第3話・ジノ・風呂とポーション
誘われるままコンビニ隣の湯屋に入る。入口で迎える薄桃色の自動人形が、差し出す板には、洗濯1回・今なら300チャージと書かれていたが、俺の服はボロ切れを縄で括っているだけだ。
丸く平たい自動人形が、お洗濯〜と細い指で服の裾をつまんで引っ張れば裾がピリッと裂けた。
瞬間辺りの空気が、凍り付き様子を見ていた店員と1号が、慌て飛んで来る。
すいません・すいませんと詫びの言葉を続ける。店員の横でアキンドが、のんびりした口調で言った。
「これはぁ~あきまへん。洗ってもばらけますわ。特別に買取り100で…どないでしょ?」どうせ捨てるだけのボロ服だ。俺がうなずくと固唾を飲んで見つめていた皆は、ほっと緊張を緩めた。
アキンドの後を追い湯屋の説明を受ける。湯屋入り口は、洗濯屋・ランドリーには、服を畳む大きなテーブルと椅子と乾いた物を入れる籠が、数個あった。コンビニと繋がる通路の左右に男と女用に分かれたトイレ(厠)が、在り中に入ると明るい光が、トイレ全体に点る。驚く俺にアキンドが、入り口・横の四角を押せと言う。
言われるまま押せば、白い壁に幻影が、映し出され音楽と声が流れトイレの使い方が、説明される。白い壁の厠は、1度だけ見た回復魔導を行う伝奉所の様だ。
普通・厠は、建物の裏に掘り埋められたツボの周りを板で囲い厠小屋を建てるか・街角にツボ屋が、小便ツボを置き小銭で使わせている。
水が豊かな地方では、汚水専門の排水路を設置流しているが、町中で厠を所有する者は、定期的に浄化魔法を掛け処理するので以外と匂わない。
続いてこちらが お風呂ですと案内された扉を横に引くと脱衣所と奥に洗い場が見えた。ここでも白い壁に幻影と声と音楽が、流れ風呂の使い方を説明してくれた。
風呂など奴隷落ちしてから水浴びすらままならず 最近は体の臭いを気にする気力も無くなっていた。ふと… 脇下の臭いを嗅ぐとかなり臭う。
先にカウンターでお支払いをお願いできますかとアキンドに言われ隣の店より小さい台にカードを置くと目の前の板に初回割引・スエット上下・トランクスサービス・ 宿泊代3500ポイント引き落とし〈はい〉〈いいえ〉の文字が浮かび俺は〈はい〉を押すとコンビニと同じ音がして支払いが終わった。
「スエットのサイズは、男女共通サイズで、男性はLサイズからサイズアップ。後から交換もできます。歯ブラシなどは、脱衣所にありますので、ご自由にお使いください。スエットは、通常貸し出しですが、初回サービスでお持ち帰り出来ます。フェイスタオル・歯ブラシセット・ 使い捨てシェイバーは、ご使用後お持ち帰り出来ます。なお風呂場に設置しております。シャンプー・体を洗うブラシ・湯上りに使用するバスタオルは、湯屋内でのご使用でお願い致します」
脱衣所にある細々した物を説明したアキンドは、続いてと脱衣所を出てカウンター横に立ち明るい通路奥の説明を始める。
「こちら奥は宿泊施設になります。オープンタイプになっており・今は誰もいらっしゃらないので 、お好きなベッドでお休みください。 ドリンクは飲み放題です。また判らない事が、ございましたらお気軽にご質問くださいませ。何かありますか」
聞かれた俺は、見た事も・聞いた事も無い場所に圧倒され首を縦に振りうなずくのが、やっとだった。
新しい服と下着にタオルと言う洗い布を受け取り脱衣所へ入る。
先ほど服の裾を裂いた丸い自動人形が、かごを差し出し買い取りと言う。ホコリの落ちる服と下穿きを乗せると買い取り〜♪と喜びながら落ちた砂ぼこりも綺麗に吸い込み帰って行く。
風呂場に入り流れる絵の説明を見ながらシャワーで体を濡らし 泡のボディシャンプーを二回プッシュ・頭から全身の汚れを洗い白い泡が、薄茶色になり足元に溜まり排水口に流れて行く。
シラミが湧くと警備人に切れないナイフで、むしり切られた頭皮にシャンプーが染みる。体の細かい傷もヒリ付くが、我慢して3回洗い泡が、白くなり汚れが落ちたのを確認後、残りの泡をシャワーで洗い流し脱衣所に向かう。
俺を押し留め脱衣場からアキンドが、風呂場入って来て蓋を開けた濃緑の瓶の中身を湯船に注ぐ。
振りかければ傷をふさぎ飲めば胃もたれを治す低級ポーション・最低でも金貨1枚はする。それを惜しげもなく5本も入れている。
慌てる俺に「お気遣いなく劣化品で、商品としての価値はありません。ゆっくり浸かって傷と疲れを癒してください。着替えと湯上がりタオルは、棚に置いてます。室内履きは、これを履いてください。古い靴は買い取り100で引き取りますが〜」
俺はそれで良いと言うと紐で括って何とか履いていた。ボロ靴とポーションの空き瓶を買い取りカゴに乗せた。平たい人形が、買い取り〜♪と脱衣場を出て行く。アキンドもごゆっくりと言い戻って行った。
緑色の湯にヒリヒリする足を入れゆっくり体を沈めると傷跡から細かい泡が、湧き出し傷の痛みが、引いて行くのを感じる。
肩まで浸かりお湯の心地良さにウトウトしてしまい全身が、湯に沈み溺れ掛けたが、頭が泡立つのに気付き大きく深呼吸し全身を漬け直す。体のあちらこちらから細かい泡が、立ち上がる。
奴隷商の息子の暇潰しに鞭で叩かれ付いた細かい裂傷に狼に追いかけられ岩で切れた足裏の豆も泡と共に治っていった。
途中・泡が出なく成るまでポーション湯に浸かっている俺を心配した。アキンドと店員が、冷たく甘い飲み物を差し入れ・湯の温度を確認していった。
その後何度も全身を湯に漬け傷を治す。やがて泡も出なくなり湯の色も薄くなったので、風呂から出て脱衣場へと向かう。
桃色の魔法人形が、大きなタオルを俺に差し出し。 もう1枚で背中を拭いてくれる。見慣れない下履きを手渡し履き方を教えてくれ。白い半袖の肌着を着る。
次にスエットの後ろ前を示す小さい布を指示され柔らかく肌触りの良い服を着てサンダルを履き風呂から桃色が案内する後ろを付いてカウンター横を抜け椅子やテーブル・奥にベッドが見える空間へと案内された。
女店員が、店長の鈴木花桜と申します。花桜と呼んでくださいと自己紹介しソファを勧めながらポカリをどうぞと先ほどの飲み物が、入った透明なガラスコップをテーブルに置く。ポカリは冷たく喉を滑り落ちて行く。旨い〜い。
お疲れでしょうと低い板で仕切られている奥へ案内された。幾つか並んだ寝台には、綺麗な布団が敷かれていた。進められるまま近くのひとつに潜り込んだ。布団は、ふかふかで心地良く俺は、すぐ眠ってしまった。
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