第8話 思わぬ再開と思いのぶつかりと別れ
汐音を家に送ったあと自宅に戻ると、靴はまだ残っていた。リビングから音がするので恐らく二人は僕を待ってるのだろう。
「……本当に、何を考えてるんだよ」
一つ目の靴には見覚えがあった。それは間違いなく香織の物だった。しかし、もう一つの靴には見覚えがない。女物か男物なのかは判断ができなかった。早く帰ってもらうために自室に入り制服から普段着に着替えてリビングに入った。そこには___
「ぁ…お帰り…奏」
「あら!お久しぶりね奏君!」
香織美緒本人と、その実の母である香織智恵(ともえ)さんが居た
「……どうも。いらっしゃってたんですね」
「だって美緒ったらいつまでも奏君に飯を作らずに部屋でゴロゴロしてたのよ?だから無理やり連れてきちゃったのよ」
「……なるほど」
つまり、昨日の件は智恵さんには話してない。と。ふざけてるのかな?
「……香…いや、美緒。昨日のこと、何も話してないのか?」
「っ……うん…」
「え、なになに?どゆこと?」
本当に何も知らないのだろう。智恵さんは僕達を交互に見ていた。
「まぁ、智恵さんは何も知らないみたいですし、僕が全部説明しますよ」
そう言って僕は、昨日の出来事と今日の事を少しだけ話した。その間智恵さんは唖然としていた。
「……その話、本当なの?美緒」
「うん…黙っててごめんなさい…」
本当は今すぐにでも美緒の顔をひっぱたいて帰らせてやりたかったけど、智恵さんが居るからちょっと怖くて動けなかった。でも、そう思った直後智恵さんが美緒の左頬に思いっきりビンタしていた…ワァオ
「あんだったやつは…本当に最低ね!見損なったわよ!」
「智恵さん!代わりにビンタしてくれたのは嬉しいですけど落ち着いて…あっ」
しまった!つい嬉しくて本音が出てしまった!今更だけども!!!
「そうね。取り乱してごめんなさい…美緒。ちょっと席外すから奏君と話し合いなさい。そしてどうなったかは後で必ず報告すること!いいね!?」
「……はい」
智恵さんはそれだけ伝えると明らかに不機嫌そうにしながらリビングから出ていった……さて、どこから話そうかな
「……本当は、もう話すらしたくないけど、こうなった以上は仕方ないか。智恵さんに話してなかったのは…まぁ、ほんっとうに仕方ないけど許してあげるよ。それで?何か言いたいことは?」
「……」
だんまりか。このまま何も言わずに返すこともできるけど後がめんどくさいから却下かな…お、ちょうどいい話題があったよ
「この話に反応してくれなくてもいい。でも聞いてくれ。僕は今日後輩でありマネージャー兼サポートの汐音に告白されたよ。それで昨日の事も全部話した。汐音は秋人君の幼馴染でもあるらしいから仲良くしたほうが得だぞ、と言いたいけど正直秋人君に頼まれても近づかないでほしい。美緒が近づくと危ない気がするからね。正直に言うと、僕は汐音のことを気に入ってるし好ましく思ってる。でも美緒のことに関して決着がついてないから良い返事すらできなかった。そこに関しては僕は後悔しているよ。美緒と付き合わなくてよかったなとすら思えるくらい汐音は良い子だ。だからこそ言える。僕は『今』の美緒は大きらいだ。顔すら見たくないくらいにね。」
淡々と伝えたが、それを聞いて美緒は泣いていた。何故美緒が泣く必要があるのだろうか。泣きたいのはこっちなのに。
「それと、美緒が好きだった理由は、何も言わずに世話をしてくれたから。家事をしている姿や、立ち振る舞いを好ましく思っていたよ。でも、それは外見でしかなかったと今になったら思う。結局中身を見れてなかったのだから美緒の事は本当の意味で好きじゃなかったのかなって今日汐音と色々話してて思ったよ。ねぇ、教えてくれない?美緒が秋人君と付き合った理由」
長々と話してしまったから疲れが一気に来たが、更に疲れる予感がする為ぐっと堪えた……あ、後で合鍵貰わないとな…もしかしたら汐音に貸すかもしれないし。
「……私が秋人君と付き合った理由はね、新学期が始まってすぐに姿を見かけて直感で気になったからなの。中身とか外見とか関係なく、直感だったのよ…本当なら昨日、知らない人から告白されたら断ろうとしてたの。でも、その相手が気になってた人だったから…OKしちゃったの…最低だよね、私…直感だけで判断しちゃってさ…自分の事しか考えてなかった。周りをちゃんと見れてなかった…もう、後悔しても仕方ないのにね…」
美緒が秋人君を好きになった理由は直感か…つまり、元々僕の事なんか目に入ってなかったのだろうね…確かに、新学期が始まってから対応が雑になってた気もするけど…そんな変化にすら気づけなかった僕も馬鹿か…
「とりあえずはわかったよ。でももうこの話はやめよう。互いに互いを傷つけ合うだけだ。今後だけど、僕はもう美緒の姿すら見たくないから、美緒から合鍵を返してもらって、極力僕に姿を見せないこと。ここまでしたんだ。それは当然だと思ってほしい。それと、僕の飯については解決したから安心してくれていいよ。あと最後に一つ…汐音を傷つけたら許さない。これだけは絶対に守ってほしい。あと美緒からの条件を飲む気は一切ないからね」
「……わかっ…た」
「わかったならさっさと合鍵置いて帰って。もう一緒にいたくないから」
美緒は無言で合鍵を置くとふらふらと立ち上がって帰っていった。サヨナラって言っておけばよかったかな…さて、もうこれで美緒のことを気にする必要は無くなったかな…明日早速汐音に返事をしないと…
ーーーーーーーー
【あとがき】
奏君、完全におこでしたね。と言うわけで二人の正体は美緒と美緒の母である智恵でした。父に関しては登場すらさせないので名前は伏せます。これで香織家とは縁を切った感じになりますかね?あ、でも智恵さんに関してはちょこちょこ出すつもりではあります。思わぬ手助けになるかもですね…
美緒…哀れなり!
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