サキュバス、引っ越しました1
サキュバス二人(匹? 柱?)との共同生活はまったく大変すこぶるめっちゃくちゃに騒がしいものとなっていた。
「課長! お茶入れましたよ茶!」
「あぁありがとう……ってなにこれ」
「麦茶ですよ麦茶」
「麦茶は分かる。何故甘い」
「そりゃお砂糖入れたら甘くなりますよ」
「は? なんで勝手に麦茶に砂糖入れてるの? 馬鹿なの? 嫌がらせ? 嫌がらせでしょ? ねぇ」
「そ、そんなつもりないです……良かれて思って……」
「良くないんだよ馬鹿! この味覚障害野郎! なんでお前はナチュラルに余計な事するんだ! 百歩譲って麦茶に砂糖がスタンダードだとしても普通に入れるかどうか聞くだろこの間抜けがぁ! お前はあれか? コーヒーでも同じ事するのか? しぃなぁ~~~~いぃぃぃぃ! お前前に聞いてきたもんな!? お砂糖何個入れますかって! その時私いらないって答えたよな!? そうだよ私はブラック派なんだよ! なのにお前入れくさったんだよ砂糖をよぉ! お前の耳は飾りか? それとも脳が腐ってんのか? おい! 聞いてのかこのクソ間抜け! あぁ聞いてないんだったお前! 耳と脳がイカれちまってんだもんなぁ!?」
「す“、す”い“ま”せ“ん”ん“ん”ん”ん“ん”ん”ん“ん”」
別の日。
「課長! バトルサッカーやりましょうよ! バトルサッカー! 対戦! 対戦!」
「面白い。受けて立ちましょう」
「じゃあ早速……お、課長メガトンパワーですか!? 渋いですね!?」
「貴女に恐竜戦車の恐怖を味あわせてあげるわ……」
「ヒュウ! カッケー! マジパネェっす! ならこっちも全力で戦わないと失礼ですね!」
「当然。本気できなさい……え? なにそれ? ひつじさんチーム? は? え? ちょっと、え? ちょ、速! ちょっとそいつら速くない!? ねぇ、ちょっと待って、ちょ、待っ、シュート待って。ちょい、おい、待て。待てっつってんだろてめぇ! おい! 止めろ! シュートすんな! マジだから! おい! マジで一旦コントローラー置け……おい! シュートすんなってテメー! ハットトリック? 全員同じで分かんねーじゃねーかどうやって判断付けてんだたこ! おい! だからシュートするなって!」
別の日。
「課長! ドンジャラやりましょうドンジャラ! 今流行りの鬼滅のやつですよ!」
「いいけど、二人で?」
「今日はなんとピカ太さんが混ざってくれることになりました! 3P! 3Pです!」
「それは楽しそうね。入り乱れて交わる……略して乱交ね」
「そうです! 乱交3Pです! さっそく始めましょう!」
「それでは……って、え? なに? 一回スキップ? は? なんで? は? 卓の回転? 馬鹿なの? そんなんでまともにゲームになるの? ねぇちょっと。は? ドンジャラ? 得点倍? は? ねぇちょっと。なにそのルール。ふざけないで。おいふざけるな。コラ。話聞けって。なんで
別の日。
「すみません。カリオストロ物件ですが。輝ピカ太さんのお電話番号でお間違いありませんでしょうか」
「はい。私が輝ピカ太に間違いありません。本人です」
「はい。あの、申し訳ないのですが、近隣から騒音の苦情が届いておりまして……」
「そうですか。気を付けます」
「いえ、あの、それでですね。複数の女性の声がするとも伺っておりまして」
「知り合いが一時的に部屋に上がり込んでいるだけです」
「そうですか。しかし、あの、もう長く一緒にいらっしゃるようですが……」
「そうですね。何か月かいますが」
「あの、そちらの物件はお一人様のみのご契約となっておりまして、他の方との同居というのはちょっとお控えしていただいているんですよ」
「なるほど。それでは今から追い出します」
「いえ、あの~それは結構と言いますか、もっと根本的なお話をさせていただくのですが……」
「はい」
「そちらの現状を大家さんにお話したところ、大変ご立腹でして、そんな人間に貸す部屋はないと、すごい勢いで捲し立てられまして……」
「はぁ」
「それであの。来月でご退去お願いしたく存じます。それでは、お引っ越しの準備。よろしくお願いいたします。ちなみにお部屋のお探しなら是非とも我が社に……」
ガチャ切り(スマフォだが)。
「どうしたんですかピカ太さん。早くファミスタやりましょうよ。課長がピノの盗塁刺されてめっちゃ怒ってるんで、早く戻らないとまずいですよ」
「そうか。すぐ行く」
さっと戻ってサクッと勝利(ナムコスターズを選んで完封負けすんな)。さて、伝えるか。決定事項。
「みんな聞いてくれ聞いてくれ。退去命令が出た」
「え? なんで?」
「嘘でしょ!? 私達なにもしてないのに!?」
「理由を聞きたいか?」
「はい! でないと納得できません!」
「そうか……では聞かせてやろう。理由はなぁ……」
「理由は……」
「お前らがうるさすぎるからだよぉぉぉぉぉ!」
「ひ“や”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”……く“ぇ”っ“!」
ムー子死亡。
マッスルインフェルノをかましとりえず落ち着いた。面倒な事になったものだ。長年住んだ借家を離れると思うと寂しくもあるのが、これを機にトイレ風呂別の物件に住んでみるのも悪くないかなと思うと、少しだけポジティブな気持ちになってきたぞ。よし、引っ越し準備だ。
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