サキュバス、合コンって言葉が死語になりつつあるって事に時代の流れを感じざるを得ませんでした3

 どいつもこいつも下半身でもの考えやがって。もうちょっと人間としての矜持ってもんがないのか。どうにも男ってのは女が絡むと脳が縮まっちまうようで度し難いね。



「輝さぁん……なに一人”やれやれだぜ”って面してんですかぁ? 承太郎じゃあないんですからぁ。ここは素直に下劣な笑みを浮かべましょうよぉ。推しのVにリアルガチスパチャ送る時みたいにぃ」


「すみませんが例えが全然ピンとこないんすわ。推しもVもリアルガチもスパチャも一つも腑に落ちないんですわ」



 推しはいるけど黙っておこう。面倒くさいし、そもそもそういう意味の推しじゃない。Vじゃないし。


 女に興味はないが、実のところ気に入っている女のキャラクターは、いる。佐久間まゆもそうだし、同じくアイドルものでいえばプリリズRLのおとちゃんとか、最近でいえばラブライブスーパースターの平安名すみれとか。特に平安名すみれは久々に深いところに刺さってきて今ムーブが来ている。平安名がセンターになる回がねぇ。グッとくるんすよ。俺、コメディリリーフが自ら道化を降りるシーンとか見るとつい見入っちゃうんだよね。普段おどけて自分の役割に徹している人間が、なりふり構わず自分の本心をさらけ出しちゃうとかかっこよくない? まぁ例をあげろといわれるとちょっと考えちゃうんだけど、ちょうど平安名がそんな感じで、「あら、いいですねぇ」と勢いのままに出先でアクスタまで買っちまったよ。そんなラブライブスーパースターも二期の制作が決定。お約束の本選出場が期待される。虹学を飛ばしての展開だが、長くやっていればそんな事もあるだろう。ファンは是非とも傷つけあう事なく応援してほしいものだ。ギャラクシー!



「輝さんって、本当に女性に興味ないんですか?」



 おっと。二期アニメ楽しみねったら楽しみねっと思っていたら伊佐さんから誤解を招きかねない質問が投げられてきた。よくあるよね。ここで「はいそうです」っていったら「あいつはホモか?」って勘違いされるシーン。しかし昨今では性の多様性が認められているためそういう露骨な表現は絶対的に「駄目よ」されてしまうんだよな。配慮の行き届いた世界だ。別にホモでもいいのにね。迷惑かけるわけでもなし。どっちにしろ俺には関係ないんだけど。まぁ、後で訂正するのも二度手間になるし、正直に答えておくか。



「興味ないというか性欲がないんですよね」



 世はダイバーシティ。如何なる性愛の自由は認められるべきだし、性愛の有無さえ問われるべきではない。何を憚る事がある。胸を張って事実を述べよう。



「ね? こんな風に中学生みたいな事言うんですよ輝さんは」



 不破付め。そういう発言は今の時代にそぐわないぞ? 



「でも輝さん、この前、店長の店に女侍らせてやってきましたよね?」



 あ、店長てめぇ! 余計な事を!



「は? 初耳なんですが輝さん。え? ちょ、なんで? なんで呼んでくれなかったん?」



 うるさい馬鹿。サキュバスとそのVチューバー仲間のオフ会なんかに知り合いを、それも同僚など呼べるものか。バレたら即退職届提出だ。



「性欲がないのに女好きって輝さん。宦官かなにかで?」


「あれはそんなんじゃないですよ」



 伊佐さんも伊佐さんで怠いなぁ。いいよもうそういう話は。どうせ言っても分んねぇだろうし。というかお前ら、女を性の対象としか見てないのか。なんで連れだって歩いただけで色魔認定されなあかんねん。俺はオリビエ・ポプランやシェーンコップじゃねーぞ。ロイエンタールって呼ぶならまぁ、甘んじて受け入れてやるが。ところで、リップシュタット戦線で「ヘテロクロミアのロイエンタールに疾風ウォルフ!」ってオフレッサーが言ってたシーンが忘れられないのって俺だけ? 俺だけか……あれ、なんでもないシーンだけど声優の演技も相まってスゲー印象に残るんだよな……オフレッサーすぐ退場するけど。あいつも大人しくラインハルトに下っていれば新帝国の上級大将に……無理だな。皇帝ローエングラムが絶対処分するわ。あ、そうそう。皇帝とういえば……



「店長、そういえば皇帝とはどうなったんだよ」


「皇帝? あぁ、メーシャちゃんの事ですか?」



 メーシャちゃん。



「まぁ、連絡はしてますが……」



 連絡はしている。



「なんか、今度一緒にご飯行く事にはなりました」



 今度一緒にご飯行く。



「お前それ、付き合ってんじゃねーの?」



 おっと。不破付さんのドストレートな質問キタコレですな。



「ちょ! ば! 馬鹿じゃねーの!? そんなんじゃねーし! ただちょっと話したりするだけだし!」


「お~~~~? とは言いつつ~~~~~~? 本当は~~~~~~?」


「本当だって! 本当に何にもないってあの子とは! 第一、お、俺のタイプじゃねーし! 俺はもっとこう……クレア・ヒースローみたいな女がタイプだし!」



 確かにGジェネZEROから登場しているオリジナル自軍キャラクターであるクレア・ヒースローは人気があるけども、お前絶対ガンダムネタしか話せないから「こんな彼女がいたらいーなー」っていう妄想だけで語ってるだろ。



「クレア……外国の方ですか?」


「外国というか……外世界?」


「外世界?」


「ほら、平面的な」


「あぁ……そういう愛もあるかもしれませんね。犬と結婚された方も、オーストラリアにいらっしゃるようですし」


「えぇ。今はダイバーシティとユニバーサルデザインの時代ですから……っと?」


「ごきげんよう。ピカちゃん。お待たせいたしました」


「あg……」


「……」


「ヘルさん。どうも」


「はい。どうもです」




 いつの間にやらぬるりと会話に入ってきたが、こいつ、また気配を消して近づいてきやがったな!

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