会員登録いち(о´∀`о)ジノ編
第1話・会員NO.1ジノ
朝靄の中・俺達は狼に追いかけられ必死に草原を走り逃げていた。
突然空間が、開け目前に、四角い建物が現れた。いや俺達が別の世界に紛れ込んだのか?
吠え立てる狼達の鳴き声が、すぐ後ろで聞こえ姿も見えるが、俺達と狼の間には薄い見えない壁があり狼達は、体当たりを繰り返しては、壁に当たり悲鳴を上げている。
一緒に逃げて来た男達も状況が、つかめず辺りをキョロキョロするばかりだ。
軽快な音楽に自動人形の声が重なる。「新装開店サービス〜今なら会員特典500チャージが無料ですよ~」
男のひとりが、恐る恐る建物に近づき入り口を覗き込み鼻をひくっかせる。「いらっしゃいませぇ」
側に居た黒い人型の自動人形に剣をちらつかせ男は叫んだ。「食い物をよこせぇ」
それを見た残りの3人も口々に金よこせ・食い物を寄こせと叫び商店らしき建物に押し寄せた。
「金を寄こし~やがぁ~」片手剣を振り上げ自動人形に斬り掛かった。最初の男の足元が、白く光り・男はカランと片手剣を落とし光に消えた。
「なめるな食い物を」「かねを~」次々と叫び剣を振り自動人形に襲い掛かったふたりもガランと剣を置き去り光と共に消えた。
走り続け…息を切らし座り込む。俺に近付き自動人形は訊ねる。
「お客様は会員登録なさいますか?今なら特別に」俺は用心しながら自動人形に聞いた。「奴らはどこに消えた」
「強盗現行犯は、アシヨ鉱山ギルドの牢に転送いたしました。お客様も送りますか」俺は荒い息で返事をした。
「いや…送らないでくれ」アシヨ鉱山は、俺達犯罪奴隷の送り先だった。昨晩商隊が、狼の群れに襲われ奴隷商親子は、その肥えた腹を食い千切られ死んだ。
囮に檻車から解き放たれた奴隷達は、ある者は狼に喉を噛みきられ別の者は、足止めの為に護衛に刺された。
俺達4人は、逃げる振りをして奴隷商人の馬車で一夜を過ごし・夜明けに隙をみて逃げ出したが、まだ近場に居た狼達に追いかけられ草原を逃げていた。
ひとまず狼からは、逃げられた様だが、ここは何処だ。相変わらず自動人形は、しゃべり続けている。会員?登録…何かのギルドだろうか?
走り続けて喉が、カラカラだ。水を求め店らしきものに近付くと女が、出て来て銀色のトレーに乗せた。薄い器に淡緑色の飲みを俺に差し出す。
「お茶とドーナツです。お試しください」にっこり笑い掛ける女に進められる…まま冷えた淡緑色の茶を飲み・揚げ菓子食べた。もの欲しい顔をしていたのだろう女は、持っていた透明なボトルから器に茶を注いでくれ俺は飲み続けた。
一息ついて俺は店内に入ってみた。初めて見る様々な品と汚れの無いキレイな内装・この国の建物は、木材と石に泥漆喰で固めた無骨な造りで小さな窓と狭い戸口で昼も薄暗い建物が殆どだ。
ここは見知らぬ金属の棚とツルツルした素材でチリひとつ無いすべすべの床に巨大な水晶が、はめられた窓と広い戸口で店内なのに外に居るように明るい。
女の服も上等な綿の丸首上着にズボンと前掛けにすれ違うと微かに花の香りがする。
花の香りが、薄れると入れ替わりに俺のすえた汗臭さが、酷く鼻につき場違いに感じ慌てて店の外に出た。俺は犯罪奴隷だ。ここに居ては、いけないと思うが、何処へ行けば…奴隷商は死んだ。俺はどうすれば、状況が判らず考えていると左腕の隷属の腕輪が、緩んだ気がする。
右手で触るとカチャリと外れ落ちたた。奴隷商で付けられた腕輪は、自分では外せず。隷属の呪法で登録された主の命令には逆らえない。販売先で新たな主の名前が上書き登録される。
俺は外れた腕輪をどうするべきか悩んでいると自動人形が、声を掛けてきた。
「登録チャージなさいますか?それも買い取りチャージできますが」と自動人形が腕輪を指し示す。
さらに足元には、片手剣を乗せて来た丸く平たい自動人形2体が、チャージ・チャージと声を上げている。女を見れば会員登録よろしくと手を振っている。
どうせ鉱山で死ぬ運命だった。これ以上悪いことには、成らないだろう。「会員登録を…する」ありがとうございます〜こちらへと先を行く自動人形達の後から店内に入る。
自動人形はカウンター台の上にある読み取り専用と書いている銀色の板を指し示し右手のひらを乗せろと言う。
手のひらを台に乗せると上から下へ一筋の光が移動すると目の前にある黒い板にジノ・男・25才・無職・チャージ0と表れ続いて新規会員登録特典500追加その下に残高500と浮き出てきた。
「会員登録ありがとうございます。お客さまは、当店最初の会員さまになります。続いてチャージなさいますか?」
自動人形は隷属の腕輪を指さし首をかしげる。足元でも踊るように2体が、武器を乗せクルクル回りながらチャージと唱えてる。
いい加減五月蠅く思うと同時に女の怒声が響く。「静かにしなさい~お客さまに迷惑です。1号ちゃんの説明が、全然聞こえない。最初の大事な会員さまに逃げられたらどうするのぅ~」唖然とする俺を見て女は、言葉尻を下げぺこぺこと軽く頭を下げ1号に進めてと囁いた。
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