第13話
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蛤御門の方では新撰組、京都見廻組と薩長親英派残党軍との激しい戦闘を繰り広げていた。お互いに撃っては打ち返しで新撰組と京都見廻組側では銃弾や近くに着弾した砲弾の破片を受けて負傷する者や残党軍側でも同じ様に負傷または戦死する者が相次いでいたが、そんなのお構い無しに応戦している。
最前に居る沖田と永倉らも三十年式騎兵銃を使って積み上げた砂袋に身を隠して隙を見て残党軍に向けて撃っていた。
屈んで身を隠していた沖田は身を出して撃とうとしたが、弾が発射されず慌てて屈んで身を隠してボルトを操作する。
空薬莢が飛び出し装填口を開けたまま右手を羽織に入れて五発の三十年式実包を手に取って一発ずつ込めるが、その際に愚痴を溢す。
「あーーーーっくそ‼︎何で銃剣で突撃してこねんだよ!」
沖田の愚痴を右隣りで同じように身を隠して羽織から取り出した弾を三十年式騎兵銃に込めている永倉が沖田を宥める。
「ハハハッ仕方ないさ総司。相手も馬鹿じゃない銃剣突撃はここぞと言う時しか使えない、最も白兵戦自体が時代遅れになってきたからな」
沖田はムキになって白兵戦が時代遅れではないと否定する。
「時代遅れじゃありませんよ!第一、今までずっと俺ら不逞浪士相手に剣でねじ伏せていたんですよ!この世が終わらない限り剣による戦いは無くなりませんよ!」
永倉はムキになった沖田を見て大声で笑う。
「ハハハハハハハッそうだな!この世が終わるか刀が無くならない限り剣の戦いに終わりはないもんなっハハハハハハハッ!」
そうしていると二人の元に近藤と歳三が身を引くして寄って来た。
「何だ永倉、何か面白い事でもあったか?」
近藤の問いに永倉は笑顔で答える。
「ええ、ちょっと世間話を」
「ねぇ局長、このままだと拉致が飽きませんよ。いっそ勢いよくみんなで相手に斬り掛かりましょうよ」
沖田が急かす様で近藤に提案するが、歳三が否定する。
「総司、悪いがこんな状況じゃ相手陣地まで斬り込む事は出来ない。心配するな待っていれば自ずと向うか白兵戦を仕掛けて来るから」
歳三の言い分に納得のいかない沖田は小銃を投げ捨てて前を向く。
「副長、悪いんですけど僕にはこう言う遠い所か撃ち合う事がどうも性に合わないんですよ」
「総司、それどう言う意味だ?」
近藤が問いただすと沖田は無数の銃弾が飛び交う中で急に立ち上がり笑顔で答える。
「そのままの意味ですよ。なので僕は斬り合いに行ってきます」
沖田は左腰に提げている愛刀の加州清光を鞘から抜いてなんと積み上げた砂袋を飛び越えて勢い良く銃弾の中を走って残党軍に向かう。
沖田のとんでもない行動に近藤、歳三、永倉は驚き、歳三がいち早く大声で総司を止める。
「総司ーーーーっ‼︎あの馬鹿‼︎」
歳三も沖田の後に続く様に和泉守兼定をすかさず抜いて飛び交う銃弾の中を走って行く。
一方の残党軍兵士達は蛤御門に向けて狙撃していると沖田が走って来るのに気付く。
「お、おい!誰かこっちに来るぞ!」
一人の残党兵が驚くが、隊長格が冷静に命令を下す。
「落ち着け!相手は一人だ。このまま狙い撃ちにしろ!」
「はい!」
何人かが沖田に向かって発砲する。沖田は自分に向かって来る銃弾を次々と素早い身のこなしと愛刀を振りながら銃弾を弾き返す。その光景に沖田を狙撃した残党軍兵士達が驚く。
「ばっ馬鹿な⁉︎銃弾を避けている⁉︎」
「しかも刀で銃弾を弾き返していたぞ‼︎」
そうしていると沖田は自分の目の前にいる二人の残党軍兵士を斬り倒す。残党軍兵士達はとっさに左腰に提げていた銃剣を小銃に付けて沖田を取り囲み白兵戦になる。
近藤も立ち上がり長曽根虎徹を抜いて大声で指示をする。
「全員!武器を切り替えろ!このまま奴らを追い込む‼︎」
近藤の指示で組員達は持っていた小銃を投げ捨て刀や槍に持ち替える。
「いざ‼︎」
近藤は右片手で虎徹の刃先を前に向けながら砂袋を飛び越えて走り出し、それに続く様に佐々木や今井、組員達も叫びながら走り出す。
沖田を取り囲んでいた残党軍兵士達も近藤達が突撃して来る事に気付き慌て始める。
「しまった!どどっどうしたらいい?」
再び隊長格が指示をする。
「仕方ない!全員、銃剣を付けろ!他の者は突っ込んで来たそいつに対処しろ!突撃!」
隊長格が左腕を大きく振り残党軍兵士達も叫びながら近藤達に向かって突撃する。お互いがぶつかり合い激しい白兵戦が展開された。
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