―Noisy Hands― 僕の両手は騒がしい
おてんと
第Q話 両手に魔族が寄生したある日の出来事
この1話はこの物語の雰囲気を知っていただくための閑話です。
・ギャグ&下ネタ
・少しエッチな描写
・理不尽なチート無し
・ハーレム?(両手に女性魔族が寄生している)
でもよろしい方にオススメです! ぜひ、ご笑納ください!
*****
拝啓、お父さん、お母さん、お変わりありませんか?
異世界転移した息子は元気です。
『グガァアアァァ!』
「....。」
目の前で口を開けた大きなトカゲが怒声をあげてますけど、元気に生きています。
というか、この信じ難い光景はアレですね。
「ドラゴンだぁぁああぁぁああ!!」
『だぁぁぁああああぁあ!!』
『だー』
僕たちは現在、ドラゴンと対峙しています。
*****
真っ赤な鱗に、ドデカい翼を広げ、尖った歯は綺麗に並んでいた。そんな口を開けたままじっとこちらを捉えているドラゴンが一体、僕の視界に入っている。
距離にして五十メートルくらい。周囲は木ばかり。どっかの森林だろう。
『どこだここは? つーか、ドラゴンとは珍しいな。ち〇こ付いてねーからメスだぞ』
女性の声で下品なことを言うこの方は“
驚いたことに僕の右手に寄生した女性魔族なんだ。
目と鼻は僕には見えないのだが、“口”だけはちゃんと手のひらに生えている。なんというか、NA〇UTOに出てくるデ〇ダラさんのイメージに近い。
『妹者、ドラゴンはそういう性器を露出しません。ち〇ぽをブラつかせてるドラゴンなんていませんよ。交尾のときだけ出すんです』
こちらもまた同じく女性の声で下品なことを言う魔族、“
右手に寄生している妹者さんのように、姉者さんは僕の左手に寄生している“口”だけ魔族さんだ。
「異世界に来てドラゴンと会える日が来るなんて....」
『感動している場合か』
『おそらくアレは“レッドドラゴン”でしょう。しかも子竜。気性が荒くて有名なドラゴンの一種です』
少し前、日本人である僕は、ひょんなことからこのように両手に魔族姉妹が寄生したまま異世界転移した。
右手と左手に魔族が寄生している僕の気持ちなんてきっと誰にもわからないだろう。本当に毎日辛いんだよ....。オ〇ニーとかさ。ち〇ポジとかさ。
「というか、なんであのドラゴンはこっち向いて口を開けてるの?」
『んなもん、【
『ほら、あの口の中が少し光ってるでしょう? 今から火を吹くんですよ。私たちに』
は?! なんでそれをもっと早く言わない―――
『ガァァァァァアァアアアアア!』
『『ご愛読ありがとうございました!』』
「ちょっ?! 待っ―――」
瞬間、僕は今までに体験したことない身を焦がす程の火炎放射を食らった。
*****
「ぶはっ!! ハァハァハァハァ....い、生きてる?!」
『あたしのスキルで治してやったんだ。感謝しろッ!!』
『苗床さん、あなたすごいですね。開幕早々に炭と化す異世界人なんて普通いませんよ』
君たちが呑気にドラゴンの性器を鑑賞なんかしてるせいでしょ....。
ちなみに姉者さんが言ってた“苗床さん”というのは僕のあだ名である。読んで字のごとく、寄生された僕にはぴったりのあだ名だ。....ぐすん。
「ねぇ、今更だけどなんでこんな森の中に僕たちは居るの?」
『さぁ?』
『知りません。というか、深く考えているは余裕ありませんよ?』
「あ」
そんな悠長に二人と話していたら、目の前のドラゴンが僕目掛けて走ってきた。走るたびにドスンドスンと地響きが、数十メートル離れた所に居る僕の素まで伝わってくる。
『あたしのスキル、【
「言ってる場合か!」
僕はドラゴンを背に逃走を開始した。
妹者さんが言った【固有錬成:回復】とは、すっごいレアなスキルらしくて、この人しか持っていないスキルである。
その内容も魔力無しでバンバン全回復できるという代物だ。驚いたことに、このスキルは蘇生効果も含まれる。
戦闘の度に数えきれない程の致命傷を負っている僕にとってはありがたいスキルだ。
『ドラゴンとはまだ戦っていませんし、試しに挑戦しましょう。危なかったら逃げればいいだけですし』
「君たちの宿主は炭と化したけどね?! というか、姉者さんも【固有錬成】使ってよ?!」
『わかりました。引かないでくださいね?』
「わかってる!」
そして妹者さんだけでなく、姉者さんも【固有錬成】を持っている。
内容は鉄鎖を生成すること。異世界では鉄鎖なんて役に立たないと思っていたが、実はそんなことはなく、この鉄鎖には“魔力吸収”と“補強効果”ができる力が備わっているのだ。
そして「引かないでください」と言ったのは、
『【
「『....。』」
鉄鎖を生む出す際に、‟口”から出さないといけない点である。
こうして左手のひらからジャラジャラと鎖を出して武器にする。
貴重なスキルでもゲロのように吐き出さないと発動ができない。少し残念な気持ちに駆られるというのが本音だ。
『ひ、引かないって言ったじゃないですか?!』
「え、あ、いや、別に引いてないよ?」
『あ、ああ、もう慣れたし』
『“慣れた”?! じゃあ、なんで二人は
僕が横へ左手を目一杯伸ばしたことに姉者さんは遺憾らしい。
ごめんね。ゲロ吐いている人に近寄りたくないじゃん?
