異世界でプレゼン
「エルシオン…パウロは何処にいる」
リドの怒気を含む問に答えを戸惑うエルシオン。重い沈黙を破ったのは、いつの間にか居た。闇の素っ頓狂な声と行動の速さ。
「パウロの死体なら〜あたし持ってる。見るなら出すけどぉ〜」ジノが止める間も無くトサリと黒猫と共に床に置かれ胸を朱く染めた死体が、うめき声を上げる。
「あら…やだぁ〜息吹き返してる。クロ…あんた。ロゼに貰ってる。光魔素で回復させた…そうなのぉ」呑気に眷属の黒猫と会話する闇を押し退け。ジノがロゼを抱くルセを前に出し・ロゼの小さな指より魔素吸収の指輪を外し語り掛ける。
「エルの友達も胸が、痛いと泣いてる…ロゼ治してくれるか?」時が止まる闇の空間で保存されていた死体だったパウロは、再び鮮血を流し胸を朱く染めていた。少し怯えながらもロゼは、小さな手を広げ何時もの呪文を唱える。「お兄ちゃんのいっぱい痛いの痛いの飛んでいけぇ〜」リドの寝室に光が、溢れパウロの傷が、塞がっていく。
「「ちょっと〜蛍。急に…あっ…今晩は〜。コンビニ姉妹ですぅ」」エルシオンを手当てした花桜を思い出した。蛍が花桜&茜に救急セットを持った床ロボを転移させる。湯屋のフロアで成り行きを見ていた日本人ふたり。以前から願っていた。異世界デビューを果たした。装束は…ロゼとお揃いに買った・うさぴょん寝間着。
蛍〜と怒る花桜を無視。力を使い果たした蛍は、さっさと花桜の胸に潜り込み休息に入った。同じく魔素を使ったロゼもお寝んねタイムに入り・ろじぇも〜うさぴょん着るぅ〜茜の足に抱き付きぐずグズする。
インパクト強い異世界デビューだと苦笑いする花桜と茜は、せめて衣装は考えて欲しかったよね。しかも裸足だし〜薄着だしぃ〜に応えた床ロボが、ふたりのモフモフピンクうさ付の室内履きと羽織るルームウェアを出して来た。
突っ込み所は、満載だが、取り合えず
パウロの塞がった傷跡回りの血溜まりを大判アルコールコットンで拭い。鉄分増量野菜ジュースを飲ませる。床に流れた血は、床ロボに任せ手当ては終了。
手狭に成った自室から広い治療室へ移動すると側使えを呼び出すリド。突然の来訪者達に驚く側使えだが、リドの指示を受け準備に下がる。
パウロも一緒に治療室へ運ばせるので眠っている。警護を起こす様にリドに言われ闇は黒猫に指示をする。クロが必殺肉球ぷにぷに猫パンチの連打で寝ている。警護達を叩き起こす。
ナユが、キャスター付き簡易ベッドを送って来たので・まだふらつく警護とジノ達でパウロをベッドに寝かせ目隠しにシーツで覆う。邪魔者避けにジノが、皆とリドをベッド付近に呼び出べ子のスイッチを押す。ふわりと光の結界が、現れた。
司祭エリアは、土魔素持ちが、多く余り影響は無いが、貴族の治療室は、光持ちが、控えて居るだろう。既に表面が、ちり付いて来ている闇は、用事は終わったと手を振り物陰に逃げた。
夜半の司祭自室が、並ぶ廊下を人目を避け。警護に誘導され1番近い貴族用の治療室へと案内され各々側使えが、準備した椅子に座る。
ロゼを抱いた茜とジノが、贅沢な作りのソファに座り両隣に花桜とルセの席が、設けられていた。下働きのエルシオンの座る席は、無く気付いた花桜が、床ロボに何かを告げる。程なくキャンプ用の折り畳椅子を3脚持って来た。椅子を広げひとつをリドが、座るソファの横に置き・側使えに座る様に進め花桜が、腰掛けていた椅子にエルシオンを座らせる。花桜は、折り畳みの椅子に座りジノに頷く。
戸惑う側仕えに頷くリド。居心地悪そうに布と硬い支柱の椅子に腰を下ろし包み込む安定感に驚き目を瞬く男。ジノの人払いに出て行く。警護人達に誰も入れるなと指示を出し側仕えが、内側から鍵を掛ける。それを確認したジノが、デベ子の結界を部屋いっぱいに広げテーブルに置く。
リドが切り出す。「さて良いかな?先ずはパウロの治癒だが…」「そこは有り難うでいいよ。息子さんなんでしょ。闇持ちだけど…」眠くなりぐず付くロゼをあやす茜が、不義の子供を魔素で差別する。伝奉所のあり方に嫌みを込め言う。
「無礼な」立ち上がろうと慣れない椅子にバランスを崩す側仕え。大声に怯え泣き出たロゼを抱き上げ立ち上がった茜。「ロゼは、ねんねの時間だね。あたし達は帰る。花桜も着替えて来ない」「そうねぇ…お茶も出ない様だし…蛍起きて。コンビニに戻るよ。ジノ話し合いを続けて…ナユ見てないでプレゼンよろしく」「それじゃね。リドおじさん…ロゼもバイバイして」
茜の胸元に抱かれ小さい手を振るロゼ。薄桜色が、淡く光り風変わりで騒がしい女達は、姿を消した。
男ばかりの治療室に重く沈黙が、続きため息と共にリドが沈黙を破る。
「要件は?先程の娘を伝奉所に使えさせたいのか?力はあるが、報告では、流民の様だ。辺境の伝奉所にでも置いてよいが…」
