痛いのを何処に飛ばす?んだぁ?
翌日の早朝 街に響く大伝奉所の鐘(朝5時)。副大司祭クレメンテス寝室横の控えの間にキュルリと機械音を鳴らし床ロボが現れた。床ロボによる安全確認後、蛍の桜色の転移陣が、広がりリドに呼び出された者達が現れる。茜はロゼを抱き盛大にあくびを繰り返し目をショボショボさせている。何時もより4時間も早い。
「ロゼぇ…リドおじちゃんにおはようだよ」抱いているロゼの手を振りリドに呼び掛けているが、どう見ても熟睡しているだろうと突込みたいのをぐっと我慢した。どうもこの可哀想な胸の娘には、調子を崩され笑ってしまう。
熟睡中にナユに起こされ・ここに飛ばされたが、何か不都合でもと司祭服のジノが、聞いてきた。「早朝からの呼び出しですまないが、昨晩・協力者達と協議した結果・早急にクレメンテス様に回復頂き指示を仰ぎたいと意見が、まとまった。今からクレメンテス様の治療を頼みたい。が…先ずはロゼの魔素量を確認したい。ロゼをここに」
何やら魔導具を置いてあるテーブル前ふたり用のソファに座るシズの横を進められロゼを抱いている茜が、腰を下ろす。揺れに目覚めたのか・もぞもぞと動き茜の胸に顔を擦り付け安心したロゼは、また寝息を立て始める。老司祭ふたりが、説明しながら魔素計測機の布を外し準備始める。
それを見届けたリドは、年若い側使えを連れ・後を頼むと何時もの側使えに告げ。自身の執務室へと退室する。
人払いが、終われば側使えが、扉に鍵を掛け盗聴防止の魔導具を発動させる。
シズ様…魔導具の準備を終えた老司祭が、シズに声を掛ける。横に座っていたシズは頷き…ロゼの小さな手をそっと持ち上げ説明を始める。
「お体が、弱っていらしゃる。クレメンテス様の治療には、容体を見ながら細くゆっくり魔素を流す必要が、有ります。ロゼは治療経験は、ありますか?」「あたしとラバを治してます。後は道ばたに転がってた死にそうな犬や猫にぎっくり腰の流民の親父もいたねぇ」画面越しに見ていたドーズからの道中を思い出しルセに確認をする。
「えぇ…突然・誰かが、泣いてると言い行方をくらまし光魔素治療を施していました」「どの様に治療を」「手のひらから光をどばーと飛ばして治してた。初めては(読み切り3をどうぞ)、あたしの口の中に、人差し指をグリグリ押し付けて…」「魔素操作を学んだ事は…魔素量を計測した事は?」ルセが、どちらも有りませんと応える。
「では…魔素量の計測から」ロゼの小さな手を取りシズが、前に置かれた水晶に軽く押し付ける。水晶に小さな波紋が、広がり消えた。3度繰り返すが、それ以上は、何も起こらず。見詰めていた老司祭ふたりは、シズをみて首を振りロゼの魔素が、余りにも少ないと伝えた。
様子を見ていたルセが、ロゼの小さな指より指輪を抜き取り・ネックレスの止め金を外しロゼの司祭服のポケットへ仕舞う。「光魔素が、苦手な闇に頼まれ光魔素吸収の指輪と魔素を押さえるネックレスを常に装着しています。茜…ロゼの手のひらを乗せてください」水晶に乗せた小さな手のひらから一筋の光が、注がれ…やがて幾重にも光の波が、流れ込み透明な水晶球の中心に光の渦が現れる。老司祭のひとりが、慌てて・ここまでと水晶を遠ざけた。「魔素量は、十分です。魔素が、多く貴重な魔道具を壊されては、困りますので計測は、ここまでで結構です…ですが、この年齢にこの魔素量。健康被害は、ありませんか?魔素が、溜まり熱を出すとか?このままでは、命の危険も出て来る事もありますが」
ピンポーン〜来店音が、鳴りソファの後ろで待機していた床ロボが、動き出し黒い司祭服を着た闇の姿が、ホログラフで現れる。「おぱよう&新しい人お初でぇす。闇と申します…よろしこ。ロゼの魔素量は、吸収の指輪と制御のネックレスでアタシが、調節しているから大丈夫…成長して大人になれば魔素器官も育つし」ニッカリ笑う闇に茜が声を荒げる。
「あんた…光魔素が、怖くてロゼに指輪やネックレスを渡していただけかと…命の危険とかアタシ聞いて無いよ」ロゼを抱き声を上げる茜に薄く目を覚ましたロゼが、うるさいと茜の口元を小さな手でペチペチ叩き。あくびをして再び目を閉じる。
「まだ眠たいのか。魔素の流れと放出量を見たいのだが…」ワキワキする老司祭コンビに床ロボが、小型カメラを渡し計測器などの魔導具の記録をナユに転送し始める。
