サキュバス、受肉の手伝いをする事になりました9
しかし大きくなったな。男子三日会わざればというが、最近は相互性が付与されて女子にも適用するようになったのだろうか。それにしても……うーん、デカイ。
「? どうしたのお兄ちゃん」
「いや、でかくなったなって」
「あぁ。どっち? 身長? おっぱい」
「身長。今どんだけあんの?」
「今年の身体測定だと百八十三だったよ。男女合わせて総合四位だった!」
そんなに。
まぁ学校に一人くらいいるよね巨女。俺が小学生の頃にも一人いたわ。なつかしいなぁ元気かなぁライオネス。あいつの逆回し蹴りは見事なものだった。
「ところでお兄ちゃん。こちらの方は?」
「あぁ、こっちの黒髪でキツ目の方が鳥栖ゴス美さん。あっちで血まみれのまま死んでるのが嶋ムー子。あれ? シマの漢字どれだっけ。島? 志摩? まぁいいや。この二人はサキュバスな。で、こっちで浮いてるのが幽霊の瑠璃マリ。今。なんだかんだでこいつらと同棲してるんだよ」
「そうなの……あ、すみません。ご挨拶しなきゃですね。どうも初めまして。私お兄ちゃんの妹で、
「どうもはじめまして。鳥栖です」
「はじめまして。瑠璃マリです」
「はぁぁぁぁじぃぃぃめぇぇぇぇぇまぁぁぁぁぁぁしぃぃぃぃぃぃてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇエゲ!」
あぁムー子。無理するから血が逆流してエライ事になってしまったじゃないか。おとなしく死んでおけばいいのに。
「お兄ちゃん、女の人苦手なの治ったの?」
「いや、そんな事ないが? こいつらはとは不可抗力というか貰い事故的な感じで一緒に住んでいるだけだ」
「ふぅん」
気のない返事だな。それとも不純異性交遊的な事を疑われているのか? おいおい勘弁してくれ。まったく不名誉だ。心外極まりない。
「とろこで、今日はどうしたの? 二度と帰らないーなんて言ってたのに」
「ちょっとな……詳しくは家で話すよ。ところで、お母さん今日いる?」
「いるいる。最近暇みたいで、いっつも居間でミヤネ屋観てるよ」
主婦か。いや主婦なんだが、そんな人間でもないだろうに。いったい何が起こったんだ。
「ミヤネ屋はしょっちゅう炎上しててネタに事欠かないからいいですよね」
ムー子め、復活そうそういきなりミヤネ屋の話に入ってくるとか。しかも視聴の理由が炎上監視目的とか。なんか色々悲しいやつだなこいつ。いやミヤネ屋は面白いと思うよ? たださっきまでヒグマに食われてたやつがする話じゃなくない?
「ところでピカ太さんとピチウちゃんの名字違うんですね。複雑なご家庭ですか?」
しかもいきなりそういうデリケートな質問ぶっこんでくるし。こいつホントクソだな。
「お兄ちゃんと私はお父さんが違うんです。というか、私はお父さんすらいないというか、なんか凄い人の遺伝を使って人工受精したとかで、出ていくまではお兄ちゃんがお父さん替わりだったんです」
「いいよそんな余計な事言わないで……こいつクズだからどうせ感動ポルノありがとうございます! 的な感想しかくれないぞ?」
「なんて可哀想な子! これはTwitterで投稿するしかない! え~、“今日、知り合いの複雑な家庭環境を知ってしまった。。。異父兄妹? っていうのかな? 妹さんの方は試験管ベイビーとからしいし、なんか衝撃。”っと。よし! 投稿完了!」
「ほらな? クズだろ?」
「……」
「お! 早速通知きた! さーてどんな反応が……はぁ!? 嘘松乙!? ふっざけ! おま! ふっざけ! アニメやないねん! 本当の事やっちゅうねん! 古い地球人め! 最近どいつもこいつも疑いすぎだろ! ワニとかクマとか! そんな穿った目で見るから世の中がどんどん荒んでいく! 綺麗な心は何処へいった! だいたい嘘松とかいう単語事態既に死語なんだよ! 乙なんざ古語じゃボケ! もう怒った! 私だけは真実の発信者という事を証明してやる! というわけでピカ太さんピチウちゃん! どうぞ私のチャンネルの配信に出て真実をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ライオネスよ。お前の逆回し蹴りが今、悪魔にヒットしたぞ。あの日の思い出、忘れてないからな。
「しかし、休憩になりませんでしたね。時間的にそろそろ出発しないとまずいのですが、体力的に持つかどうか。お弁当もろくに食べられませんでしたし」
確かに。ムー子はグルメ・デ・フォアグラされてたけど、俺もゴス美も食べ損ねてしまったな。せっかく作ってくれたのに申し訳がない。
「熊も出たし、仕方ないといえば仕方ないが」
「まさか本土にヒグマが出るとは思いませんでした。まったく埼玉はとんだ魔境ですね」
本当だよ。いっそこの熊を刺身で食べるか? あ、そうだ。クーこのワサビが……ってやつやってみたいな。
「あ、すみませんゴス美さん。それにお兄ちゃんも。それ、私の修行用に放たれたヒグマでして、ご迷惑をおかけしました」
いいのかそれ? 法的な何かに引っかからないか?
「あ、大丈夫すよ? 秘密裏に入手したクローン個体なんで」
いいのかそれ? 法的な何かに引っかからないのか?
「結構骨が折れるんですよね。銃も一応VKS使ってるんですが、バイオニクス処理されて強化してあるから当たっても中々死ななくって」
いいのかそれ? 法的な何かに引っかからないのか?
「あ、でも安心してください。実は私、ここまでハンヴィーで来たんで、家まで送りますよ」
なんで対物ライフルはロシア製なのに軍用車はアメリカ製なんだよ。というか……
「お前、免許は?」
「大丈夫! 私有地だから!」
「あ、そう」
なんだか不安しかないが、このまま山を登るのもしんどいのでお言葉に甘えるとしよう。俺が運転を変わってもいいが、よく考えたらAT限定。軍用車など扱えるわけもなし。なんか情けない気分になるな。
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