第2話

-2-

数分前、試衛館の表門を警備していた二人の組員。右の組員が左の組員に何気ない話をする。

「なぁ、今日も暇だな」

「そうだな。昨日の吉原での戦闘は凄かったらしいぜ」

「はぁーーっ俺達、警備隊組員も一度でいいから実戦を経験したいよ」

「本当にな」

などと話をしていると二人の目の前に左腰に刀を提げ黒い羽織と灰色の袴を着こなし、黒い三度笠を被った男性が二人に話し掛ける。

「あのーっちょっとお伺いします」

左の組員が男に近付き丁寧に対応する。

「はい、何でしょうか」

「試衛館はここでよろしいでしょうか」

男の質問を聞いていた右の組員が近付き答える。

「ええ、ここで合ってますよ。何か御用で」

男はニヤリと笑う

「ええ、実はここに御用がありまして」

男はそう言うと素早い動きで提げている刀を抜き左の組員の首を斬る。首を斬られた組員は悲鳴を上げず、斬られた所から勢いよく血が吹き出す。突然の光景に右の組員は動揺し後ろに下がり急いで自分の刀を抜こうとする。そして男に動揺した口調で問う。

「き・・・貴様、一体何の真似・・・」

斬り掛かって来た男は物過ぎ勢いで組員の間合いを詰める。そして刀を右片手で持ったまま左上から右下に振り下ろし組員を斬り殺す。

「ぎゃああああああああ‼︎」

斬られた組員は悲鳴を上げ、男はすかさず刀を鞘に収め右方向へ走り去る。

政宗や沖田、永倉、斎藤、島田の他に組員が駆け足で門の前に集まる。政宗は斬り殺され倒れた組員の死体に近付き屈む。

(一瞬だ。正確に急所を狙っている。だがこの剣捌き何処かで)

そう心で語る政宗は一瞬、ある男の残像が浮かび上がる。

(いや、まさかな。でも奴は打首にされたはず)

すると突然、近藤と歳三が来て近藤が大声で政宗に声を掛ける。

「政宗、何があった」

政宗はすぐに立ち上がり近藤に報告する。

「分かりません。俺も来たばかりで」

歳三は険しい口調で政宗に問う。

「お前、蔵の警備はどうした」

政宗はハッとし直ぐに駆け足で蔵に向かう。近藤と歳三も政宗の後に続き、その際に歳三はお松に声を掛ける。

「お松、お前は中に入っていろ!」

「はい!分かりました」

歳三は大声で命令する。

「総司、永倉、斎藤、島田は俺と一緒に来い!他の奴らは試衛館を厳重警備しろ!」

沖田達を含めて組員全員が大声で返事をする

「はい!」

そして沖田達は歳三に付いて行きお松や他の組員は急いで試衛館の中に入る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る