「一刻も早く副司祭さまの治療を行いたいのだけど…お体の弱っている方に大量の魔素は、命を落とす事もあります。まず私が、ロゼに治療法と魔素の流れを見て共に治療したいと朝早くに来てもらったのだけど…やはり早過ぎましたね?」シズが、優しくロゼの頬を撫でるが、茜の薄い胸に顔を擦り付け嫌々をする。
「眠っていても大丈夫です…魔素を
少し馴染ませて診ましょう。ロゼ…手を広げて」ロゼの小さく柔らかい手を両手で軽く握り。シズは細くゆっくりと魔素を流し込む。魔素は拒絶される事も無く吸収され続け…薄く目を開けたロゼは、恍惚の表情を浮かべ。両手でシズの手を取り魔素を奪い始めた。
「いかん…茜…ロゼの手を離せ」部屋の隅から怒声が響く。
まだ寝惚けて魔素を求め続ける。ロゼを抱き抱えソファから立ち上がり茜は、部屋の隅へシズと距離を置く。何時の間にか側に立つバウスに警戒心丸出しの茜だが、大人として挨拶だけは、してやった。「朝からお元気そうで…何で居るの?」「屋敷に戻ると口五月蝿い者達がおる。午後からは、登城だしの。使えの者を伝達と着替え取りに帰しそこに泊まった。外の夜営より楽だぞ」床には積まれ乱れた寝具が、置かれていた。
ロゼに魔素を奪われたシズに老司祭達が、魔素回復薬を飲ませ様子を見ている。加齢による魔素量の減少と魔素器官の縮小で全盛期の十分の1ほどの魔素を持つシズには、ロゼの魔素強奪は、予想もしない行いだった。
「取られたなら取り返したら…ロゼ〜いま魔素を沢山くれたシズお婆ちゃま。魔素が無くなって具合が、悪いの。お婆ちゃまにロゼの魔素をあげて…手始めに頑丈なバウス老で練習してから…あら嫌なの。ならルセね」
花桜が、魔素治療の練習にバウスを指名するが、ロゼを抱いた茜とロゼから盛大なブーイングが上がる。キラキラと両手を広げて待ち構えたバウスは、がっかりと頭を下げた。さっさとルセに抱き着いたロゼは、胸にスリスリしてからルセの手を取り。何時もの呪文を唱えた。
「痛いのぉ〜痛いのぉ〜飛んで行けぇ〜」一瞬ロゼの全身から魔素が、溢れ小さい手のひらに集まりルセに注がれる。大量の魔素を注がれ魔素酔いをするルセ。「多過ぎる…それになんじゃい。その呪文は、回復なら《聖なる光 彼の者を癒せ》…じゃろ?痛みを何処に飛ばすんだぁ〜」大人が、揃って回復呪文を唱え教えるが、何度やっても光魔導は、発動せず涙汲むロゼは、ついに茜の脇に顔を潜り込ませ団子虫になる。
「あ〜面倒臭っ…おっさん後ろ向いてロジェ〜さっさと終わらせて後でプリンにアイス乗せたの食べよう。行くようぅ…何だっけ?おっさん呪文唱えて」バウスに続きロゼの手を取り茜も一緒に呪文を唱える。「せいなるひかりかのもをいやせ、聖なる光〜痛いの痛い飛んで行けぇ〜どーん」
手のひらから溢れる光魔素を笑顔でバウスの腰に叩き付けるふたり。勢いで床に崩れ落ちたバウスは、床で寝た腰の痛みが、無くなったのを確認した。
「癒し効果は、良いが…流石にこの魔素量を弱った副司祭長には、危険だ。どうする」事の成り行きを見ていた老司祭達に意見を求めるバウスにシズが、進言する。
「ロゼの魔素を私が、受け取りクレメンテス様に注ぐ手順なら問題が、無いと思いますが」それならロゼとシズの間で魔素量の調整の練習も出来きると一同の意見も揃い 先ずは人差し指から少しずつ魔素の移動を試みる。室内に居る者達の手の平に休憩を挟み魔素を手渡す練習をするが、異世界人の花桜に魔素を流しても何の変化もなかった。
部屋の反対側では、ジノを中心に隣室で控えるアクバ派側使え排除の相談をしていた。床に伏すクレメンテスに付き添う側使え達は、筆頭側使えと下の世話をする側女達などを含め常に5人が、待機している。が…筆頭側使えが、薬問屋の悪党達に家族を人質にとられエリナの魔素強奪を見て見ぬ振りをしている。
おそらく側仕えにも外部からの刺客が、入り込んでいる可能性もあると元請負人ジノの意見で、戦える者を選び相手の動きを想定する。主力はもちろんジノ頼り…サブに元ヤンで喧嘩慣れと拳法を覚えてる茜。ジノから請負人流の剣術を教わっているルセが、脇を固めバウスが、ロゼ達を守ると申し出てくれた。刻限になり皆が、それぞれの場所に移動する。
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