ツヨシ

第1話

友人の長野から誘われた。

心霊スポット巡りに。

行き先はあの犬鳴村だ。

当日は長野の車で向かった。

古い峠道を走ると、鉄の門があった。

そこで前で車を止め、そこからは歩きだ。

しばらく進むと、ブロックでふさがれたトンネルに行き当たった。

長野が言った。

「上が空いているな。通れそうだ」

「うん、通れそうだ」

俺と長野の会話は緊張感など微塵もなく、まるでハイキングにでも来たかのようだった。

長野が小さくうなずき、ブロックに取り付いた。

そして登りはじめた。

俺はそれをぼうと見ていた。

長野は上まで登り、そこから中を覗き込んだ。

その途端、長野は「うわっ!」と大きな声を上げると、ブロックから滑り落ちてきた。

「どうした?」

俺が駆け寄ると、長野は尻餅をついたまま、少し震えた声で言った。

「目が……、目が合った」

「目が。誰と?」

長野はなにも返さず、立ち上がり駆け出した。

「おい、待て」

俺は長野を追いかけた。

長野はそのまま車まで走り、乗り込んだ。

俺も慌てて飛び乗った。

「どうしたんだ?」

長野は震えた体で車を運転していたが、俺が何度聞いてもなにも返答しなかった。


数日後、長野から電話があった。

「どうした?」

そう聞くと、長野が答えた。

「目が合うんだ。あれ以来ずっと。いつでも、どこでも」

「誰と。どんなやつと?」

電話は切られた。


その後、共通の友人から長野の目が急に見えなくなったと聞いた。

「これでやっと、あいつと目が合うことがなくなった」

長野はそう言うと、狂ったように笑ったそうだ。


       終

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ツヨシ @kunkunkonkon

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