ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


「えぇ確かに。でもあの時輝さんめっちゃ眠そうだっから覚えてないかも。すみませんね」



「え? ちょ、マジで言ったんすか俺!? いつ頃!?」


「先週です」


「先週」


「はい。先週です」



 ……先週か。先週は確かに無理な進行をガンガン続けていたから脳が記憶を処理できていない可能性があるな……ちょっと確認。え~~~~っとカレンダーカレンダー……あ、しっかり記憶残ってるわ。『不破付、輝、V作戦スタート。突発案件』ってしっかり書いてあるわ。え? というか、既にいくつか終わらせてる事になってるんだけど!? 俺覚えてないんだけど!? いつの間に完了してた俺!? うわぁ怖ぁ……人間追い込まれると自分のやった事さえ覚えられないんだなぁ……こんなん軽い酩酊状態じゃん。なんでここまで仕事しなきゃいけないの? 馬鹿なの? いやまぁそれはいいよそれは。問題は今日だよ。これ終わんねーよ? どんだけ粛々と対処していっても確実に二十一時は過ぎるよ? レストランの予約十九時なんだけど! 間に合わねーじゃん! 




「……不破付さん」


「はい。なんでしょうか」


「申し訳ないんですが、手伝っていただけないでしょうか」



 恥を忍んでのお願い。背に腹は代えられない。だが、この男がすんなりという事を聞くかどうかは別問題である。



「え~~~~~~~~だって僕、彼女いるんすよ~~~~~~~~? そんでもって今日は推しの生配信があるんすよ~~~~~~~~~? 彼女と遊んでからの帰宅後推し活なんですけど~~~~~~~~~無理~~~~~~~~~~~」



 くそ! ウザい! ウザいがここは我慢だ! 何とかして煽てて業務を代わってもらわなければゴス美に合わす顔がない!



「そこを何とか……あ、ほら。ご飯。ご飯奢りますから」


「メシ~~~~~~~~~~~? メシなんて奢ってもらってもなぁ~~~~~~~~~~~~野郎とメシとか~~~~~~~~~~旨味ないっていうか~~~~~~~~~~~ぶっちゃけ花がない的な~~~~~~~~~~? 彩りが茶色で全然よろしくありまへんって感じなんすよね~~~~~~~~~~~~~」


「そう言わずに……あ、あそこ行きましょう。高級焼肉。駅ビルのテナントに入った」


「あぁいう店ってブランドあり気だしどこ行っても食べられるんですよね。あんまりバリューないなぁ」



 あぁもうこいつこういうとこあるんだよな! なんかあか抜けてるしグルメだし服装にも気を使ってんだよオタクのくせに! ピザとコーラで十分だろお前なんか~~~~~~服もジャージーでも着とけよも~~~~~~~~どうすんだよ~~~~~~~このままじゃマジで残業コースじゃ~~~~~~~ん! 打つ手が~~~~~~~打つ手がない~~~~~~~~~

 あ、そうだ。




「不破付さん」


「はい。なんでしょうか」


「女、興味ありませんか?」


「……詳しく聞きましょうか」



 よし! 食いついた!



「実はですね。近々女性グループとお食事会をする事になりまして」


「ほぉ」


「不破付さん。どうですか? 今日の案件、半分、いや、三分の一でも引き受けていただけたら、その食事会にご招待いたしますが……」


「……輝さん」


「はい」


「私はね。何度も貴方にいいましたよ? 彼女ができましたって。イチャラブパラダイスですって。そんな付き合い立てホヤホヤの男を捕まえて、女性とお食事ってあんた。良識ってもんがないのか」


「……参加成されませんか?」


「するに決まってるじゃないですか~~~~~~~もう、やだなぁ輝さ~~~~~~ん。普段”あ、女には興味ないんで”なんて言っておきながら、しっかりやる事やっていらっしゃるんですから~~~~~」


「まぁ、やむにやまれぬ事情がありまして……」


「そんな事言って~~~~~~~~今日だってボインと会うくせに~~~~~~いやぁ憎いですねぇ! コノコノォ~~~~~~~~」


「ははは」




 ノリが心底鬱陶しい! だが我慢だ。何せこいつの協力がなければ事は進まんからな。ここは黙って愛想笑い。言いたい事は、胸に秘めよう。



「ま! なんでもいいですけどね! それより早く仕事しましょう仕事! いやぁ捗る捗る~~~~~あ、今日僕、会社泊っていってもいいんで全部やりますよ!? 推しの配信は会社のPCで見ますから! そして会社のクレカでスパチャするぞ~~~~~~」



 ……頼もしい。頼もしいが、横領になるからそれはやめとけよさすがに。

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