ロゼ編・防御魔法から酒盛り

「で…どうなってるの?」闇がロゼを受け取った北東の村は、冷害と領地を巡る貴族の争いに盗賊被害と言うトリプル災害で、姿を消していた。


行事や暦の管理・作物の植え付けに・光による治療など人々の生活に寄り添い。捨て子のロゼを育ていた伝奉所の司祭達も住まいを追われ近隣に散っていった。


10年たった今は、人の手も入らず村の跡地は、森に飲み込まれ僅かに残る石造りの壁が、村の面影を遺すだけだった。


闇に持たせたドローンで撮影した上空からの動画にも人の気配は無く。村へ続く道も消えていた。ふたつ隣の村から徒歩で行商を進め・司祭見習いのルセの消息とロゼの情報を探す事になった。


「見ないでぇ」「それ…自分が、見てるから見られてると思うだけだよ。ロゼぇ〜アホが、移るからお外で遊ぼう」それなりに力の強い闇でも、ロゼの聖なる光は怖く。太陽の明るさも少し苦手だった。


外のテーブルに座りナユタンに買わされたUV日傘・UVサングラスとUVカーディガンを羽織り燦々と輝く太陽の元・冷たいカイエンペッパートマトジュースを飲む闇。無理しなくて良いのにと花桜に言われさらに意地をはる。


横でアイスコーヒーを啜りながら行商準備をするジノ。

「粘着貴族…本当に大丈夫か」「問題無い〜ジノ関連の記憶は、全て消したし…赤黒の宝石が、しっかり取り付いて意のままよぉ〜」


「下調べは、ジノさんだけでも行けるけど…ロゼちゃんをお届けとなると茜ちゃんも行かないと無理よね」腰紐で繋がれ楽しくビーチボールで遊んでいるふたり。


「あたしより先に異世界デビューかな?」「詳細が判ってからにゃ…まだまだ先にゃ…ジノ?貰ったクリスタルの障壁は、どんなもんにゃ」「使い方が、判らんし俺の魔素は、手が濡れるだけのほんの少しの水を出せるだけだ。防御障壁など何年掛かっても使えないよ」


じゃらじゃらと指輪やピアスなどの宝飾が、闇の手の平からテーブルに落ち小さい小山を作る。


「また色々出して来たよ」呆れる花桜の後ろ茜が、ロゼを引き釣りながらフラフラと近寄って来る。ダメぇと腰紐を引っ張るロゼ。小山の中に貴族の元にある筈の赤黒の宝石が、怪しく輝いていた。


「またぁ〜来てる。あんたは、あっちで貴族と遊んでなさい」ぽいと投げられた宝石から、消え去る時に舌打ちが、聞こえたのは、気のせいかな?と花桜は、首を傾げた。


闇がキラキラ輝く小山の中に爪を入れ地味な鉄の指輪を取り上げた。「これでいいかなぁ…花桜…ロゼにこれを握って貰って」ヤバいものでないよねと言いながらロゼに指輪を握らせる。


サングラスを外した闇が、見つめる事数分。「もういいわよ。こっちに持って来て」広げた小さな手の平には、白金に変色した先程の指輪が、太陽に照らされ輝いていた。花桜と一緒にロゼも近付き闇の隣に寄り爪先立ちでテーブルの宝飾を見て声を上げる。


「闇?ロゼ近いけど」「今は大丈夫。ロゼの聖光魔素の、殆んどをこの指輪に吸収させたから・これで魔素の充填は、終わりジノ指輪を嵌めてあっちで、手の平を前に扉1枚をイメージして壁を作って」


扉・壁?かべと言いながら、がに股に構え・かべ壁かべと唱えていると空気音と共に薄い何かが、ジノの前に現れる。「茜〜ジノに向かってそのボール投げてみて」投げた ビーチボールは、ジノに当たらず跳ね返って来る。何回か繰り返してもボールは、ジノに当たる事は、無かった。


「違う事を考えて〜次は、自分の回りに丸いドームを思い描いて…行くわよ〜」ジノの頭上に闇が、空間を広げたと思ったら大量の水と小魚とサーモンが、落ちて来たが、ジノは濡れる事は、無かった。


「こんな感じで、イメージすると障壁が、張れ弱い魔法も弾けるけど、一時しのぎだから注意してね。指輪は魔素を吸い貯めるから毎日握っていれば、あんたでもそこそこ貯まると思うけど魔素の多い人に握って貰うのが、1番早く魔素を充填出来るわね。ちょっと聞いてる?」


大漁の鮎とサーモンに大喜びの4人は、闇の話しなど聞いちゃいない。


「鮎の塩焼きにサーモンのムニエル?ちゃんちゃん焼きもいいかも…でもサーモン捌ける」茜と花桜は、ジノに熱い視線を送った。


炭火焼きの鮎の塩焼きとジノが、捌いたサーモンのホイル焼きを食べながら闇の魔素教室は、続いた。


「増素が無くなったり満タンになるのは、どう判るの?」ジノから指輪を受け取り陽にかざし見ている花桜。


「増素が充填されれば、筋が浮かび上がり10本が、最大ね。あと面白いのが、この指輪は、魔素を選ばない。ロゼの聖光は、こんな風に鉄から白銀に変わり。水は青銀色・火は赤銀と吸収した魔素に応じて変色するの。蓄えられた魔素の量でも白金から銅色まで空は、最初の鉄に戻り…ちゃんと聞いてるぅ」


もごもご口を動かし聞いてると皆が、言うので闇先生の魔素講義は、続いた。


茜がロゼと店内の冷蔵庫コーナーへと向かう。まだ客も居ないので冷蔵庫の一部は、私物保存に使われており・これこれと言いながら酒瓶と薄いビニール袋に入れ冷やしてある猪口を持って来た。


「鮎には、辛口の日本酒でしょ。美味しい魚にと買っておいたの」

ジノと花桜に猪口を渡し冷たい冷酒を注ぎロゼの猪口には、水を入れ乾杯と飲む。辛口の酒が、喉を伝い旨さと辛さが、口の中に広がる。


「そして鮎をひとか齧りまた冷酒を呑んで…ヤバい…旨いよ」悶える茜の真似をするロゼ。


「ちょっとあたしにも頂戴」え〜呑むのと言いながら猪口を渡し酒を注ぐ。今まで人間の食べるものなどに興味は、無かったが、コンビニに来て辛口カレーに続いて飲んで見たくなり…美味しいついねだってしまった。


どうよと見つめる茜にニンマリ猪口を差し出す。ある筈の無い喉を伝わる。酒精の強さと薫りに驚き幸福感を感じる闇だった。進められるまま鮎も食べ酒を楽しんだ。

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