♥ 花桜・夢で会いました

突然・父さんが死んだ。

死因は過労と心臓が、弱り起きた心筋梗塞。


深夜のコンビニレジカウンターの床に倒れ・見つけたのは、早朝勤務の中村さんだった。葬儀の時に中村さんは、泣きながら何度も言った。


「せめて夜は店を閉めて休まないと体に悪いと何度も言ってたのに」


集まらないバイトさんの代わりに店に立つ父さんを心配し忠告してくれていたのに・古くからの山仲間も早過ぎると泣いてくれた。


相続人になるわたしにコンビニ契約・中途解約金300万の大金は、払えず仕入れなどの未払い金もありコンビニ経営を引き継ぐしかなかった。


母さんは、わたしの就職が、決まった年に子宮癌で死に・店を手伝うと言う。わたしに好きな仕事を選らんだのだからと父さんは、笑顔で送り出してくれた。


憧れた服飾の仕事は、数年で制作から外され営業販売に回された。

彼氏もいたが、この度・二股が、判りアパートから叩き出した。


結局・わたしは財布と食事係の都合の良い女だった。当然・貯金も無くコンビニを引き継ぐしか道は、無かったのだ。尽くした。わたしの5年間と金返せ~ばか男。


母さんの子宮癌治療費と増設したコインランドリー・簡易シャワー施設などの支払いに自宅も手放した父さんは、コンビニ裏にプレハブ小屋を建て住んで居た。今の我が家である。


コンビニ再開の打ち合わせを終え担当さんを見送り。引き上げて来た荷物が、みっしりと詰まるプレハブの奥にあるベッドに潜り込みまだ父さんの匂いが、する夏掛けを引き寄せる。疲れていたからすぐに眠れた。


浅い眠りの中・何かが、閉じた瞼に触れる。羽虫かと顔の前で振り払う。

うとうとするとまた羽虫が、顔に触れる。「もう何なのよ」


夏掛けごと体を起こすと薄明かりの中に小さな蛍の光~いやもっと小さい光が、目の前をふょふょ漂っている。


眠りを邪魔された怒りで、目の前に浮かぶ・光に息を掛け吹き飛ばすと夏掛けの上に、ぽとっと落ちた。


じっと見つめていると、またふょふょ目の前へと近付いてくる。虫?だろかと観察していると頭の中に声が、聞こえてきた。


微かに聞こえる声。《いっしよ…きて》どこに《わたしたち…せ…》


「声が小さくて聞こえない~」

眠りを邪魔された怒りで、大声で叫んでしまった。


慌てたのか光が、おでこに突き刺さるように貼り付いて来た。今度は、はっきりと声が、聞こえた。


《私たちと一緒に来て、コンビニの開店の朝に迎えに来るね》


言いたい事を伝え満足したのか光は、数回・わたしの回りを浮遊した後 ゆっくり窓に向かい外へと消えて行った。


疲れているから幻を見たんだと自分に言い聞かせ。夏掛けを引き寄せベッドに横たわる。


私達の世界?何処よ?

それより人手が、足りない。

バイトさん増やさないと…

…なかむら…さんと相談

来るの…朝10じ…


やがて薄明かりの中 花桜の寝息が、聞こえてくる。

新装開店まで後6日。








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