ちなみにこの【固有錬成:鉄鎖生成】は妹者さんと同じく魔力を必要としないし、無限に生成できる。
通称、‟無限ゲロ”と呼んでいる。
「鎖が
『やっぱり私のスキルをゲロだと思ってたんですね?!』
『あ、またブレスくるぞ!』
「か、回避ッ!! 回避ぃー!!」
『させませんよ?! もう一度痛い思いをして反省してください!』
『あ、ちょ、姉者ッ! コイツの身体を縛ってどうすんだよッ!!』
「ヤバいヤバい! マジで身動き取れない! 姉者さんこれ解いてよ!!」
『ふふ。チャーシューになったら解いてあげます』
『チャーシューになる前に炭になるぞ』
「本当にマジで死―――」
『『あ』』
二度目の焼死である。
*****
「もうほんっとなんなの?! 一度目は無駄話して死んだし、二度目は仲間割れで死んだし!」
『二度目はあなたが人のゲロ吐いているところを見て小馬鹿にしたからでしょう?』
『禿同』
自分でゲロって言ってんじゃん。
『おい、またあのヤローこっちに向かってきたぞ!』
「僕、あのドラゴンになんか悪いことした?!」
『知りません。さ、いつも通りに攻めますよ』
僕らはレッドドラゴンと呼ばれる体長約十メートルにも及ぶドラゴンに再び向き合って臨戦態勢へと入った。
右手で先程生成した鉄鎖をぶんぶんと円を書くように振り回す。
『おい、童貞! 周囲に木がある! 身を隠しながら攻撃するぞ!』
「童貞って呼ばないでよ!」
僕は文句を言いながら近くの木に向かって走った。
「体格差的に足を狙えばいい?」
『ええ。魔法を使う分の魔力をドラゴンから吸収したいので、足首かどっかに巻き付けてください』
姉者さんの指示通り、僕はドラゴンの死角を狙って木々に身を隠しながら近づいた。相手はまだ気づいていない。
―――よし、反撃開始だ。
「おりゃ!」
『グアッ?!』
隙をついて、片方の足首に鉄鎖を巻き付けることに成功した僕は、急いでその場を去った。手から鉄鎖を離していても、ドラゴンの魔力をちゃんと吸収して姉者さんの所へ転送される。
ドラゴンは近くに居た僕の存在に気づき、赤くて太い尻尾を横薙ぎに放った。木々なんか知ったこっちゃないといった戦法である。
当然、射程圏内に居る僕はこの攻撃をもろに食らって吹っ飛ばされる。
「ハァハァハァ....。全回復してくれるのはいいけど、もうちょっとなんとかならない?」
『おら、起きたらさっさと動け!』
『あッ! 魔力がッ! 魔力が私の中にドクドクってぇ!!』
「『....。』」
『中に出されちゃってますぅ!!』
左手が喘いでいるんですけど。絶頂してるんですけど。
この姉妹たちの宿主である僕は、自分の手なんかに欲情しちゃいけないんだけど、それでも色っぽい女性の声に、無意識に息子が反応しちゃう。
伊達にオ〇禁生活続いていない。
『おい、前屈みになるなよ。左手だぞ』
「ごめん。最近溜まってて」
『溜まってるとか言うな』
『あ、来ます』
「え、また絶頂?」
『いえ。ドラゴンが』
『あ』
そう言われて、前屈みの状態のまま、僕は眼前のドラゴンに踏み潰された。
*****
「ゴホッ! ゴホッ!」
『すげぇーな。
『おい、鬼太郎!』
声真似上手いけど、それ目玉お◯じ。
僕は例のごとく妹者さんの回復スキルによって全回復した。今はドラゴンが思いっきり踏み潰してできた足跡型の溝の真ん中で仰向けになっている。
「ドラゴンは?」
『死んだと思ったのか、私たちから離れていきましたよ』
ああ、足音のドスンドスンと地響きが聞こえるけど段々小さくなってきているね。ドラゴンが立ち去って行ったのか。
これでドラゴンから解放された。痛い思いをしなくて済むぞ。
「さ、帰ろうか」
『『は?』』
魔族姉妹が何言ってんだコイツって顔で僕を見上げてくる。目がどこにあるかわからないけど。
「いや、もう戦う必要ないじゃん?」
『おいおい。この世界、ナメられたらおしめーだぞ!』
『さ、仕返ししましょう』
「....。」
もう好きにして。いっつも僕が反対しても無視しておっ始めるんだから。
『と言っても、魔力も十分に吸収できたので一撃で屠るだけですが』
「え、じゃあ、あとは近づいて二人に任せてお終い?」
『言い方。ま、そーだな。あーしらに任せとけ』
んじゃあ、あのクソトカゲに仕返しでもするか!
