ドーズから・結界の文鎮


ロゼを抱き上げコンビニ前の芝生に立つルセの額に蛍が、触れる。ゆらりと景色が、揺らぎ懐かしいドーズの伝奉所の庭に戻って来た。コンビニに向かう前の荒れ地は、床ロボが、草を刈り。


10年放置していた建物の中もホコリが払われ、キレイになっていた。先に送った布団と一緒にうささんもある。贅沢で便利な暮らしに慣れたロゼが、この質素な暮らしに戻れるか心配したが、花桜がくれたおんぶ紐で、うささんを背負い庭の花を摘み遊んでいる。ルセの姿が、見えないと泣き探すのは、変わりは無かったが、ルセの動きを察知し付いて回るようになった。


安全対策とナユの監視カメラと魔道具を使った目眩ましの結界。闇の黒猫が住み着いた。


今朝もロゼの魔素を押さえる収縮自在指輪を取替える。風変わりな模様の木箱に同じ型の指輪が、30個・外した白金を戻し錆色の指輪をロゼの細くて小さな指にはめる。スッと指輪は、縮みあつらえた様に指に馴染む。


帰宅が決まった前々日に闇にあれこれ魔道具を持たされたひとつだ。「魔素のただ漏れは、勿体無いわね。そうねぇ…これあげる」闇はまた大量の道具やアクセサリーを芝生に落とし小山を作る。ジャラジャラと搔き回し小箱を取り上げルセに渡す。


中には沢山の錆色の指輪と丸くコロッとした丸餅の様な・文鎮?と花桜が、言ったので文鎮に名前が、決まった置物。「ロゼ〜ネックレス外して…この指輪を握って…チリチリするぅ〜終わったぁ〜」闇には、強い光の魔素も魔導具で抑えられる。指輪持たせてからネックレス取れば、良いのにと茜にイジられながら、うっさいわねぇ…と指先を再生する闇。


数分後…ルセにネックレスを掛けさせ指輪を文鎮の窪みに置くと指輪は、ゆっくり回り始める。少し待つと蛍の結界と似た障壁が現れる。「蓄積型で広さは、コンビニより狭いけど…どう?成長すれば、もう少し広くなるかも」闇は何と言う茜の手を取り小さな結界に触れさせると軽く弾かれる。花桜もルセも結界の抵抗を確認する。


ロゼも〜と手を伸ばすが、小さな手は、すんなり文鎮に触れられた。魔素の持ち主とその魔素を蓄積させた指輪を身に着けたものは、出入り出来る。後でジノにもあげてとおしゃべりを、するうちに動きが、ゆっくりになり止まる。指輪も錆色に戻った。


ばい〜ん。鶏擬きが、指輪付きのシュシュを着けた黒猫を目指し突撃するが、結界に跳ね返され絶命する。猫は意気揚々と鶏を咥えルセの足元に落とす。


「今夜のおかずにしょう」結界の外で鶏を捌くルセに別の鶏が、鋭い嘴で、攻撃を仕掛けるが、結界に弾かれる。指輪をしたまま結界を抜けるとそこの場所から結界が、広がりルセは、まだ結界の中に居る事になる。ジノと確認したら2区画(4m)ほどで結界は、切れた。


文鎮は敷地の広さをナユに計って貰い決めた中心に置いた木箱の上に置く。正面入り口に向かい左に広い司祭の寝室と記録石の部屋に物置。中心は司祭と巫女が、昼間居る執務室兼治療室。右に巫女の私室と水回りに隅の小部屋が、ルセの部屋になる。もう誰も居ないので司祭の大部屋を使っても良いのだが、慣れてる小部屋が、落ち着くとマットレスと布団を持ち込む。


元は窓の無い灰色の壁と少し高い寝床だけの部屋だったが、なんと言う事でしょう〜湯屋の増築に余った建材を使い窓口をくり貫き二重の木目調サッシを付け。冷たい壁と天井には、湯屋の壁と同じ濃いクリーム色の吸湿性能のある壁紙を張り巡らす。


