サキュバス、犬とロリがやってきました7
「うーん……はっ!」
「起きたか?」
玄関で就寝というのもかわいそうだと思い二階に運んできたが、割とすぐに目覚めたな。可愛そうに、こんなにも早く、現実と向き合わなければならないなんてな。
「えぇ……あ、布団敷いてくれたんですね? ありがとうございます……」
「気にするな。ここは俺の部屋だ」
「え? あ、本当ですね。どうもお邪魔しています」
わざわざ三つ指揃えて頭下げずともいいのに。律儀な奴だな。
「そ、そうだ! 専務! 専務は!? 専務はどうしたんですか!?」
「今は一階でムー子とファミコンやってるよ。あいつ、自分の会社の重役の顔と名前知らないんだな。まぁ俺も知らないんだけど」
「大きい会社だとそんな事もありますが、ムー子はともかく、一応は覚えておいた方がいいですよ? そんな事より、なぜあの人がここにいらっしゃるんですか? 確か、今はフランス支社の代表をやっているはずですが……」
フランス。なんとも突拍子もない国名が出てきたな。サクラ大戦の舞台になったという知識くらいしかない。あぁ、あとグレンダイザー。視聴率に関しては実はそれほど凄くないらしいなあれ。
「フランスの方を立て直したから呼び戻されたんだよ。いやぁ、
「せ、専務!?」
呼んでないのにきやがった。迷惑な奴だ。
「失礼。ノックをすべきだったかな?」
「そうだね」
「ちょっと、そこはクリスタルボールの真似をしてくださいよ輝さぁん」
「生憎とコブラは未読なんだ。ところで、あんた下で魔界村やってたんじゃねーの?」
「あぁ、ムー子さんの番なんで、お手洗いついでに覗きに。しかし、いい趣味してますねぇ轟さん。そのビグザム。かなり作り込んであるようで。ジオンの魂が形となったようです」
「お、分かります? いやぁビグザムは旧モデルでもそこそこデキがいいからパチ組だけでよかったんですけどぉ、せっかくドズル陛下が騎乗する機体ですからね。そこはしっかり作りましたよ。特に塗装。この塗装はこだわった。分かりますか? これ、メタリック処理してあるんですよ。個人的にメタリック塗装は邪道だと思っていますが、何度も重ね塗りしてまるで本物の超硬スチール合金のような光沢と重厚さを再現しました。いやぁ、お盆休みを潰した甲斐がありましたよぉ」
別にジオニストってわけじゃないんだがビグザムは好きだ。ジム OR ザクだったらジムだけど。
「なるほどぉこれはまさにソロモン印の技術力ですねぇ」
「せやろ! ……って、騙されんぞ!?」
「えぇ?」
危ない! こいつらは人の心を弄ぶのが生業だ! 安易に友好意識なんざ持っちゃいかん! 気をしっかり持て俺!
「騙すも何も、私はただビグザムを褒めていただけなのですが……」
「そうやって心の隙間に入り込み骨抜きにしていくのが淫魔なんていう種族だろう!? 貴様らのやり口は分かっているんだ! 絶対に心を開いたりしないからな!」
一度甘言に乗れば尻の気まで毟られるは明白。キャバクラと同じだ。そういえば三百万の借金こさえて消えた
「うぅむとんでもない
話が急! 誰もがそんなに簡単に時間取れると思うなよ? まぁ暇なんだけど……あ、今日に限っては暇じゃないわ。先約があったんだったわ。
「悪いが今日は先に予定が入っている。後日にしてくれ」
「予定? 友達も彼女もいない輝さんがですか?」
「なんで知ってるのそんな事……」
「すべてはリサーチ済みです、しかし、今日予定があるというのは本当のようですね。気配で分かります」
「気配」
「えぇ。気配です。あ、汗を舐めればもっと確実に分かりますが」
これだから化物は嫌なんだ。プライバシーもクソもあったもんじゃない。
「で、予定とはなんですか? 教えてください」
「お前に話す義理はないな」
「またまたぁそんな事言ってぇねぇねぇ。教えてくださいよぉ~
「やかましいッ! スピードワゴンかお前はッ!」
「うーんケチですねぇ。あ、そうだ鳥栖さん。輝さんのご予定について、何かご存じありませんか?」
「……いいえ」
「鳥栖さん。二回目の嘘は、さすがの私も許せませんよぉぉ?」
「……」
「もう一度。いいですか? もう一度だけ、伺いましょう鳥栖課長。輝さんはこれからどんなご予定が入っているのですか?」
「……ピカ太さんは、本日私と食事に行く予定がございました」
「なぁんだ! では解決は簡単! 私も同席すればいいだけの事じゃないですかぁ! いやぁよかったよかった! それでいいですよね? 鳥栖さん」
「はい……問題ないかと……」
陥落した……残念ゴス美。代わり今度スガ●ヤでも行こうな? マリも一緒だけど。
「ですよねー! よし! ついでにムー子さんも連れていきましょう! それがいい! そうしましょう! 興は上司と部下の親睦会も兼ねた楽しい宴席にしましょうか! ね!」
「はい……大変嬉しく存じます……」
ゴス美、お前、いいのかそれで。また無駄なストレス溜め込んでぶっ倒れるぞ?
「よし! 決定! じゃ、輝さん。そういう事でお願いしますねぇ?」
うーん。別に断ってもいいんだが、下手に返事するとゴス美がどうなるか分からんしなぁ……ちょっと本人にアイコンタクトとってみるか。
「……(断っていい?)」
「……!? ……ッ! ……ッッッッ!!」
めっちゃ目がマジのやつだ。駄目っぽいなこりゃ。ま、仕方ない。夕食代が浮くと思って我慢するか。
「しゃあない。ゴス美がいいってんなら付き合ってやるよ」
「本当ですか!? いやぁよかった! あ、そうだ! どうせなら、私の娘とそのお友達も呼びましょう! 食事は大勢の方が楽しいですからね! それでよろいいですね鳥栖さん!?」
「はい……大勢でのお食事、大変楽しみです……」
……
「はい! じゃ、とういうわけでさっそく電話しますね……あ、もしもしー? 今どこー? あ、jazz子の帰り―なるほどー。え? 友達とゲームセンターに行ってきたのかい? そうかぁ。もうすっかり仲良しだねぇ。ところで今晩なんだけどー外にご飯食べに行く事になってねー? 友達もどうかなって、うん。うん。あ、なるほど。そりゃそうだねぇ? それは勿論さーお家の人に聞かなきゃだめだよねーうん」
あからさまに声色違うな……別にいいんだけど。しかし連れてこられる友達も災難だな。見ず知らずの人間が上司と部下に板挟まれるシーンなんて心に好くない影を落とすぞ。止めるべきだろうか。
「ただいまー!」
「再びお邪魔申し上げます」
お、マリ達が帰ってきたか。そうだ。どうせ多勢で食べる事になったんだ。あいつらも誘うか。そうすればその友達とやらも少しは楽しめるかもしれんし、いざとなれば子供だけ外に出せばいい。よし、そうしよう。
「お兄ちゃーん。見て見てー! ゲームセンターで人形取れたよー」
ドタバタ。
「それとねー? お兄ちゃん」
「あ、もうお友達のお家ついた? 分かった、じゃ。きるねー」
「今日、プランちゃんのご家族とご飯食べてきていーい?」
……うん?
「お誘いしても差し支えなければ、是非にー……あ、
ぺー?
「あれ? プラン。もしかしてこの子が君のお友達かい?」
「左様でございます」
左様て……
あ、ぺーってお父さんって意味? なるほどなるほど。
……いや、いやいや。そんな事ある?
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