第6話

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政宗と彩芽はお互いに物凄い動きで立ち回りする。彩芽は打刀と小太刀を上手く使い華麗な捌きで政宗を攻撃する。対する政宗は自分の木刀で防いだり素早い動きで彩芽の斬撃をかわす。彩芽は畳み掛けようとするが、僅かな隙を見逃さなかった政宗は彩芽の腹に強烈な右足の蹴りを入れる。蹴りを受けた彩芽は右腕で腹を抑えて後ろによろめきながら下がる。

政宗はすかさず反撃を開始する。政宗は素早く力強い斬撃を繰り出し彩芽を追い詰める。彩芽はまだ腹の痛みが癒えていない状態で何とか政宗の斬撃を打刀と小太刀で防ぐ。

政宗は上から下に向かって斬撃を繰り出し彩芽は打刀と小太刀をクロスさせて防ぎ凌ぎの状態になる。政宗はその状況から物凄い力で彩芽を後ろに押し込み、立ち止まる。

彩芽は何故から微笑みながら政宗と話す。

「あんた、吉原の時でも思ったけど前よりも強くなってない」

政宗も微笑みながら彩芽に答える。

「ああ、俺は大切な物を守る為に日頃から剣の腕を磨いている。そうゆうお前こそ京にいた時よりも腕を上げてるな」

「ありがとう、でも私から見ればあんたの腕はまだまだ緩い」

彩芽がそう言うとさっきのお返しと言わんばかりに政宗の腹に強烈な右膝蹴りを腹に喰らわす。政宗も彩芽と同じく腹を両腕で抑えて後ろによろめきながら下がる。

政宗は辛そうな表情ですぐさま彩芽を見てる。

「てめーっさっきの会話は俺の気を逸らすた為か。汚ねぇ手、使いやがって」

「生きるか死ぬかの局面で生きようとする者なら誰だって使う、それは私やあんただけじゃない」

「それもそうだ」

二人は再び勝負開始直後の構えの大勢になる。激しさのある勝負が再会しようとした時に歳三が慌てて道場に入ってくる。

「お前らここにいたのか、早く着替えて大広間に来い」

二人は構えるのをやめて、落ち着いた表情になる。そして政宗が歳三に問う。

「どうしたんですか父上?」

「さっき松平 容保様が突然、いらした。大事な用件らしく全員集まれだそうだ」

政宗と彩芽が試衛館に松平が来た事に驚く。

「容保様が、分かりましたすぐに着替えて大広間に向かいます」

「急いで着替えて来いよ二人とも」

そう言うと歳三は駆け足で大広間に戻る。彩芽は政宗に近付き木刀を渡す。

「先に行っているからな遅れんなよ」

「言われなくても」

彩芽は駆け足で道場を出て政宗は後ろ振り向き駆け足で木刀を壁に掛けてその足で道場を後にする。

大広間には新撰組と京都見廻組の組員が集まり、正座してがやがやしており一番前には近藤、歳三、只三郎、信郎が横一列になって正座していた。さらに後ろには沖田、永倉、斎藤、島田、華苗が正座しており島田と華苗の間には丁度二人分、正座出来る幅が空いていた。

政宗と彩芽は着替えを終えて駆け足で大広間に向かいその最中で自分の羽織を着る。大広間の後ろはガラリと開いており政宗と彩芽はそこから入り組員の間を縫いながら前の開いている所に向かう。そして島田と華苗の間に着き正座をする。

「すみません、遅れました」

「同じく、申し訳ありません」

二人は前に居る近藤と只三郎に謝罪する。近藤と只三郎は振り向く。

「いいや、まだ大丈夫だ」

「ああ、むしろ丁度よかった」

近藤と只三郎が二人にそう言うと二人が来るまで待っていたかの様にまるで青年の出立と白を基調とし胸の辺りに黒く染め抜いた三つ葉青いの家紋が目立つ羽織を着た松平 容保が上座の左側から大広間に入って来る。松平 容保、会津藩九代目藩主で元京都守護職で新撰組の生みの親で幕英戦争の後、幕府警察の大総監となった。

容保が入って来ると同時に全員が静まり返り一斉に頭を下げる。容保は静かに腰を下ろし胡座で座る。そして落ち着いた口調で口を開く。

「苦しゅうない一同、表を上げよ」

容保の言葉で全員、ゆっくりと表を上げる。そして容保は近藤に話し掛ける。

「近藤、お前が昨日、私に伝えた河上の一件なんだが」

「はい、それがどうしました」

容保はため息を吐き一瞬、罪悪感に襲われた様な申し訳ない表情をした。

「すまない。実は彦斎が処刑されたと言う虚偽の情報を世に流したのは幕府なのだ」

容保の衝撃的な真実に近藤を含め全員が驚く。そして近藤はその事を容保に問う。

「何故そんな事を?」

「うむ、処刑の十日前の事だ。河上 彦斎は江戸北町奉行所・・・今の北町警察署に投獄されていた。だがその日の夜に何者かの襲撃を受けて彦斎はその者の手によって脱走したのだ。幕府は彦斎脱走が世に流れれば再び尊王攘夷派の志士達が息を吹き返す可能性があり、それを防ぐ為に彦斎処刑の虚偽の情報を世に流したのだ」

近藤は容保や幕府がどんな思いだったかを察し納得する。

「そうでしたか」

「すまない近藤、それに佐々木。二人には話しておくべきだった」

容保は近藤らに向かって深々と頭を下げる。その姿に近藤は慰みの言葉を掛ける。

「とんでもない。容保様が頭を下げる必要はありません。なのでどうか頭を上げて下さい」

只三郎も近藤と同じように慰みの言葉を容保に掛ける。

「そうです近藤君の言う通りです。大丈夫です、必ず我々が河上を捕らえてみせます」

二人の言葉に容保は頭を上げて安心したかの様に笑顔になる。

「ありがとう」

容保は感謝の言葉を二人に述べると一瞬で真剣な表情になって前を向く。

「ではこれより新撰組と京都見廻組の今後の方針を述べる」

組員全員も容保と同じく真剣な表情となって話を聞く事となった。

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