扉が無く冷たい風が、入り込む間口の外側には、引き戸が取り付けられた。これで冬の寒さで凍える事も無いだろう。床も断熱材が、敷かれ戸口横に靴を脱ぐスペースを作り室内は、土足禁止となった。


巫女の部屋も似たようにリノベーションされジノが、泊まる部屋になった。人が出入りする可能性が、ある水回りは、現状維持で以前の様に煮炊きは、外で行っている。風呂も暖かい今は、外でぬるま湯を浴び…湯屋に慣れ水浴びは、ツラくなってしまったと苦笑するルセに冬場は、問題も解決。湯屋に滞在すれば、良いだろうと言われ・出来たら嬉しいと思うルセだった。


+++++++++


「よぅ〜し行くぞ」「はい」「あい」「…ンゥ〜」ラバのロシナンテも返事を返す様になった。朝の点呼よし。


王都までの道のりの半分は来た。

癒しの巫女を見る観衆が、遠巻きに付いて来る。噂を聞き付け街道脇には、様々な人が、待ち構える様になった。


貴族に流民・平民少しでもロゼに触れたい。癒しの恩恵を受けたいと近付く者達が、街道脇に並ぶ。最近撥ね飛ばすを学んだ?出べ子(文鎮の子)の結界に遮られしつこい者は、撥ね飛ばされる。何故か人の選別をするロシナンテと出べ子。道に立ちはだかる用の無い者は、結界に押しのけられ・危険な者はロシナンテが、蹴り飛ばす。


今も目前に偉そうに踏ん反り返る貴族と黒いローブの老人とその後ろに

青白い顔の少女を抱えた父親が、膝立ちで、待っている。私に仕えろと明後日な事を叫ぶ貴族を結界が押し退け。刃物を脇に構え突進する黒ローブの男はロシナンテの追突と蹴り飛ばしで尻餅を付き。巫女様に何をすると叫ぶ聴衆に袋叩きに合う。


ロシナンテが、ロゼとルセを連れ前に進み・出べ子の結界が、広がり膝立ちの親子を包み込む。父親の顔が、喜びでわずかに緩む。トトッ…数歩進んだロゼが、親子に声を掛ける。「おむねいたの…?」痩せた少女が、こっくり頷き胸を押さえ荒い息をする。余り長くは、無さそうだ。少女の胸と父親の肩に手を当てロゼは叫ぶ。「おねえちゃんのいたいのぉ〜いたいのぉ〜とんでいけぇ〜…おじちゃんの少しいたいのも〜とんでいけぇ」


淡く光ったロゼの指先から光が、溢れふたりを包む。癒しが終わり父親は、礼を言い喜捨が入った革袋を置き下がる。俺は黙ってそれを拾う。

道脇で待っていた家族が、駆け寄り母親が、声を上げ娘を抱き締めている。


耳元で様子を見ていたふたりのヒソヒソ声が、聞こえる。「何度も言うけど…何で痛いの痛いの飛んでけなの?」「それは…花桜が、あたしの口の中の傷治すのに使ってた。もうそれで良くない。娘ちゃん治ったし…おっちゃんも調子悪かったようだね」


俺視線の画像を見て感想を言うふたりに気を取られる横で、何者かが、結界に撥ね飛ばされている。見ると先程の貴族が、私に仕えろとまだ喚いていた。ロシナンテが、結界から出て行き喜ぶ貴族に近付き後ろ脚で更に遠くへと蹴り飛ばしている。男も聴衆に袋叩きに合う。貴族だろうと関係無い巫女さまを守れ〜流民・平民を舐めんなよ💢


眠くなったロゼをロシナンテに乗せまた歩き出す。結界が人々を押し退け。俺達は王都へと進む。





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「行くわよ〜蛍よろしくね」

大司祭が、亡くなりいよいよ〜ゴタゴタする大伝奉所のエリナと司祭副に殴り込みの日が、やって来た。


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