第3話


-3-

政宗達は蔵に到着する。するとさっきまで閉まっていた蔵の戸が開いていた。

「しまった、狙いは襲撃犯か⁉︎」

政宗がそう言うと蔵の中から何かが飛んできた。そしてそれは政宗の足元に転がる。それは捕縛した襲撃犯の生首であった。政宗は一瞬、驚くと蔵の中からさっき、組員を斬り殺された男が現れる。

「いやーーっ時の流れって残酷だな。幕末の頃だったら怪しい奴と思ったら追い返すのにあの二人、何も警戒しないで俺に近付くんだから緩くなったな」

男が笑顔で話すと政宗達はすかさず刀を左腰に提げて鞘から抜き構える。そして政宗は険しい表情と口調で男に問う。

「貴様、何者だ‼︎」

「おいおい、この俺を忘れたのか。酷いな政宗、せっかくこうして再会出来たのに」

男は笑顔で被っていた三度笠を脱ぎ捨て男の素顔が明らかになり、その姿は長い黒髪を後ろに結び女性の様な美しい白い肌と美男子の顔立ちをしていた。政宗達は男の顔に驚愕し政宗は自身でさえ想像を超える驚きと恐怖を感じる。

「お・・・おっお前は!か・・・かわ・・河上 彦斎⁉︎」

「そうさ、本当に久しぶりだな政宗」

政宗は刀を構えたまま幕末の京都での記憶が蘇る。

幕末の京都。この古の都はかつて様々な思想が蠢き、そして絶えず多くの人が争い血を流した。そんな京都で唯一、政宗が自身のライバルとして認めた一人の人斬りが居た。それが河上 彦斎であった。

初めて政宗と彦斎が出会ったのは明かりが消え去り、静けさと月明かりだけしかなかった祇園通であった。装備を付けた政宗は先頭に立ち同じ様に十人程度の組員を引き連れて見廻りをしていた。そして細い路地から一人の男が政宗の前に立ち塞がる。政宗達は立ち止まり政宗は男に声を掛ける。

「何だ貴様」

男はニヤリと笑う。

「お前が土方 政宗だな」

「そうだが、お前は」

「聞いた事があるだろ、俺は河上、河上 彦斎だ」

男の名前に政宗を含め全員が驚きすかさず刀を抜き構える。

「貴様が人斬り彦斎か!」

彦斎は笑顔で自身も刀を抜き構える。

「そうさ。悪いがここで死んでもらう」

彦斎は踏み込むと一瞬で政宗との間合いと詰め政宗の首を狙って右から斬り掛かる。政宗は一瞬、驚くがすかさず後ろに飛びながら下がる。

(な・・・何て勢いだ!直ぐに後ろに下がらなかったら危なかった)

政宗は心の中で安堵していると後方から二人の組員が前に出て刀を構えて一人が声を荒げる。

「河上 彦斎!今ここで貴様を成敗する‼︎」

彦斎は呆れた表情をする。

「悪いが、お前らじゃ相手にならん」

そう言うと再び物凄い勢いで間合いを詰めて一瞬で二人の組員の首を斬って倒す。政宗もすかさず彦斎に斬り掛かるが、彦斎は政宗の斬撃を自身の刀で防ぎ、再び笑顔になって政宗に声を掛ける。

「さっきのお前の動き見事だったぜ」

政宗は歯を食いしばり鎬の状態から彦斎を押し除け、彦斎は後ろへ下がる。

「嬉しいよ。俺と互角に渡り合える奴と出会えて」

これが政宗と彦斎の出会いであった。そして再び二人は江戸地で再会する事となった。

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