サキュバス、狙ってる男の妹と同居しました4
ひとまず居間へ行こう。
ガチャリ。
お? 部屋を出た瞬間に出汁の香りがする……酒で重くなった胃には丁度よさそうな感じだな。助かる。いやぁさすがゴス美。気が利くなぁ。ありがたいありがたい。
……どうもゴス美に頼り切っているな俺。今更過ぎるし何度も思っている事だが、頼り切ってしまっている。あいつ最近仕事忙しそうだし、さすがに家事の分担くらいは考えた方がいいかもしれん。掃除でもやるか……いや、でもなぁ……毎回断られるし、仮にOKが出ても、俺が作業した後で「不足分やっておきました」みたいな事後報告がきそうなんだよなぁ。確認のフローが発生して逆に迷惑かもしれん。手間が増えては本末転倒だ。やはり何もしない方がいいのかなぁ……でもなぁ……良心がなぁ……せめて食事でも奢ってやるかぁ。この前約束してたのはデ・シャンのせいでうやむやになっちゃったし、穴埋めもかねて連れて行こう。そうだな。適当に焼肉とかしゃぶしゃぶとか調べておくか。
そういやこっち出てきて焼肉ってあんまり行ってないな。別に一人で入るのは気にならないんだが、ソロプレイだと注文するもの考えないと食べきれないんだよなぁ。タン、カルビ、ロース、内臓三種くらいとビールでもうお腹いっぱい。ライスなんかつけようもんならタンとカルビだけでも全然いけてしまう。せっかく色とりどりの肉があるのに注文できないなんて生殺しだよ。おまけに最近特に胃の許容量が減ってきたし、脂っこいものが駄目になりつつあってどんどんと肉への欲求が減ってきている。真島の兄さんが焼肉屋で言っていた事が理解できるようになってしまってこれはもう加齢一直線ですわ。まだまだ若いつもりだったが身体が精神を軽く超えてくる今日この頃。そろそろ保険とか入っといた方がいいのかなぁとプリキュア観ながら思うよ。あ、なんか今のコメディソングのフレーズみたいだな。YouTubeで歌ったらウケるかもしれん。今度ウチで預かってるYouTuberの企画として上げてみるか。二、三人やりそうな奴が……っと、居間に来てみればマリとプランが食卓を囲っているじゃないか。丁度食事か?
「おはよう。朝食か?」
「おはようお兄ちゃん。そうだよ。今日はね。ピチウお姉ちゃんとプランちゃんと私で作ったの。ねぇプランちゃん」
「はい。日本の料理は不慣れでございます故、至らぬところ多々あると存じますが、僭越ながらこのプラン・ラ・トモシヒ。ピチウ様にご指導いただきながら、ミソスープとジャポネのオムレツをお作り致しました。お口に合うかどうかは分かりませんが、召し上がっていただけると幸いです」
相変わらず仰々しい。ジャポネのオムレツってなんだ? 出汁巻きか?
「私はねー! 煮物作りながら洗い物とかしたよ! 」
完全にシステム化されてる……飲食店が開けそうだな。とりあえず、褒めておこう。
「凄いなお前ら。ちゃんと役割分担できてえらい。俺も食べていい?」
「もちろんだよ! あ、お米よそってあげるね! さ、座って座って!」
「ピカ太様。座布団でございますが、何枚にご利用になられますか? 一枚……二枚……三枚……」
番町皿屋敷か。そんなにいらんわ。
「一枚でいいよ一枚で」
「左様でございますか。あ、そうだ。お酌はご入用で?」
「……茶をくれ」
「かしこまりました」
朝から酒など飲めるか。どういう教育してんだデ・シャン。今度子育ての方針について問いたださねばならんな。
「お兄ちゃーん。もってきたよー。はい!」
ドン!
丼。
丼だ。丼。
「白米の量多くない?」
「そうかな? でも、これくらい平気平気! さ、食べて食べて!」
先ほど胃の許容量が減ってきていると嘆いていた矢先にこれ。なんなん? マーフィーの法則的なあれ? えーどうしよ……おかずも多いし食べきれるかな……でもこいつらの、美味しいと言って完食してもらいたい待ちな感じを無視するわけにもいかんし……えぇいままよ! なんとでもなれ!
ひょい。ぱく。
「どう? 煮物美味しい?」
「お出汁がしっかり染み込んでおりまして、味付けもいい塩梅。美味しゅうございます」
「やったー!」
ひょい。ぱく。ずずず……
「ピカ太様。いかがでしょうか」
「ふんわりと焼かれた玉子の食感が大変よろしゅうございます。お味噌汁につきましては、これ、合わせ味噌でしょうか。実にまろやかで、具だくさんの野菜の甘みと上手く溶け込み、気持ちがホッとなります。美味しゅうございます」
「お粗末様です。お褒めのお言葉、恐悦至極でございます」
うん。まぁ美味しい。ゴス美には劣るが十分及第点を越えてきている。考えてみればマリはゴス美に料理習ってるし当然だろうが、プランが作った出汁巻きとみそ汁も文句なく美味しい。ピチウに教えてもらったと言っていたが、あいつこんな料理できるようになってたんだな。昔、お母さんがいない日は俺が用意していたもんだが、大きくなったもんだ……あ、そういやなんで今日ゴス美料理してないんだろう。聞いてみるか。
「ところで、課長は?」
「ゴス美お姉ちゃんは時間がやばいんだって。それでも最初は作ろうとしてたんだけど……」
「ピチウ様が、”お母さんからゴス美さんを手伝ってあげるよう言われてますので”と仰いましたら、感謝を述べて戻っていかれました」
「そうか」
相変わらずゴス美に入れ込んでるなお母さん。今度帰省したら連れて行ってやるか。
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