第5話 スクロール
※主人公の名称が何故か二つになってました。ここで謝罪させていただきます。許してください。今後はレイラに固定です。
「すこぉし待ってて。持ってくる」
怪しい笑顔を披露したリネスさんは店の奥へ引っ込んだ。
いつも思うけど、あの顔で色々損してそう。
そして待つこと数分。
「黒騎士ちゃん、こっちきてー!」
と、店の奥からリネスさんの珍しく大きな声が聞こえてきた。やけに籠った声だなぁ。
……っていうか持ってくるんじゃないんだ。
まぁいいけど……。
私は狭い店内に気をつけながら、声がした方に向かう。すると、床に階段があるのを見つけた。多分、この下にリネスさんがいるのかな。
……うーん、なんか禍々しい気が漂ってる雰囲気。
……私は一応、念のため、警戒しながら階段を降りていく。
薄暗い階段を降り切ると、光が見えてくる。ランタンの優しい光。そこに広がっていたのは、壁一面魔法陣だらけの部屋だった。
と、いうかこれはスクロールかな……。中身は全部開示されてるみたいだけど。
--スクロールはその効力が発揮されると色つきの魔法陣が浮かび上がる。それが目に入ると、魔法や武技などのスキルを習得できる。
ちなみに、数人と一緒に魔法陣を見ても、スクロールを開示するための血を提供した者しか習得はできない。だから盗み見とかしても無駄だったりする。
「黒騎士ちゃん、こっちこっち」
リネスさんは部屋の端にある机に向かって座っていた。そこで私を見ながら手招きしていた。
その机には一本の未開示のスクロールが置かれていた。どうやら私が求めていた例のスクロールだと思う。
ゆっくりと机の横に立ち、私は無言でそのスクロールを見つめた。
見た感じ、紙の質感はそこそこ古そうだ。状態はそこまで悪くないので、何処かの名のある貴族にでも保管されてたのかな?
『……これが?』
「そうよぉ。帝国の有名なスクロールショップから仕入れたの。帝国貴族が所持してたのを買い取ったらしいわ。そして私がツテを使って仕入れたの」
見た目に反して優秀なのがリネスさんです。というか帝国にツテあるのがすごい。
ちなみに、私たちがいる国は《ローガラス王国》。そしてリネスさんが言っている帝国は《バングラ帝国》。有名な魔法士は大抵は帝国出身だったりする。まあ魔法士の国みたいな感じ。
『……もしかして、治癒系スクロール?』
私は期待を込めてリネスさんを見つめた。
けど、リネスさんは首を振った。
「残念だけど、魔法系スクロールなのよ。治癒系は本当に貴重だから……ただの貴族が持ってるはずないのよ」
『そう……』
まあ、わかってた。リネスさんの言う通り治癒系は本当に貴重なのだ。もう回復魔法の魔法陣を書ける人間は存在しないし、遺跡やダンジョンからの排出もここ何百年なし、ってギルドで聞いた気がする。
「まあ、そこまで落ち込まないでね? この魔法系スクロールも、もしかしたら回復魔法かもしれないし……」
その可能性が皆無なのは、私もリネスさんもわかっている。けど、私の雰囲気を感じたのか、申し訳なさそうに慰めの言葉をくれた。
……魔法系。つまり、どんな魔法が込められているのかわからない。それでも、魔法を習得できるスクロールってだけでとても高価。
だから私は文句を言わずに約束通りの白金貨を取り出して机に置く。
『これで……』
「……うん。白金貨10枚、約束通りだねぇ」
リネスさんは数をしっかり数え、白金貨を腰の布袋にしまっていた。
白金貨10枚は金貨1000枚分だ。一軒家を買ってもおつりが来るくらいの値段……つまり滅茶苦茶高い。この店に陳列しているスクロールは平均で金貨10枚ほどの値段だから、このスクロールの異常性がわかるだろう。
だから、本当は回復魔法が欲しかったけど……私の役に立つ魔法であることは確かだと思う。
「またきてねぇ。黒騎士ちゃんなら、いつでも歓迎するわ」
ひらひらと手を振るリネスさん。
私はペコリとお辞儀をしてから、スクロールを暗黒ノ渦に放り込み、店を後にした。
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