第12話

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第二次禁門の変が始まる少し前、政宗は鉢金を付けた鎖頭巾を被り鎖帷子や鎖籠手を着けてその上から白の着込半襦袢と水色のダンダラ羽織を重ね着して太腿には紺の脚絆を付けて三条大橋の真ん中で目を閉じて仁王立ちしていた。すると背後から何かを感じ取りすかさず振り向きながら左腰に提げていた白龍刀を抜く。だがそこには居たのは頭に鉢金を付け左右の腰に黒龍刀の打刀と小太刀を提げた彩芽であった。

「彩芽、何でここに居る?」

政宗の質問に彩芽は答える。

「私もあんたと同じよ。西本願寺に知らせに来た永倉さんから聞いてね。今回はあんたに手を貸すわ」

政宗は納得して白龍刀を鞘に収める。彩芽は政宗の左隣に歩み寄る。

「只三郎局長には?」

「勿論、言ってあるは三番隊は華苗に預けてね」

「言っておくが、相手は人斬り彦斎だぞ。油断するな」

彩芽は笑顔にある。

「ハッ私が油断するとでも心配無用。私が先に奴の首を取るから」

彩芽の言葉に政宗も笑顔になる。

「それだけ覚悟があるなら大丈夫だな」

すると前から気配を感じた政宗が前を向き、彩芽も前を向く。暗闇の中から江戸で出会った時のまんまの黒に統一された和服を着た彦斎が現れる。

「おやおや、政宗だけを呼び出したはずなんだけど見廻組の雌犬まで居るとは」

彦斎が笑顔で彩芽を愚弄するが、彩芽も笑顔で彦斎に愚弄し返す。

「へぇーーっ凶暴な犬にしては冗談も言えるようになったのね、彦斎」

「そうかな?それにしても久しぶりだな彩芽」

彩芽は一瞬にして殺気に満ちた目付きと表情に変わる。

「ええ、本当に久しぶりね。さぁ決着をつけましょ彦斎」

彩芽は黒龍刀を抜き二天一流の構えをして政宗も彩芽と同じ表情で白龍刀を抜き理心流の構えをして河上と話す。

「彦斎、お前が何を企んでいるかは知らないが、一つ聞きたい」

「何だ言ってみろうよ」

彦斎は話しながら左腰の刀を抜く。

「いったい誰なんだ、お前の脱走に手を貸したのは?」

彦斎はほくそ笑む。

「悪いが、それは話せないんでね!」

彦斎は物過ぎ勢いで間合いを詰めて政宗に斬り掛かる。政宗は瞬時に彦斎の一撃を防ぎが、人間離れしたかの様に凌ぎの状態で政宗は勢いよく後ろに押される。彩芽はハッとなり振り返る。

政宗は彦斎の猪の様な人間離れした力に耐え何とか止まる。政宗は必死の表情に対して彦斎は笑っていた。すると彦斎の後ろから彩芽が跳躍しながら頭上から河上に斬り掛かるが、彦斎は橋板を蹴って左に飛んで避ける。

「いやいや、さっきのは危なかった」

彦斎が笑顔のままで言う。政宗と彩芽はお互いに歩み寄って彦斎の方を向く。

「よくこんな状況で笑えるな彦斎」

政宗の指摘に彦斎が答える。

「すまん、すまん。久しぶりに殺伐とした斬り合いが出来ると思って笑顔になっちゃってね。もうそろそろだな」

彦斎は京都御苑の方を向く。政宗と彩芽も同じ方を向く。すると銃声と砲音、そして赤く夜空を染める様に火の手が上がる。政宗と彩芽は驚く。

「な‼︎始まったのか?」

「そうさ政宗、さぁこっちはこっちで派手に斬り合おうか」

彦斎は刀を構え直すと今までの笑顔が消え、人斬りの様な人を斬る事に迷いのない冷血な目付きとなる。政宗と彩芽も構え直し彦斎が本気になった事に気付く。

「おい、まずいぞ彩芽。彦斎の奴、本気になりやがった」

政宗の指摘に彼の左隣に居る彩芽は苦笑いする。

「ええ、そうね。政宗、今回はあんたに合わせる」

「ああ、そうしてもらうとこっちは助かるぜ」

政宗、彩芽、彦斎はお互いに自分の愛刀の柄を強く握りしめる。一瞬の膠着状態が起こったが、敵か味方かの砲弾が地面に落ちた瞬間、お互いに物凄い勢いで間合いを詰める。

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