第3章「戦火の京都」第1話
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翌日の昼時、試衛館に戻った近藤達は早速、吉原で捕らえたフランス大使館を襲撃した者を蔵の中で拷問していた。
男は上半身裸で天井から縄で縛り吊るされ身体中に拷問で受けた傷が至る所に出来ていた。皆、装備を外して新しいダンダラ羽織を着て島田は竹刀で男の背中を力強く打っていた。竹刀が男の皮膚に当たり鈍い音が蔵に響いていた。
男が気絶すると斎藤がバケツを両手で持って思いっきり男に水を浴びせる。男の目の前には近藤、歳三、政宗がおり男が目を覚ますと歳三は島田に指示をする。
「島田、待て」
そして次に近藤が男に問い掛ける。
「貴様らの目的は何だ。仲間は何人居る」
男は近藤の問いかけにそっぽを向き近藤はその態度に声を荒げる。
「いい加減に話すんだ‼︎」
男は近藤の方を向き弱々しく丁寧な日本語で話す。
「貴様ら・・に・・・話す・・事は・・・ない」
近藤は男の答えに呆れて斎藤と島田に腕を振って来いと合図し、近藤が出るとその後を歳三と政宗が続き、斎藤は空のバケツを置き島田も竹刀を壁に立てて蔵を出る。
島田が蔵を出ると扉を閉める。そして五人は輪になって近藤が話し始める。
「あそこまでして口を割らないとは」
歳三は近藤にある提案をする。
「かっちゃん、だったら古高を吐かせた拷問方法でやったらどうだ」
歳三の提案に斎藤が意を唱える。
「無理ですね副長。並の者なら効果的ですが、相手は大使館を襲った連中の一員です。捕まる事を想定して訓練されているからやっても無意味かと」
歳三は斎藤の意見に納得する。
「確かにそうだな」
島田も提案する。
「だったら耳を削いじまえば、どっかの地方では耳を削いで口を割らせたって聞いた事がありますよ」
「うんーーーっそれも一理あるな」
歳三は右手で下顎を触って島田の提案に若干、納得するが、政宗が意を唱える。
「例え削いだとしても俺も斎藤さんと同じです。口を破るかどうか怪しいです」
近藤が一旦、話しを切り上げる。
「仕方ない一旦休むぞ。政宗、見張りを頼む」
「分かりました」
近藤らが蔵を後にすると政宗は一人、蔵に面している縁側に左腰に提げている白龍刀を左側に置いて腰を下ろし、一息つく。するとそこにお松が葉に包んだおにぎりを持って政宗に近づき笑顔で話し掛ける。
「政宗、おにぎり持って来たけど食べる」
政宗はお松の問いに笑顔で頷く。
「ああ、いただくよ」
政宗は包んだおにぎりを受け取り膝の上に置いて葉を開くと二つのおにぎりはまだほんのり暖かく、白い米が太陽の光で輝いていた。政宗はおにぎりを一つ右手で取り食べ始め、お松は政宗の左側に座る。お松は横からおにぎりを美味しく食べる政宗の表情にホッこりする。政宗はお松からの視線を感じ、おにぎりを食べながらお松に話し掛ける。
「どうした、俺なんか見て」
政宗の突然の問いにお松は顔を赤くし視線を下に外して慌てた口調で答える。
「い・・・いいや!べべべっ別に‼︎」
お松の慌て様に政宗は一瞬、疑問に思う。
「そっか。何でもないか」
そう言うと政宗は前を向き二つ目を食べ始める。お松は右手を心臓に置く。突然の事で鼓動が早くなる。
(どうしよう、急に聞かれて来たらびっくりしたけど、やっぱり好きな人を前にするとこうなるのね)
自分の心の中で語るお松、そして再び政宗の方を向き持って来たおにぎりの感想を聞く。
「ねえ政宗、私の持って来たおにぎり、美味しい」
政宗は口に入れたおにぎりを飲み込むとお松の方を向き笑顔で感想を話す。
「ああ、美味しかった。ありがとう、お松」
政宗の感謝の言葉にお松は嬉しくなる。
「ねぇ政宗、変な事聞くけど好きな人っているの」
お松は唐突に政宗に質問する。政宗は少し同様する。
「何だよ、いきなりだな」
少しタジタジしながらお松は政宗に聞いた訳を話す。
「いいや、その・・・政宗ってさぁ、お父さん・・・副長に似てとても男前じゃん。だから色んな女の子から恋文を受け取るからその中に好きな人が居るのかなって」
政宗は少し考えて落ち着いた口調で答える。
「恋文を貰う事はあるけど好きになった子は居ないな。あ、でもなお松、俺はお前が好きだな」
政宗の言葉にお松は顔を赤くし、慌てた口調になる。
「えええぇ⁉︎そそそそそっそれって、つつつっつまり、政宗はわわわわわっ私の事が⁉︎」
政宗は笑顔で話す。
「あぁ友達として好きだ。いやぁ本当にお前とが友達で良かったよ」
政宗の言葉にお松は今で高まってた政宗への気持ちがまるで燃え広がろうとしていた火事が急に降って来た雨足で消された様に冷めてしまう。そして先程の口調と打って変わり、お松の目は曇り口調も冷め切っていた。
「そうだよね。うん。変な期待した私が馬鹿みたい、ふっふふふふふ」
お松の変わり様に政宗は驚愕する。
「どどどどっどうした、お松。俺・・・何か悪い事と言ったか」
「いいえ、別に、ふふふふふ」
政宗はどうして良いか分からなり、あたふたしていると門の向こうで男性の悲鳴が上がる。政宗とお松はハッとなり政宗は左手で白龍刀を持って駆け足で門に向かう。政宗の後を追う様にお松も付いて行く。
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