サキュバス、ヤベー女がやってきました3
「仕方ないですね。いただきましょうか」
なにも仕方がなくない。頼んだものが来ただけなんだからちっとも仕方ない事ない。その辺りを分かっておいでか? だいたいちゃんと完食できるんだろうなぁこの馬鹿みたいにデカイプリン。俺は食べんぞそんな破壊の権化みたいなもん。水だけで十分だ。あ、よかった水ちゃんと冷たい。氷なしの水頼むとぬるま湯のようなもの出してくる店あるけどここはちゃんとしているな。こういう小さな仕事を抜かりなくやっているところは好感触だ。でも氷なしでって事は常温の水が飲みたいっていう思惑もあるかもしれないし難しいよなぁ。中国なんかは冷たい飲み物は悪みたいな風潮があってコーラでさえ温いまま提供されるみたいな事聞いたことあるし。もしかしてドラゴンガンダムも
「あ、よかったらプリンどうぞ。取り皿もありますし」
「いえ、いらないです」
「ははは。はい。どうぞ」
いらねっつってんだろ! なんで寄越すんだよくそ! あぁ甘そうな塊が俺の目の前にある……残すのも悪いから食べるが、これは時間をかけていただこう。でないとこの馬鹿がまたよそってこないとも限らんしな。まぁ一口……あ、存外イケるなこれ。疲れた身体に糖分が染みわたるわ。
「あら? もう食べてしまったんですか?」
「あ」
しまった。ついがっついてしまった。
「よそってあげますね。はい」
奪われた皿に山盛りのプリンが乗って帰ってくる不条理。確かに美味しいけど限度ってもんがある。ミヤコじゃねーんだぞ俺は。まぁいい。今度こそゆっくり食べよう。さすがにこれ以上のプリンは身体に毒。糖分と脂質のオーバードーズは控えたい。年齢的に。
「そういえばピカちゃん。百貨店の幽霊。どうなさるおつもりですか?」
「……」
……やはりバレていたか。まぁ確信していたけれども。しかしどうする。馬鹿正直に言うのもなんか癪だし、一旦しらばっくれてみるか。
「えぇ~~~~? なんの話しでござるかぁ~~~~~? あの百貨店に巣食っていた幽霊はしっかり退治いたしましたが~~~~~~?」
「……」
「……」
うわぁめっちゃ笑顔! それ故に怖い! 笑うという行為は本来攻撃的なものであるとシグルイに描いてあったけど本当っぽいぞこりゃあ。だってめっちゃ恐ろしいんだもん。なにこのプレッシャー? 虎?
「えい」
「? なに……を、おぉ!?」
し、心臓が痛い! こいつ、術を使いやがった!
「ちょっとなに!? 人が一眠りしてる最中に思念波送ってくるとか常識ってもんがないの!?」
出たー! 杉太郎からオカマが出現! あ、なるほどこれを狙っていたわけね?
「あら? 美味しそうなもん食べてるじゃない? 私ももらっていーい?」
「そ、それどころじゃ……」
「なに!? ちゃんと喋りなさいよ! 分かんないじゃない! まったくモニョモニヨ(プリンを食べる音)軟弱ねモニョモニョ(プリンを更に食べる音)で、この女誰よ?」
「お、お前杉太郎に入った瞬間から寝てたのか?」
「そりゃそうよ。だって幽霊探知する奴が来るって話だったじゃない? バレちゃまずいと思って仮死状態になってたの。ま、とっくに本死にしてるんだけどね! HAHAHAHAHAHA! ジョーク! イッツァゴーストジョーク!」
ブルックみたいな事言うなこいつ。
「……この人がその鑑定士だ」
「え?」
「どうも。幽霊物件鑑定士の阿賀ヘルと申します」
「ちょっと!? バレちゃってるじゃない!? もろバレよ! どうするのこれ!?」
「あ、ご心配なく。私、この事については咎める気はございませんから」
「あらそう? ならよかった。じゃ、私はもう一眠りさせてもらおうかしら。Bay!」
オカマが杉太郎にIN。再び二人と、半分消えたプリン。嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁなんか気まずい!
「さてピカちゃん。どうして嘘を吐いたんですか?」
あ、笑顔継続してる。やべなぁこれ。かなり怒ってるぞ? これはいかん。なんとかせねば。
「嘘じゃありません。業務上必要な秘匿義務を遂行したまでです」
「……ピカちゃん」
「はい?」
「二度と、私に嘘は吐かないでくださいね?」
「……はい」
絶頂の恐怖。ホラーとかサスペンスがおままごとに感じてしまうほどのスリルを今味わった。なんなんこいつ? なんか覇気みたいなの使えるの?
「まぁそれはいいです。ところで、今回はピカちゃんにお願いがありまして。聞いていただけるでしょうか?」
「……聞くだけ聞きましょう」
絶対にろくでもない事だろうが逆らったらえらい目に遭う気がする。そもそもオカマ幽霊退治してないのバレてる時点で弱みに付け込ませる隙を与えているのだ。聞かないわけにはいかないだろう。
「先日お友達と話をしていたのですが、男性の方と食事でもしたいなぁという事になりまして」
「分かりました。謹んでお断りいたします」
「まだ何も言ってませんが?」
「大丈夫です。分かります。男女で食事をしたいから人を集めろと仰るんでしょう?」
「まぁそうですが……」
「無理無理そんなの。だって俺友達いないんだもん。他を当たってください」
それにそんな催しになんの価値も見出せんわ。家でムー子とファイプロやって方がはるかにましだよ。
「そうですか。聞いていただけませんか」
「えぇ残念なが……ら!?」
い、痛い! 心臓がギュってなってる!? おまけに身体が動かん! なにこれ金縛り!? こいつがやってんの!? 人外~~~
「”はい”と仰るまで、私はお願い続けます。いかがです? ご一緒にお食事していただけますね?」
えぇ~~~~~? お願いという名の強要~~~~? 拷問~~~~~~
「ちょっと! またなんかやってるの!? やめなさいよその技! こっちにまで響くんだから!」
オカマ再度登場! いいところに来た! 助けてくれ!
「すみません。少し黙っていただけますか? 今、大事な話をしているので」
「……ごゆっくり」
あ、逃げやがった! てめぇ! このオカマ野郎!
「どうですか? ピカちゃん。苦しいでしょう? 辛いでしょう? 早く”はい”と言った方が身のためですよ? それに……」
「そ、それに?」
「それに、それ以上強情を張るようでしたら、こちらもさらなる苦痛を与えなくてはならなくなるんですから……ね?」
あ、こいつマジのやつだ。マジで痛みと苦しみで屈服させようとしてきているやつ。
なにを馬鹿な! 俺は暴力を背景にした脅しなどには屈しないぞ! 絶対に! 絶対にはいなんて言わないんだから!
「お願いしますよピカちゃん。彼方だけが頼りなんです。私達男の人の知り合いがいなくって、どうしようもないんです」
あ、馬鹿やめろ! そんな風に普通に頼まれたら……!
「わ、分かった……やるだけやってみよう……」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
あぁまた悪い癖が出てしまった! どうして俺は懇願されると弱いんだ! 畜生!
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