外伝・夜間にひっそりとタグ作り
王都から続く街道沿いにある商業大都市バクア。
様々な人・ものが、集まる物流の交流点となり・請負人ギルドも日々・仕事や雇い人を探す人で溢れている。
喧騒が響く2階・Fタグ制作室。
「毎日毎日〜づがれたぁ」激務の不満をグチグチ呟きながら無地木板タグを固定し指先に嵌めた爪針に細く細く火の魔法を集中させ書類に書かれた名前と性別・登録日を焼き彫り込み名前の横に薄く吸収の印を彫るこれに登録者が、自分の魔素を込めて登録完了となる。新人もいれば紛失し再登録をする者など誰でも銀貨5枚で登録出来きる。
ランクアップは、様々な規定があり経験と信頼も加味される。Cランクからは金属のタグになり登録料も高くなる。
火使いは、多々いるが一筋の炎を針に流し薄く板の表面を焼く。
繊細な作業は根気と集中力に時間が掛かる仕事だ。
「これ綴りが違う〜急ぎやり直して」
ノックも無く勢いよくドアを開けた受付嬢が、書類と紐付きのタグを差し出す。
「ちくしょう〜穴が、空いちまった」驚き揺らだ魔力で彫り掛けのタグに、針の穴ほどの貫通穴が、空いてしまった。タグはもう使い物に成らない。
ため息を付いて穴空きは、ゴミ箱に投げ捨て受付嬢が、差し出すやり直しを受け取る。睨み付けると悪いと思ったのか飛び切りの笑顔で頑張ってと言って静かにドアを閉め出ていった。
「あぁ~思い切り爆炎飛ばしてぇ」
次の休みには、ギルドの練習場で炎弾をぶちかますと誓い
男はタグ板を固定し呼吸を整える。
◇◇◇◇◇
深夜の請負人ギルド・当直室のドアの隙間から明かりが、廊下に細く溢れる。
真っ暗なタグ制作室の床に淡い光が、溢れ何かが現れる。
それは棚の登録書類を数枚掴み取り・床に広げる。一瞬眩い光が瞬き直ぐに闇に戻る。書類を元に戻した何かは、次にタグ無地板数枚とゴミ箱の失敗したタグを掴み取り素早く淡い光の中へ戻ろうとして盛大に机の足にぶつかり音を立てるが、気にも止めずキュルと機械音を立て円陣に戻り消えた。
上階の物音に気づいた当直のギルド員が、灯りを持って2階に上がりタグ制作室を覗うが、ひっそりと闇が迎えるだけだった。
◇◇◇◇◇
深夜の工場・レーザープリンター室。
請負人ギルドから持ち帰った板タグは、印章をコピープログラムされ表にジノの名前と男・登録日・登録者の名前を焼き付け。魔素を入れる印も忠実再現・レーザーで焼き印される。
回線を通して見ていた那由多が、電子言葉で呟く(いい仕事する〜) それに応えプリンターAIが、どういたしましてと挨拶を返した。
翌朝「何だこれ」レーザープリンターの前で担当者が、作業の続きを始めようと材料を固定・スイッチを押すとエラーが出る。
仕上がり画面のチェックをすれば見知らぬ紋様と文字らしきものが、表示される。
納期が迫っている忙しい時にと問答無用でそのプログラムは消去された。
でもAIはこっそり記憶の隅にそれをコピー・何時かまたあの優美な文字を描く日を夢見て今日も作業をする。
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