王都へ

貴族アクバとエリナ

この世界では、魔素が湧き漂い植物生き物全てが、魔素を持ち生まれる。


人間は、大きく分けて希少な女の光と男の土と闇。多くは、火・水・風などを生活に使っている。獣も魔素を使い魔力で火を穿き・水や風を纏い身を守り攻撃するものもいる。


希少な光の持ち主は、人を癒やし呪いを浄化する。土は大地を改良清浄作物を枯らす虫や病気を軽減。土魔導師は、大地を自在に掘り固める。高位の光に比べ土持ちの地位は低い。


火魔導師を多く配する貴族の3男に産まれた私の魔素は…土だった。

父親からは、そうそうに見放され後から産まれた弟にも見下される。下級貴族の婿にと請われ結婚したものの土魔導は、影では使用人にも馬鹿にされていた。妻は私の兄など複数の男と浮気を繰り返し産んだ火魔素持ちの子供を夫婦の子供とし大伝奉所に記録させた。


子供が、産まれて12年。

年祝いで火の魔素を確認したと久し振りに会った妻の笑顔に奥歯を噛みしめ怒りを呑み込んだ。


王都・大伝奉所大正門。勤めを終え迎えの馬車に乗り通用門を抜ける。大声で騒ぐ者の声に馬が、怯え脚を止めた。カーテンを開けている窓越しに・みすぼらしい司祭服の男と巫女らしき若い女が、大司祭に会わせてくれと懇願しているが、ここは平民の出入りを認めておらず最後は門番に鞘で叩かれ男は、頭から血を流しよろめきながら女に支えられ大正門前より立ち去った。コッと後ろ窓を叩き使用人にあの2人を追い居場所を確かめ見張るよう命令する。


司祭として大伝奉所勤めを始めて20年。王族や貴族が、出入りするこの聖所で、私・アクバは、貴族達の弱味を握り王都の裏社会にも手を伸ばしていた。私を馬鹿にした義父には、そうそうに死んで頂き・好き勝手を続けている妻には、病気持ちの若者を抱かせ鼻が、崩れる病を負わせ地下牢に閉じ込めた。


血の繋がら無い?…兄の子なら少しは、繋がっているか。息子は、不要な子供を預かる寄宿制の学校に1年前に閉じ込めた。妻が死んだら後妻を貰い子供を作ろう。


門前で騒いでいたのは、地方の司祭と巫女。魔素が少し多い巫女を連れ貴族との繋がりを求め都に来たらしい。

末は大聖巫女…平民の巫女が、笑える話だ。大伝奉所の巫女も司祭も貴族しか成れないと言うのを知らんのか。


報告を受けた翌日・偽りの治療依頼をふたりに耳打ちさせる。王都では、大伝奉所を通さない治療依頼は、犯罪になる。司祭なら知ってる筈だが、金に困っているのか?あっさり返事を返した。


日暮れ時…案内人に連れられ屋敷裏口より入る。ふたりを2階の窓から観察する。報告に拠ると北東の農村より来たふたり。娘の見目は、悪くない司祭は、邪魔だな。


地下牢に居る。妻の欠けた鼻を少し治治療させる。魔素は、有りそうだが、他の魔素もほんの少し感じる。治療に影響は無いだろう。泣いて喜ぶ妻が、指の欠けた手を伸ばし更に、治療を懇願した所で治療を止めさせ。牢に戻す泣いて詫びる妻だが、五月蝿いので首を切り裂き黙らせた。


次に突き出た司祭の腹をえぐり・娘に治療させる。驚き司祭さまと泣きながら治療をする。動揺しても治療が、出来る悪くない。息を吹き替えした司祭が、口うるさく喚き始めたので、首を切り落とさせた。震え何でもするから助けて欲しいとすがり懇願する娘。何でもしてもらおう。俺の野望の為に…




「エリナさま〜お美しいですわぁ」

側使いの巫女が、娘の衣装を整え褒め称える。半年掛かりで貴族の全てを学び所作を磨いた娘は、いま大聖巫女に就いた。大伝奉所を我が手に、また夢に一歩近付いた…悪くない。


「ま…魔素が、足りない。魔素をちょうだいよぅ〜」エリナの秘密に気付いたのは、地下牢の出来事から・ふた月過ぎた頃 あれは、人の魔素を奪う化け物だった。


エリナが、密かに獲物を求め光の魔素を持つ流民の娘を巫女に成りたいかと、誘い出し強奪で、魔素を奪い取る。魔素を全て吸われ娘達は、枯渇で死ぬ。流民の死はよくある事だ。


化け物も使い方しだい。敵対する貴族の魔素を吸い取らせ病死と見せかけた。


餓える娘に何人与えただろう。飢餓になる前にと地方から巫女を拐い地下牢で飼い…娘の餓えを満たしているが、この数ヶ月何かに吸い上げられる様に娘の魔素が、減って行く。


魔素の種類も関係無く集め与え・魔素量が、多かった名ばかりの息子も与え事故死と葬儀で涙した。


大水晶が、大司祭の寿命が、近い事を指し示し始めた後・大司祭自らクレメンテスを次期大司祭にと指名公表され誰もが、それを受け入れていた。

会食時にクレメンテスの食事に睡眠薬を少し振りかける。疲れたかなと長椅子に横になり休む。クレメンテスの治療にエリナを当たらせて治療と称して僅かに魔素を奪わせた。


その日よりクレメンテスは、原因不明の病で衰弱し自室で、療養を始める。私にも目覚めたスキル吸魔素で密かに見舞いと言いながらクレメンテスの魔素を奪い続けた。


久し振りに親子で食事をと屋敷で早めの晩餐を楽しんだ後は、談話室でベルモットを味わう。それでは、デザートを頂いて参りますわと腰を上げた。エリナは、地下牢へと向かう。遅れて私も地下に向かう。


地下牢には、魔素の補充にと飼っている女達が、居るが半分程は、魔素涸渇の症状が、出て来ているようだ。仕事を求め訪れた流民の娘を執事が、招き入れ新たな贄と地下牢に閉じ込め。

動けない様に椅子に縛り付け口を塞がれている。エリナが、娘の首筋に手を添え魔素を吸い上げている。


私は定位置のソファに座りベルモットを味わい娘の様子を見ながら差し出された邪魔者リストと本日の状況を確認。次の指示を入れる。大伝奉所の暗部に公表されて無い、闇魔素持ちのクレメンテスの婚外子がいる。なかなか優秀らしいクレメンテス亡き後・邪魔に成りそうだ。仲間と死んで頂こう。


魔素を吸い終わりソファに座るエリナにベルモットのグラスを渡し…次の報告書を読む。「ほぅ…まだ幼い癒やしの巫女か。ドーズから王都に…名は?ロゼ。良き餌に成りそうだなぁ」


エリナが、突然グラスを落とし奇声を上げ喚き出した。「なんで…どうして?10年も前に死んだ筈でしょ。何でいまさら…現れるの…」喚き暴れるエリナを下僕2人に命じて匂い薬で眠らせ部屋に閉じ込める。


大司祭が、亡くなる今。少しでも邪魔者は、排除すべきだ。エリナの利用も大司祭副クレメンテスの命を奪った後は、行方不明届けを出し 地下墓地に埋め…次はロゼと言う田舎娘を使うか…

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