突然コンビニの来店チャイムが、鳴り猫耳娘ナユタンが、床ロボの上に現れる。「お初ですにゃん〜お邪魔するにゃ。お話中〜残念にゃがら〜ロゼは、これまでと変わらず自由に暮らすのにゃ」ナユタンの姿が、崩れナユに代わる。「説明代わりにこちらの動画を見て…」白い壁に映し出されたのは、ナユが、編集した紙人形アニメ。
エリナに魔素を奪われたロゼと10年探し続けたルセの物語・後半は大伝奉所に現れたロゼが、エリナとアクバの悪事をあばき復習を果たす。が…闇に操られ暴走したロゼを土魔導師達が、身を挺して(連れ帰るだけ)ドーズに封印し終るシナリオ。
アニメが終わり。画面は、副司祭の部屋に変わりエリナが、見慣れた治癒中の動画が流れる。切り替わり先程のパウロを治療したロゼの画面が、2つ映る。色が反転しネガ画面の右には、魔素が見れるフィルターを掛けてるとナユの説明が入る。ロゼの全身から手の平を介して光の魔素が、パウロの体に注がれ傷が、塞がる様子がよく判かった。
再びエリナの画面になり副司祭の体から魔素が、細くエリナの指へと流れてゆく。治療と偽りエリナは、副司祭の魔素を奪っていた。「なんとおぞましき行為だ」リドと側使いの声が、重なる。
画面が、変わりぶれた静止画と音声だけの地下牢の残虐行為が、流される。ナユの説明でこの下働きの女は、魔素を抜かれ死に遺体の行方は、判りません。殺された下働きは、身分を隠しメイドとして潜入していたリドの部下だった。「アクバ様まで可鍛していたとは…」
再び来店チャイムが、鳴り着替えて来た花桜が、カートに色々乗せて戻って来た。「プレゼン終わった?」「盛り沢山だけど一通り終わったよ」情報の多さにリドは、何を言うべきか迷っていた。
「一旦休憩しましょ。カフェ or ティ?リドさんは、紅茶か緑茶もありますけど…ジノはコーヒー自分でどうぞ。あたしカフェオレね」ドンとミルクなどが、乗ったトレーと銀色のポット・カップとソーサ・ティースプーンが、入った籠などが、テーブルに置かれて行く。 花桜は、カートの下段から摘まめるクッキー・薄焼き塩煎餅などを乗せた大皿をリドの前に置き・側使えに毒味します?と聞きカップを2つ籠から取り出し何が、いいかと聞いていた。
ジノが、注ぐモカの香りに惹かれコーヒーポットを指差し。「わたしもそれを頂こう。毒味はいらない」初めて飲むブラックコーヒーに眉を潜めるリドに花桜とエルのカフェオレを入れていたジノが、ミルクと砂糖をどうぞ飲み易くなりますと進める。
ルセと側使えに緑茶を渡し各々焼き菓子を食べ脳の休憩を取る。皆が飲み終わり。花桜とジノが、2杯目を注ぐ・床ロボが、現れ紙の資料をリドとエルシオン・花桜に渡して来る。
「では続きを始めるよ。手渡した資料は、薬問屋が、関わってる。闇組織の被害者とこれからの対象者。全てでは、無いからまだ増えると思う。協力して欲しいのは、王家への繋ぎとエリナとの対決の後始末」
「王家と伝奉所は、古代より不可侵の制約が、有り極力関わりを避けている」「王子の治療には、行ってる筈だけど?あそこも守りが、強いけど内部からなら行けそう…だから…」「だから?」リドが聞き返す。「協力してほいにゃん。副司祭の回復と調印式までエリナにバレないよう隠蔽するゃ〜」
ナユからナユタンに変わり上目遣いに大きな瞳をパチパチおねだりポーズをクネクネ始めた那由多。ため息を付いた花桜が、床ロボの投影スイッチを切る。ひどいと壁にナユタンの姿が映る。
「はいハイ…判ったからナユに戻って…あれ?ロゼまだ起きてる?」ナユタンの後ろ湯屋のフロアでうさしゃんパジャマで跳び跳ねているロゼと茜が、チラチラ見える。花桜に気付いた茜の顔が、アップになり泣付いて来た。「寝せるの失敗〜覚醒しちゃたぁ…あはは。ルセまだ終わらないの?」じっと黙っていたジノが、立ち上がり。
「今夜はこれで帰ろう。リド様良き答えを…明日…また同じ時刻にこちらに参ります。あとエルシオンは、協力者として・こちらで預かります」ジノはそう告げ。手慣れた動きで茶器を引き上げ。カートに乗せる。
花桜が、側使えにパウロにと陶器に入ったスープと果物とナッツを刻み入れたスコーンを手渡す。「クッキーとお茶は、夜食にどうぞ。ポットと皿にパウロが寝ているベッドも明日に取りに来ます。良い返事待ってます。蛍帰るよ」花桜は、胸元を押さえ蛍に呼び掛け。テーブル中央に置いた出べ子を持ち上げる。今からロゼを寝かせるの時間掛かるぅ〜などの私語を言いながら皆が、身を寄せ薄桜色の光りに包まれ消えて行った。
リドは、薄焼き塩煎餅を口に運び噛み砕き・時間は、余り無いと呟く。側使えを呼び。「パウロの汚れた服を着替えさせ。私の部屋のベッドへ…広いからふたり一緒に寝れるだろう、寝具を多めに用意してくれ。この部屋は、使用禁止の札を下げ鍵を掛けてくれ」手元に置きたいと切望した息子が、生きて帰って来た。溢れそうな涙を噛み砕いた塩煎餅と一緒に呑み込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます