第7話・ジノと行商の準備

行商で売る物を準備すると言うので、待つ間に建物の周囲を回ってみる。


コンビニ周りは、白っぽい石造り(コンクリート)が、四方に1区画(約3㍍)ぐるりと敷き詰められ裏と脇は、芝生と言う短い草地が、2区画ほど周りを囲む。裏側には、小さい小屋と畑が、あり・店舗前の芝生は、3区画ほどが、前面に広がる。


敷地の回りを薄い膜の様なものが、囲み外との境界線を成しており風は、感じるもの舞い飛ぶ虫達は、境界で弾かれていた。


不思議に思い少し抵抗を感じる膜に触れ眺めていると準備が出来たと呼びに来たナユタンが、蛍が認めたものだけが、見え通れる結界の様なものだが、よくは判らないと教えてくれた。


裏側から戻れば、芝生には鮮やかな青い布(ブルーシート)が、広げられコンビニから次々とロボが、箱を持ち出し中身を積み上げている。


聞けば花桜が、暇潰しに作った布小物。これを売り行商するのは どうかと聞かれ様々な物を手に取り確かめる。

素材の布は柔らかく手触りも良い上等なものだ。


「あったけど、カビてるぅ。モモちゃんコレ洗える?」花桜が何やら大きな袋と服をモモに差し出し見せる。コックリうなづいたモモは、それを湯屋の洗い場(ランドリー)に持って行った。


売れそうな物を選んでくれと言われたので、花桜の説明を聞きながら選んだのは、厚手の肩掛け布鞄と腰ベルトに付けると言うポケット・口元を紐で縛る巾着袋これの麻や白い綿袋が、あれば売れると言ったら作るそうだ。


布が上等だと値段も高くなる。庶民が手にする物は、もっと織り目の粗い粗悪な布だが、 花桜の手元には無いそうだ。別に売れ無くてもとナユタンが、言えば慌てた花桜が、シュシュを手首に巻き「端切れだけど裁縫には、自信ある。パン1個分…100円でも高いかな?」「何も花桜が、下手くそと言ってないにゃ。露天価格にゃ・ジノなら幾らで買う」


手首や髪に巻く色鮮やかな模様のシュシュを手に取り感じたままを言う。

「これは銅貨5枚・この肩掛け袋は、銀貨2枚(20000)・厚手の巾着袋は、大銅貨3枚(3000円) ベルトに付けるポケットは、細工物だから俺には判らん」手触りと色合いから値を付けたが、安すぎたか。


那由多が、蜂ドローンで集めた。市場の売買を元に換金表を作り・タブレットに書いたのを見て値観の違いに驚く花桜。パンが買える価格を元に作ったと言う換金対価表・銅貨1枚が100円・コンビニチャージも100ポイント。昨日食ったパンと水は250ポイント俺は、すごく安いと思ったが、価格付け間違ったか?。


「いや〜あり得ない〜余りの布のシュシュが、500円・肩掛けサコッシュが、2まん〜丁寧に作ったけど、サコッシュにも端切れ使ってるし」

なにやらブツブツ呟いている花桜の横からタブレットを覗く俺。何もおかしくは、無い肩掛け・サコッシュは、銀貨2枚以上で売れる。


落ち着いた花桜の言葉を借りれば、ぼったくりだそうだ。


ナユタンが調べた。ネットフリマ価格もシュシュの最低価格は、300円・銅貨3枚かな?に花桜が、イヤ昔地元のフリマで売ったの50円だし・サコッシュ2万は、ぼったくりだよと言い続ける。


一先ず落ち着こうとテーブルでコーヒーを飲み判った事は、俺と花桜の価値観とふたつの世界環境が、原因と秘書ナユは、俺と花桜を並ばせてまたデカイ画面を出し説明してくれた。


小麦・芋等の食料は、こちらが少し安い。衣服は、麻が多く布は高い。綿布は贅沢品なので、その差が出ている。しかし行商は、偽装だから売れても売れなくても…で、花桜がまたナユを睨んだ。結局山ほど溜まってる。布小物の価格と品選びは、花桜がする事になって俺は、ほっとした。


