ロゼとルセ・光の巫女編
ふわふわプリンの行先は
コンビニスイーツ新作の初送は、必ず届く様に設定されている。今回はふわふわプリンと厳選どら焼きが、各5個。「あれっ…数が違う」同梱されている配送伝票を見て首を傾げる茜。
配送コンテナには、どちらも3個しか入って無い。
「最近誤送多くない?1号にクレーム処理お願いしてさてお味はどうかな?」プリンとマイスプーンを持ち イートインコーナーの丸テーブルに座る。
朝から横に鬱陶しいモノが、居るが視線を外しプリンに集中する。「ふわふわで美味しい〜」
闇は恐れていた。
日増しに輝きを増す小さな存在に。
「もう嫌ぁ〜どんどん光の力が、強くなって…近寄る事も出来ない。茜お願いあの子を連れだしてちょうだい。代りにジノに付きまとう貴族達の記憶を全部消して来るから…ねっ…ねぇ」
聞けば光の力を抜き取られ不要と渡された幼子。別に欲しくも無かったが、渡されたので闇の世界に放置していた。いずれ今までの者達の様に闇に取り込まれ消え去るだろうとその存在すら忘れていた。幼子は時の止まった闇の世界の深淵へと落ちて行った。
ところがコンビニ時間にしてひと月・消え去っている筈の幼子が、光の力を少しずつ取り戻し深淵の底で輝き始めと言うのだ。
聖なる光が怖い闇は、極力見ない振りをしていたが、日増しに強くなる幼子の聖なる力に我慢の限界が来た闇は、茜にすがった。
闇に懇願され光の巫女を連れ出しに行く事になった茜 。ここからと言われ入った闇の世界は、全ての感覚が、遮断され歩いているのか止まっているのかすら判らず闇を呼べば、四方から光を目指せと声が、響くだけ。
手に持ったライトの光は、拡散せず手元すら照らせ無かった。
「こんな所にずうっといたら気が、狂いそう。出してぇ〜帰るぅ」
悲壮感漂う茜の声に応え…とすっと慣れた感触と見慣れた薄い桜色の光が、目の前で頑張れと上下している。
蛍の導きで進むとポツリと小さな光が、見えた瞬間。茜はその耀く光の中にいた。
驚く幼女と安堵する茜。声を掛けようと屈み込む茜に幼女は、全身ですがり付き「ルセ…」と呼び泣き出す。
茜に声を掛けられ落ち付きを取り戻した幼女だが、それでも茜にしがみ付き離れなかった。大丈夫だよと何度か抱きしめ幼女に消したライトを持たせ足元のゴミを蹴散らし立ち上がる。
「さてどうやって帰るの」
闇に呼び掛ける。
「そこから見えるから…明るくて無理ね。蛍お願い」肩に止まっていた蛍が、幼女の額に張り付くと一瞬で闇に包まれた。どうやら蛍が、幼女の光の力を押さえている。暗闇の中幼女の息遣いと体温が、心強く感じる。
「空間を繋げたから強く願い自分で探して」目が暗闇に慣れ辺りを見回すと大小様々・沢山の画面が、浮いている。近付くと森の中や豪華な部屋に薄汚れたスラムどこかの請負人ギルドなど様々な景色が映っていた。
「強く願えと言われても〜あっ…蛍行かないでよぉ」追い駆けた先に丸く切られた空間。向こうには、ジノと花桜が、見え思わず手を伸ばせば、ジノが
引っ張り出してくれた。
そこは何時もの湯屋の休憩フロアだった。
「何にも無い所から蛍が現れ・手が、バタバタ…つい引っ張ったら子供を抱いてる茜が出て来た」ジノ感想。
「あ〜もうこんなに散らかして」闇が空間に上半身を突っ込みコンビニカゴに何かを取り出している。
「あれ…無くなったウサギの縫いぐるみに…プリンの空容器・サンドイッチの空袋〜これ最近無くなってるものばかり」
「はい〜これで全部スッキリしたわ」様々な食品の空容器にウサギの縫いぐるみにパッチワークの膝掛けなどが、盛り上がったカゴを花桜に手渡し笑う闇の顔は、幸せに溢れていた。
起動音と共にナユタンが、現れ幼女を見て指差す。「あれ…結局こっちに押し付けたのにゃ?さっさと自分で返してくれば良かったのに」「だってぇ〜嫌いな聖光の元なんか触りたくも無い。うっかり触ったらこっちが、消えてしまう」責任転嫁を繰り広げるふたりに花桜が、割り込み問いただす。
「ナユタン〜あんたも共犯?判ってる事全部教えてくれるよね」珍しく花桜が、怒っている。元凶と思われる蛍は、花桜の胸元でプルプル震えていた。
違う世界へ出入り出来る蛍と闇は、コンビニ転移以前から互いの存在は、知っていた。あらゆるモノを取り込み・元素に戻し神力にしている蛍。好物は全てのゴミ(分解しやすい)・人と機械の生体エネルギー。
闇の好物は人間が、発する負のエネルギー・嫉妬・欲望など邪な考えを持つ者をそそのかし絶望に陥れる事が、大好きで、互いの存在は、感じていたが、接点は無かった。
ならどうして今さら関係を持ったのかと皆が、思っていると〈呼ばれたの〉花桜の胸元から出て来た蛍は、ジノの額に張り付きそう言った。
「蛍〜説明難しいから合体してみよう」そう言ったナユタンは、1号を媒体に蛍と合体した。現れたのは、蛍がイメージする花桜だった。
「何んか〜2割増し〜イヤ5割増しに盛ってない?」そこには元の花桜より美しく・胸もFカップな巨乳女神蛍桜が、神々しく降臨していた。
誰に呼ばれたか質問を続けるジノに返す言葉は、やっぱり単語の蛍だった。
「判んない…寂しい…泣いて…お腹空いた…プリンあげた…ひとりイヤ…ウサギさんあげた…にゃんこも来て…どら焼きあげた」
「そうなのよ〜わたしの眷属もその子に懐いちゃって…どっちが、主か判んない〜酷くない。作ったのあたしなのに、ちっとも懐かなくてもう…とっくに消えたと思ってたらちゃっかり光の子に・くっ付いてるし」
「この猫を作った?闇の眷属?」
ソファに座る茜と幼女の横にいつの間にか小さい黒猫が、座っていた。
「そうよ〜だいぶ前に黒猫の死骸と飢饉で飢え死にした子供の魂数個で作ったけど言う事聞かなくて…もう消えてると思ったら…まだ居たのよ」
「猫って作れるん〜だぁ。やめ…」
呼ばれたと思った黒猫は、茜と幼女に交互にスリスリ攻撃を開始した。笑っている幼女を見ていた花桜が、ぽっりと呟く。
「痩せているねぇ。ご飯食べよか。あっ…闇この子の名前分かる?」
「ロゼよ。北東の伝奉所の預かり子。4才…光の力が、強くて姉巫女に嫉妬されてその力を奪い取られたの」「それ何ヵ月前?」「確かこちらの時間で10年前…ほらわたしの所・時間無いから入れたらそのまんまなのに…光の力を取り戻して…こっち見無いでぇ」
まだ聞きたい事が、満載だが、もう嫌帰ると闇は、消えたので、先ずはご飯にしましょうと花桜が、幼女に何が食べたいと聞けば。
「プリン」と応えた。
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