サキュバス、合コンって言葉が死語になりつつあるって事に時代の流れを感じざるを得ませんでした4

 まぁ姿を現した以上は一応紹介しておこう。



「皆さん。こちら、女性側の幹事である阿賀ヘルさんです」


「どうも。ヘルです。本日はよろしくお願いします」


「はじめませ。伊佐フリィです。こちらこそよろしくお願いします」


「不破付ニミラよろしくでぇす」


「どうも初めまして。私、三ダアです。ジオン派です」


「……?」


「……」


「……」



 いかん。店長のイキりちらしたジオニズム全開のせいで阿賀ヘルはポカンとしているし他の二人からは極めて攻撃的なニュータイプ波動が送られてくる。いったいどうしたらいいんだ。どうする事もできない。俺には収集する性能がない。気の毒だが……


 そんな事より阿賀ヘルだが、こいつ一人か? 確か今日は他に三人連れてくるとメッセージでいっていたが……



「皆様、先にお店に入っておりますのでご案内に参りました」



 なるほど。確かに初対面の人間が街中で探り探り会話をするなど落ち着かん。気が利くじゃないか阿賀ヘル。助かる。でも人の心を読んだように話を進めるのは感心せんぞ~~~~? 読心されているようで気分が悪い。そうそう、あと何で俺達がいるとこ分かったの? そこが一番の謎でホラー要因なんですけど。安室さんみたいにスマフォにGPSとか盗聴器とか仕掛けてないよね? 安室さん、ゼロの執行人でそこまでやる? って感じに滅茶苦茶やってたけど、あの尻拭いって誰がやるんだろう。よくもまぁ派手に壊す壊す。観ていて現場の悲鳴が聞こえてきそうだったよ。



「申し訳ありません。本来、こちらが気を回すことだったんですが」



 あ! 伊佐さんが早速紳士アピールしてる! 言ってる事は正しいんだがなんか素直に褒められないムーブ! これは空気がギスりかねない!



「……」



 ほらぁ! 不破付さんが「してやられた!」って顔してるぅ! でもあの表情には「ま、まだ全員と顔合わせしてないし、こんな序盤で先越されてもまったく不利にはならんな」っていう計算が働いている様子が伺える! 一方伊佐さんは「まぁ、ここでの差が後半になって響いてくるんですよ。イニシアティブはこちらが握った。先の利はいただきましたよ」っていう策士キャラのような微笑を浮かべている! なんだこれは! 開始前から凄まじい心理戦が繰り広げられている! こんな中で俺はちゃんと生きているのか!? 会食を楽しいものにする事ができるのかぁ!?



「輝さん」


「あ、店長。どうかした?」


「ジオン派っていうより、ダイクン派かザビ家派かって言った方がよかったですかね」


「いや、ここはあえてジオン全体が好きな感じで進めていこう。もし相手が反対の派閥だった場合論争は必須だからな。アクシズだろうがマーズだろうがジオンはジオン、自分はあくまでジオン星人だというように振る舞った方が、円滑かつ広域に話が展開できると思うよ」


「さすが輝さん! 参考になりますなぁ!」


「それほどでも」



 店長。お前は下手に着飾るよりありのままの自分を貫いてほしい。女にウケるためとかモテたいためとかといった理由で信じた道を外れるのは、似合わねぇよ……だからよ……止まるんじゃねぇぞ?



「それでは、お店にご案内したしますね」



 さて移動。あ、その前。



「ところでヘルさん」


「なんでございましょうかピカちゃん」


「こういう時ってさ、男側が金持つもんなの?」



 ルールの確認をしておこう。金に関しては先に取り決めておかないと後で揉める可能性があるからな。確認確認……え? 皆なに信じられない人間を見るような視線。怖いんだけど。



「輝さん……」


「さすがにそれはないですよぉ……」


「まったくですな」



 え? 店長まで? え? なんで? なんでそんなに呆れられてんの? 意味分からない!?



「阿賀さん。ここは男側で持ちますので、先程の発言は聞かなかったことに……」


「すみません。輝さん。こういうの慣れてなくって……」


「しかし、あえて言おう! カスであると!」



 え~~~? 確認するまでもなく決まっている事項なのそれ~~~~? この男女平等が叫ばれる時代において~~~~? 男ばかりが割を食うシステム~~~~? だいたい誘ってきたの向こう側からやぞ。なんでこっちがおもてなしの精神を持たなあかんねんアホか。腑に落ちねぇなぁ。



「お金に関しましては私も含め、皆さん折半という考えでおりますが……」


「いいえ。ここはこちらが持ちます。不破付さん。三さん。それでいいですね?」


「そりゃ勿論ですよ。こんな時に男を立てずどうするってんですか」


「私は今日のために三十万おろしてきたんですよ? 嫌というはずがないでしょう」


「……」



 嘘やろ? 会った事もない女のために食事代出すとか正気かお前ら。いや俺もそういうルールだったら払うつもりだったけどさ(渋々。本当に渋々な!)。予定入った時点で身銭切る覚悟をしていたとか信じられんわ。その金でどれだけ有意義な事ができるか考えたりしないのかな。いやぁ分からん。価値観が全然違うわぁ。



「輝さんも! いいですね!?」


「あ、はい……」



 あ、頷いちまった。同調圧力に屈する形となってしまった。くそ。

 あーあ、幾ら払うのか知らんが、まぁ二万は飛んでいくかな。二万あればお前、HGガンプラ十体は買えちゃうじゃねぇか。欲しいキットはいっぱいあるのにこんなところで無駄金使うとか……あぁ嫌だ嫌だ。来るんじゃなかったよ本当に。まぁ避けられないイベントだったんだけどね……畜生運が悪い。こうなったら、飲むだけ飲んでハッピーになろう……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る