旅生活を思い出しナユに自衛に武器と装備が、欲しいと言えば、明日準備すると言われ、その日は、花桜の横で袋物を選び・コンビニで行商生活に使えそうな物を買い・海に沈む夕日を眺めて終わった。


★→→→→→→


朝食の鮭握りとほうじ茶・フルーツヨーグルトを食べた後。カウンター横のコーヒーメーカーで豆から抽出したコーヒーを買い外のテーブルで薫りと深い味わいを楽しむ。


ゴトリッ…重い音を立て1号が、テーブルに初めてみる金物を置いた。

「これはなんだ?」


斧より小さく刀身は、長四角・長さは、手のひらひとつ半・背の厚みは、親指の爪の半分と分厚い。刀身より少し長い握りを手に取り確かめる。ダガーより重く・斧より軽いそれを軽く振ってみる。


痩せて肉が、無いから刀身が重い。

飯の量を増やし早く筋肉を増やそう・肉を付けるならイノブタ肉の串焼きも良いな。


ナユタンが現れ、どうかにゃと聞くので使えない事は、無いが…ダガーか片刃剣は無かったかと聞けば、 武器は好みが、あるから武具屋で手に取り確かめ買ってくれと1号がテーブルに金貨3枚を置く。


「街道や街の外は、森も多くその鉈は枝葉を払えるし獣の骨も砕ける」

確かにこの背の厚みなら撲殺も出来る。勿論薪割りに便利そうだ。


旅の道中は、焚き付け探しも日課で

力のいる枝折りも楽になり便利そうだ。薪集め?大変なの。朝食の皿を下げ。カップを片手に花桜が、戻って横に座る。


煮炊きと夜の獣避けに焚き火が、必要で夜営地に来る前に道中で集める。近くの農民が、道沿いで野菜や干し肉と一緒に売っている所もある。


なるほどとアキンドが、俺の話を聞いて水売りに薪も売れば、儲かるとナユタンと話合う横で、花桜が炭もいいかもねと言う。


炭は職人ギルドが、鍛冶工房などに専売してる。俺達は薪で暖を取るが、貧しい者は、それすら無く冬場は、凍死者も出る。床ロボが、炭〜と小さい紙箱を俺に差し出す。


「たまに焼き肉が、食べたくてコンビニでも入荷してるの。焼き芋も美味しくなるし」と笑う花桜。


「そうだ今夜は、この炭でバーベキューしましょう。ひとり焼き肉もいいけど、一緒に食べる人が、居ると更に美味しいよ」バーベキュー?肉を焼くのか・夕食が楽しみだ。


モモが昨日洗った物をテーブルに置く。深緑色の背負い袋とポケットの付いた厚手のベストだ。


「これ父さんが、使ってた登山リュックとベスト。こっちで使うには、目立つかな?ポケットの少ない物を出して来たけど」手近に有るものを詰め大きな袋を背負ってみる。


肩ベルトを調節・胸と腰ベルトを

少しきつめに締め少し歩いてみる。


背負い易いが、カチリと止めるベルト部分が、見たことが無く。ファスナーと言う開閉するポケット口も花桜が、取り外し違和感の無いようにボタンか紐付きに直すと言った。ベストのファスナーも変え・ズボンは、このままスエットを着る事になった。リュックとベストを修繕しにコンビニの自室に行く花桜。


俺は鉈を使いアキンドが、持って来た枯れ木を割り薪にする。斧より軽く使い易い・森での枝払いもやり易いようだ。


その後は、昼にコンビニのサンドイッチと甘い菓子パン・コーヒーを食べナユタンの勧めで、休息と言う昼寝をした。


目覚めたら蛍が、わずかに残っている髪に絡まっていた。どうやら抜けた髪の毛を生やすのに頑張ってくれたらしい。

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