第7話 奏と汐音と帰り道
あの後、僕達は部活を終え帰り道を一緒に歩いて帰っていた。
「そういえば、奏先輩って独り暮らしでしたよね?ご飯とかどうしてたんですか?」
「あぁ、毎日香織が作りに来てくれてたよ…あっ、そういえば今日からは家に来ないんだった…」
「あ、それ何ですけど…良かったら私が作ってあげましょうか…?」
「えっ、それは嬉しいけど…親とか大丈夫なの?夜遅いと心配すると思うけど…」
「あ、それに関しては大丈夫です。私も今独り暮らししてますので」
ん?女の子が独り暮らしって、汐音の親さんはよく許可したなぁ…
「んー、まぁ汐音が良いなら僕は構わないよ。それならお願いしようかな?」
思えば、香織以外の人を家に上げるのは久しぶりだな…って、ここでも香織を思い出しちゃう。いい加減忘れるように努力しないと…僕はいつの間にか顔を顰めていたらしく、汐音に顔を覗かれた
「奏先輩、どうしたんですか?また嫌なことでも思い出しましたか…?」
「ん…何でもないよ。ごめんね、ほら、行こっか」
「……はい」
汐音は何か言いたげな顔をしていたけどそのまま歩き続けた。その間汐音は僕の手をちらっと見ては前を向く行為を何回も繰り返していた…手を繋ぎたいのかな…?
「……手、つなぐ?」
「ふぇっ!?いや、でも悪いですよ…」
「さっきからちらちら手を見てたのに何言ってんの…まぁ、飯作ってくれるお礼ってことにしといて?」
「……それなら、まぁ…」
汐音は僕の手をそっと握ってきた。指を絡めるまではいかなかったけど、小さな手が僕の手を包んできた。なんだか、暖かく感じたのは気のせいだろうか…
「奏先輩の手、すごく大きいですね…」
「まぁ、部活頑張ってるからね。自然と大きくなってたからさ…」
いつ頃から大きくなったっけ?もう覚えてないや…そんな事を話していると僕の家の玄関前に来た。
「ここが僕の家だよ」
「なんていうか、失礼ですけど普通って感じですね…まぁ、驚くよりはマシですけど…」
「まぁ、そうだね。とりあえず中に入ろっか」
僕は玄関を開け中にはいると、何故かそこには靴があった。しかも2つ。僕の予想通りなら…嫌な予感がするなぁ…
「……ごめん汐音。今日のところはご飯はいいよ。また明日来てくれないかな?」
「えっ。でも…あっ」
汐音も靴を見つけたのか、少し嫌そうな顔を浮かべた。
「ほんとごめんよ。とりあえず家まで送ってあげるから行こっか?」
「……はい」
汐音は残念そうな顔をしたが了承してくれた。後でこの靴の持ち主たちには説教が必要だな…
「ほら、手。繋いであげるから」
「ありがとうございます…」
んー、自然に手を繋げるようになってきたな…嫌な気持ちは全く無いからいいけどね…
「奏先輩、今日は話聞いてくれてありがとうございました…」
「いや、全然いいよ。こっちも話ができてよかったよ」
「はい。また色々と話しましょうね」
「うん」
きっとこれからも、汐音とは色々と話していくことになるだろう。そして、それを楽しみにしている僕もいた。
「あ、私ここのマンションに住んでますので、ここまでで大丈夫ですよ」
「そっか。じゃあ明日からはここに迎えに来てあげよっか?」
「良いんですか!?ぜひお願いします…!」
「わかった。じゃあまた明日ね」
「はい!」
汐音は手をブンブン振りながらマンションの中へと向かっていった。少し悲しくなったけど、明日も会えると思ったら安心できた。
でも、ここからは不安がたくさんある…恐らくまだ居るであろう二人と話をしなきゃいけないから。そして、間違いなく僕は嫌な思いをするであろうから…
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