コンビニだよね?

らくしゅ

♥ プロローグ

並列世界を浮遊するうちに自我を持ち始めた小さな存在 何処にでも行けるが、誰も気付かない小さな小さな存在。


流れ着いた異世界・日本の片隅にあるコンビニが、気に入り何度も通い巡り漂う。


そこに出入する人間達が、発する様々な感情エネルギー・店舗にある機器が、出す電磁波・そしてゴミ。


小さな存在は、それを吸収・味わい己が、成長すべく糧と今日も浮遊していた。


何時もの様に地球を訪れ今日のコンビニを探していたら声が、聞こえて来た。

それは己が、発する声なき声とよく似ていた。


明かりが、付いていないコンビニの裏側・青いシートで、覆われた。廃棄予定の様々な機材が、積み上げられた。その中から漏れ聞こえる声。


針の先もない弱々しい光それが、小さな存在の今の姿・シートの隙間から入り込み声の主を探す。


それは古ぼけたレジスターだった。

28年間使い込まれ何時しか・付喪神と呼ばれる者になっていたが、自らは何も出来ずここで廃棄され消えさる運命を待ってる。ただ…心残りは、先日突然死んでしまった店主のひとり娘の行く末だった。


嘆くレジスターに光が、近づき液晶画面に数回触れる。電源は落ち・コンセントにも繋がっていないはずのレジスター画面に数字の0が、赤く点滅を繰り返し初め。画面の片隅から赤い光が、ふわりと浮かび上がった。 


無邪気に近く小さな光に最初は、恐れ距離を取る赤い光。

ふわふわ後を追う白い光・ふたつの光は、互いの周りをくるくる回りながら、やがてひとつになる。


ほんの少し大きくなった淡い桜色の光は、何かを探しながら近くの電柱へ向かい据え付けの防犯カメラに止まり通信配線から情報ネットワークへと入り込む。


濁流の様な情報の中を潜り小さな存在は、レジスターの新しい体を求め己が、望みを叶えてくれる存在の元へと突き進む。


日本最速のスーパーコンピューター那由他の回線にたどり着き幾多の基盤を巡り・開発者も気付かない後付の基板の主で在る那由他の自我に接触した。付喪神レジスターの新しい体が、欲しい。改装中のコンビニを自分の世界に出店希望するからよろしくと熱く語りかける。


不正アクセスで、発生したバグと削除されかけたが、日々繰り返す単純なデーター計算作業に飽き飽きしていた那由多は、異次元の存在に興味を持ち協力を約束した。


那由多は元気に飛び跳ねる淡桜色の光から現状と希望を確認後・コンビニ本部へと侵入・独自の回線をひそかに紐付け同時に異世界の情報をかき集める。ほとんどが創作の作り話だが、自我が芽生え陰で人格生成していた那由多には、音楽に次ぐ楽しい情報収集だった。


那由多は多々ある回線から郊外にあるコンビニ電子機器製作所のメインコンピューターへと光を送った。


深夜の工場AIが、時間外に起動。

工場内の防犯カメラを静止画に切り替える。


コンビニ改装後・古いレジスターの代わりに設置される機体を探し再調整ラインに運ぶ。


同時に工場AIは、那由他から送られた情報を設計図に書き起こし複数のサブロボットの作製も進めるよう作業スケジュール調整を行った。


その後人知れず神と呼ばれる存在が、深夜のコンビニ電子機器製作工場の片隅で、産声をあげた。





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