管理主任リド&がに股男
「それでは〜猫背のがに股・揉み手に粘っこいでガンバ♪」
茜の化粧に花桜の扮装技で化けた。
残バラなカツラに血色の悪い顔色と目の下の隈・青のりとたっぷり生ニンニンを食べうんざり顔のジノ。
「蛍が転移出来るポイントと所内の様子知りたいから…これ持って行って」ナユがアキンドに指示して取り出し
ジノの手の平に手渡したのは、黒い球体とWi-Fiスポットに使われる蜂ロボ・各3台。
「人目の付かない…トイレなどでボタンを押して起動させて…蜂は自動で立ち上がるから」球体のボタンを押し起動させる。球体は団子虫から細い足を伸ばし少し不恰好な蜘蛛に変身。全長15センチ。「ちょいと大きくない?」茜とロゼが、蜘蛛とハイタッチ
し覗き込むとフロアのテレビにふたりが映り・動き出した蜘蛛の視界で見たフロアから天井へと画面は、目まぐるしく変わりフロア天井の隅で動きを止めた。見上げた天井の黒い蜘蛛は、取り忘れた埃か壁の亀裂の様に見えた。
「結界が強くて外からは、闇も入り込め無い。中にWi-Fiスポットあれば、蛍も僕も行ける〜よろしこ」了解し…肩掛け袋を一回り大きな2重底に変え蜘蛛と蜂を底に入れ商品の袋物でカモフラージュし中断した扮装を続ける。
腰回りにバスタオルを巻きメタボ腹・背中はリックで猫背を強調。砂にまみれ汚れたボロ服。見るだけで不快を感じる男が、そこに居た。
「あんのぉ…リド様に届け物が」ニンニン臭プンプンがに股男が、正面門番にすり寄りにっぱぁと汚れた歯を剥き出して笑う。「寄るな臭い。お前の様な者が、入れる場所では無いぞ」「いいんですぅかい〜?リド様がお待ちの物が、届かなくても」猫背の男は、長身の若い門番を下から舐めるよう見上げ。また臭い息をはーと吐く。
「わ…判ったから…寄るな臭い。おい…この男を裏戸口に案内しとけ。私はリド様にご連絡しておく。その前に肩掛け袋を改める」布小物を生業にしとりますと男は、臭い息を吐きかけ。門番の青年を更に不快にさせた。一刻も早く男を立ち退かせたい青年は、下働きの少年に押し付け男を案内させる。ふたりは大伝奉所・裏戸口へ向かう。
裏戸口から中へ入るとリドの側使えが、すでに待っており早く包みを渡せと軽く指をわきわきさせる。
「直接リド様にお渡したい…ほら親切に届けたわっちに礼など〜」タダでは渡さないと男は、指で丸を作りを硬貨を強請る。
「何故私が…会わなければ、成らぬ。そなたが、手間賃を払うだけで済むだろう」「申し訳御座いません。リド様に直接渡したいと…頑なに申して」
平民用治癒室の扉を開けるとそこには、誰も居らず・リドは入り口で静かに側使えを睨み付ける。
「あぁ〜すんません。年取ると小便が、近くて叶いませんわ。通路も間違え小僧さんには、怒られるし」がに股・猫背の男が、のんびり通路を歩いて来る。行方をくらました男を探し半泣きの少年が、走り寄りリドの姿を見付けて慌て礼を取り側仕えに必死に申し訳御座いません。と頭を下げ謝罪する。その横で男は、ニパリと笑いさっさと部屋へ入って行った。
すれ違い漂う男の体臭にリドは、眉を潜め司祭服の袖で、そっと口元を押さえる。男は勝手に上座に座り向かいの席をリドに進め同席を求める。渋々座ったリドに男は、臭い息を吐きながら話を進めた。
酒を飲んだ夜半の帰り慣れぬ王都の道に迷い歩く内・商会らしき裏戸口近くで争う声を聞き面倒事は、御免だと見ぬ振りをして来た道を戻る。男を見付け脇腹から血を流しながら逃げて来た。エルなんとか言う若い男に大伝奉所・リド様に包みを届けてくれと手渡されまして…血の指跡が、付いた包をテーブルに置いた。
「人殺しが、わっちにも斬りかかって来た時に黒い影が、現れ三人を呑み込んで…わっちは、大事なぁ〜大事な包みを必死に守り逃げ延びまして…心付けに褒美などを頂きたいと」「中を確かめる。そなた文字を読めるか?」リドが、中身を読んだか?男に尋ねれば、文字は読めませんと明るく返事する男。包みの中の文と薬袋を確認したリドは、側使えに頷く。
側仕えは、用意してあった銀貨1枚を板皿に乗せ男の前に置く。「司祭さまぁ〜銀貨1枚は、無いでございませんか?こっちとら命懸けで包みを守りやした。もうちょいと上乗せ頂かないとぉ。せめて銀貨5枚…」広げた手のひらを向け粘る男。これ以上・関わりたく無いリドは、側使えに頷き男は、満面の笑顔で木皿の銀貨を懐から出した厚手の布袋に仕舞い曲がった背を深く屈め礼を言いい告げる。
「ほな…また…お会い致しましょう」と…がはがは下品な笑い声を上げながら男は、部屋を去っていった。リドは、2度と会いたくないとにんにく臭・漂う待合室を後にした。その夜予期せぬ訪問者が、現れるまで仕事の忙しさに男の言葉を忘れていた。
本日の業務を終えた後・体調が、思わしく無い次期大司祭・クレメンテスと高齢でベッドに眠る現大司祭を見舞う。
大司祭の座を狙う反対勢力が、闇組織と繋がり貴族側にもその手が、伸び国政にも関わる問題になっている。探りを入れる為・送り出した者達も行方知れずで手駒が、少なくなり現司祭派の者達と話し合うが、一介の司祭に何が、出来きよう?今夜も眠れぬ夜を過ごすのだろう。ベッドで横に成れば少しは、休めると側使えを下がらせ明かりひとつの薄暗い自室のドアを開け足を止めた。
「夜分に失礼致します。わっちに少しお付き合い願いたいのですが…」そう広くない自室の窓際にひとりの男が、立っていた。声は昼に出会った不遜な男だが、その姿は、まるで別人だった。
「姿が別だが昼の男か?所内は強くは無いが、結界もあり警護もおる。そなた何処から潜り込んだ?」「強引でしたが、警護には、眠って貰いました。改めてジノと申します」スッと背が伸び細身だが、剣士の風格を持つ男が、リドの後ろ扉を指指すとそこには、幼子を抱く青年と司祭服を着た短髪の青年が、居りその顔を見て呟く。「エルシオン…お前生きていたのか?パウロは…パウロは、何処に」リドは、薬問屋に潜入しエルシオンと共に襲われた闇持ちの息子の名を告げた。
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