一撃で倒せると聞いてはもうやるっきゃないでしょ。
「おっし、バチクソ盛り上がってきた!」
『クールにいこうぜぇ』
『ふふ。燃えてきましたね?』
僕は全速力で赤いドラゴン目掛けて走った。
気づかれないように近づきたかったけど、僕とドラゴンじゃ歩幅が違うので、ちんたらしていたら近づけない。
『グアッ?!』
ドラゴンが表情豊かにも驚く。
死んだと思い込んだ相手が走ってきてるんだもん。しょうがない。
『グアアァァアアアァアアア!!』
『来るぞ! 【
『迎え撃ちます。苗床さんはそのまま突っ走ってください』
「わかった!」
僕は両手を広げた。
右手には赤い魔法陣が、左手には青い魔法陣が、それぞれ手のひらから浮かび上がる。
『派手にいくぜ! 【紅焔魔法:爆散砲】ッ!!』
『凍りつきなさい。【凍結魔法:氷牙】』
「熱ッ! 冷たッ!」
【紅焔魔法】は火属性系統の魔法の一種で、【凍結魔法】は氷属性系統の魔法の一種だ。
右手から爆撃音とともに炸裂したのは【爆散砲】。前方の視界を覆い尽くす程の爆破は高温の熱を孕んでいた。
一方、左手からは【氷牙】という地面から勢いよく氷山のような荒々しい牙が生成されて、ドラゴンに直撃した。
『ガアアァァァァァアアァアアァアア!!!』
対するドラゴンはブレスで対抗する。
『『はぁぁああぁああ!!!』』
「死ねぇぇぇえぇええ!!」
が、こちらの攻撃は勢いを失わない。
どうやらこっちの方が威力は上だったらしい。
ドラゴンは二種の属性魔法を真正面から成す術もなく食らうのであった。
*****
「やぁーっと終わったー」
『ドラゴンも大したことねーな』
『まぁ、私たちもチートスキルを駆使してましたし』
なんか僕が思っていたチートスキルとなんか違う。少なくとも俺TUEEE‼じゃない気がする。
現在、ドラゴンを倒した僕たちは今は荒れ果てた森の中で、仰向けになって青空を仰いでいる。僕は上体を起こして、今しがた討伐したドラゴンんの下へ向かった。
「よいしょっと。素材採取して帰りますか」
『『....。』』
「どうしたの、二人と..................も」
いつもうるさい魔族姉妹が返事をしないので僕は両手を見たが、なぜ黙ったかは自分を中心に陰った地面を見ればわかる。
青空だってことはわかってたし、陰ったのは雲が陽の光を遮ったからだとも考えた。でもここまで暗くなることは無い。どんなに分厚い雲でもここまでは暗くはならないのだ。
それでも僕はまだ天を見上げていない。
『グゥゥゥウウウウ』
そして頭上から警戒心旺盛な唸り声と、バサバサと空を切る翼の音。次第にズシンと重みを感じさせる巨体が着地する轟音が響いた。
僕の後頭部に荒い息がかかる。
「....マジすか」
『もう魔力空だぞ。また一からやり直しだ』
『まぁ、子の竜が居れば、近くに親の竜も居ますよね』
そう。まだ眼中に収めていないが、僕の後ろには真っ赤な鱗を纏ったドラゴンが居るのだ。
「おうち帰りた―――」
『『あ』』
『グガァァアアァアァアアア!!』
三度目の焼死である。
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