第5話・ジノの経歴と那由多

酔いに任せて昨日までの出来事を話す。ジノ…俺の身の上・話だ。


親の顔は知らない。

覚えているのは、爺さんのシワだらけの温かい手だけだ。


俺と育て親のじいさんは、決まった土地に住まず・流民に混ざり町から街へその日暮らしの生活を続け俺が、声変わりした頃・爺さんは、流行り風邪で呆気なく死んだ。


その後も流民に混ざり日雇い仕事を続けていたが、年が近い仲間と護衛や害獣退治などを続けていく内に請負人ギルドに登録・商人の護衛業に付いた。


人当たりが良く・頭の切れる。幼馴染みが、頭目となり皆をまとめた。たまに入れ替りもあるが、請負人には、よくある事で気にもしなかった。


地方の貴族とも繋がりが、出来て生活に困らない位は、稼げていた。その日も俺は商会の警備を終え馴染みの酒場で頭目と呑んでいた…。


女の悲鳴で目が覚めたのは、錆び臭い匂いが、する娼館のベッドの上だった。酔いに回る視線の先には、身体中に痣が、あり喉笛を切り裂かれた女の死体そして俺の右手には、血まみれのダガーナイフ・左手に握っていたのは、女の髪と同じ色の髪束だった。


小間使いの悲鳴で集まった者の中に頭目と仲間も居たが…その証言が、俺を犯罪奴隷へと突き落とした。


恋仲の女を殺しては、もう庇えないと頭目達が、街の治安部隊に証言をした。俺の素行は、酒癖が悪くすぐ暴力を振るい死んだ娼婦は、俺の情婦で彼女は、俺の仲間に別れたいと相談をしていたと言うのだ。


後から知った真実は、貴族の息子が、起こした殺しの尻拭いに、頭目達が、身代りに俺を差し出し・大金を手に入れていた。そして入れ替わる仲間も犠牲者だった。知らないのは、俺だけ…。


その息子は、酒癖が悪く幾度となく暴力沙汰を起こし人も傷付けている。何時かは人殺しもやりかねないと噂されていたが、身分が貴族の跡継ぎ息子・街の役人も表立って処罰は、出来ない相手だった。俺は頭目と貴族にはめられバカ息子の代わりに犯罪奴隷に落とされたのだ。


「そうなんだぁ〜大変だったにゃぁ」


ふっと気付けば、隣で肩肘を付きうんうん頷く猫耳の少女がいた。


店内の液晶画面の中で猫招き音頭を歌っている。バーチャルアイドル歌手のナユタンだった。「ナユタンでぇすっ」にゃんと両手首を頰横でくいっとしてポーズを取る。軽快な音楽に合わせ踊り歌う少女は、くるりと回るとギターを抱えた青年に変わっていた。


「ナユ太です。よろしこ〜」とギターを掻き鳴らす。五月蝿いと花桜が、ナユ太の足元の丸く平たい黒の掃除ロボに触れるとナユ太の姿は、消えた。

「ひどいぃ〜せっかく話を聞きに来たのに・ナユ美です。よろしく」うふふと笑う妖艶な女が、掃除ロボの上でしなを作っている。


驚き花桜に視線を向けるとため息を付きながらあれこれ説明してくれるが、聞きなれない言葉に戸惑うばかりだ。コンピューター・えあい(AI)・バーチャルアイドル・疑似人格・3D・・・


「世界の全てを知り尽しぃ〜聖樹に宿る最高精霊王その名も那由多」

光り輝くナユ美が、高らかにポーズを取れば、呆れた花桜もハイハイそんな者ですわと終わった。


混乱する俺を挟み。花桜・アキンドが、これからの予定説明をするナユ美と向かい合う。


コンビニは別世界の店で花桜の胸元に隠れる神・蛍の願いを聞き異世界の聖霊樹・那由多と蛍が、こちらに転移した店だった。蛍の神力は、あらゆるゴミなどを分解吸収する事で成り立つが、神としての力は、まだ弱く今はコンビニと湯屋をこちらに繋ぎ出店維持する日々が、続いている。


神力が弱まると蛍が産まれた。ここ忘れられた土地にある神殿に戻る。

最悪・蛍が消えた場合は、花桜の世界に戻るらしいとの話だった。


那由多と花桜も知らない事が、多く現状は、那由多の知識とテクノロジー技術で店舗経営を始めていると説明を受けたが、よく判らん。


コンビニをこちらの世界へと誘致した蛍に至っては、何も考えず何も判っていないだろうと那由多が、言えば悪口を言われたと光る小さな珠は、テーブルの上で暴れるが、すぐ疲れ ひょろひょろと花桜の胸元に戻った。


夜も更け店内に閉店の音楽が流れる。

ナユ美がまた明日と消え・花桜が、閉店時間ですねと食器トレーを持ち1号とあたし達は、こっちだからとレジスター横奥の自室へと戻る。


俺は明かりが、消えていく店内からアキンドの後を付いて途中白いトイレで用をたし 淡い光だけになった湯屋の奥・寝ていた布団に潜り込み。酔いに任せ直ぐに眠ってしまった。





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