第3話
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外の大通りでは組員達と不逞浪士達の叫び声が入り混じり、他の店を巻き込み屋根の上や店の中で戦闘が行われ、あちこちから多くの客や遊女の悲鳴が上がり慌てて逃げ回る。
大通りの中央で複数の不逞浪士が近藤を切り掛かる。
「新撰組局長、近藤 勇!覚悟‼︎」
一人の不逞浪士が大声で宣言の言葉を発しながら他の不逞浪士も叫びながら近藤に切り掛かる。 近藤は怯む事なく襲って来る刀を素早い動きと愛刀の虎徹で鮮やかに弾き返しながら反撃する。
「えい!せい!とりやぁ‼︎」
近藤が気合の入った掛け声でバッサバッサと斬り付け三人の不逞浪士は悲鳴を上げて斬り捨てられる。他の不逞浪士はその光景に一瞬、怯むが近藤に切り掛かる。
歳三は切り掛かって来た不逞浪士の刀を愛刀の和泉守兼定で防ぐ。鎬を削る状態から左右から不逞浪士が叫びながら襲い掛かり歳三は素早く拳で目の前の不逞浪士の腹に拳を入れる。
「うぉりやぁ!」
歳三の拳を受けた目の前の不逞浪士は悶絶し腹を押さえながら後ろに下がる。そして歳三は素早い動きで左から来る不逞浪士の腹に蹴りを繰り出し、その不逞浪士が怯んだ隙に右から来る不逞浪士の斬撃を弾き返し右下から左上に向かって斬り付ける。そして素早く体を左に九〇度、周りながら愛刀の刃先を地面に滑らせながら舞い上がった砂煙を再び襲い掛かって来た不逞浪士の顔にぶつけて怯ませ上から下に向かって斬り付ける。そして後ろに下がった目の前の不逞浪士に突進し低い姿勢から心臓目掛けて突き、刀は背中を貫き即死する。歳三はすかさず刀を抜き走って右の店に入って行く。
永倉はまるで龍が宿っている様な動きで愛刀の上総介兼重を振るう。激しく襲い掛かる複数の不逞浪士の斬撃を弾き返しその際に不逞浪士の刀にヒビが入る。そして永倉は素早い動きで一歩前に足を突き出し右に向かって横払いの斬撃を繰り出す。不逞浪士はその一撃を防ぐが、決して折れない日本刀が折れ、折れた刃先は勢いよく右の店の壁に突き刺さる。刀を折られた不逞浪士は唖然とし折れた刀を見つめる。だが一瞬で我に変えるが、時既に遅く永倉が繰り出した上からの斬撃を受けて悲鳴を上げて即死する。
島田は右側の店の二階で戦闘していた。狭い部屋の為、上手く立ち回る事が出来ず隙を突かれて不逞浪士の斬撃を腹部に喰らうが、持ち前の巨体と硬い鎖帷子で斬撃を防ぎすかさず不逞浪士の右頬に拳を喰らわせる。不逞浪士は拳を受けて怯むが、すかさず島田に横払いの斬撃を繰り出す。島田は素早く後ろに下がるが、何かにつまずき膝を着く。
「隙やりーーーっ‼︎」
不逞浪士は大声で言いながら縦の斬撃を島田に繰り出すが、島田はそれを被っている鎖頭巾で止め愛刀の大和守源秀国で払い除け、島田は素早く立ち上がるが、不逞浪士は素早く後ろに下がり今度は突きを繰り出す。島田は素早く右へ避け不逞浪士の刀を叩き落とす。そして両手で不逞浪士の脇腹を掴み勢いよく窓へ放り投げる。
「うおいしょーーーーーーっ‼︎」
島田によって放り出された不逞浪士は叫びながら窓の木製の窓柵を破り大通りに落ちて即死する。
只三郎は向かいの店の入り口付近で一人の不逞浪士に斬り掛かっていた。不逞浪士は只三郎の斬撃を防ぎ鎬を削る状態で只三郎に押されていた。立ち止まった時に後方から二人の不逞浪士が声を荒げて只三郎の背中目掛けて切り掛かる。只三郎はすかさず左手で刀を持ち右手で左の腰に下げていた小刀を抜き不逞浪士の腹部に突き刺し倒す。そして素早い動きで後ろに九〇度周り、その際に右手に持っていた小刀を左の不逞浪士に投げる。投げた小刀は正確に首を貫き、その光景に右に居た不逞浪士は驚いたが、我に返り目の前を向く。そこには一瞬で間合いを詰めた只三郎が居り横払いの斬撃を受けて悲鳴を上げる。
今井は只三郎の居る店の淵屋根を後方から追って来る四、五人の不逞浪士から逃げていた。その光景に一人の不逞浪士が嘲笑う。
「あいつ、逃げてばかりでそんなに強くないのか?」
「なら俺が行く!」
そう言った後ろに居た不逞浪士が前の不逞浪士を追い越し今井に斬り掛かる。今井は急に立ち止まりくるりと周り右手に持っていた刀を素早く反りの方にひっくり返す。そして驚異的な幅跳び力で自身に斬り掛かって来た不逞浪士の頭に強烈な一撃を喰らわす。一撃を受けた不逞浪士は悲鳴を上げる事なく頭から血を流し絶命し、さらに一撃の勢いから今井は空中で体を一回転させ追い越した不逞浪士に同じ一撃を頭部に喰らわす。今井はそのまま屋根上に降り立ち残りの不逞浪士を睨みつけすかさず刀をくるりと刃の方に回して物凄い勢いで切り掛かる。
近藤らや只三郎らが奮闘するが、不逞浪士が数が多く今だ劣勢であった。近藤と歳三は背中合わせでお互いに息切れをしていた。
「くそ!余りにも数が多すぎる!このままだとやられちまうぞ、かっちゃん‼︎」
歳三の助言に近藤は何故か笑顔で歳三の方を向いて話す。
「何だトシ、お前らしくない。流石の鬼の副長も今回ばかりは弱音を吐いちまうか」
近藤の言葉に歳三は少し頭に来て声を荒げる。
「んなわけねーーだろ!こんな状況、幕末の京都に比べちゃ緩い方だ!それに弱音を吐くくらいだったら武士らしく死んだ方がましだ」
近藤は怒る歳三の姿にくすりと笑う。近藤の笑顔に歳三はハッとなり笑顔になって前を向く。
「ありがとう、かっちゃん。気合が入ったぜ」
近藤も笑顔で前を向く。
「俺もだトシ。お前の怒る姿を見て気合が入った」
目の前から不逞浪士が勢いよく二人に斬り掛かって来る。近藤と歳三は鬼の様な形相で叫ぶ。
「うぉーーーーーーーーっ‼︎」
次の瞬間、左の方から政宗と沖田が物凄いスピードで不逞浪士を斬り裂く。そして駆けつけた斎藤が近藤と歳三に近づく。
「局長、副長、大丈夫ですか」
「斎藤、いや少しやばかったよ」
近藤は安堵した表情で斎藤にそう言う。歳三も応援が来た事に安堵するが、歳三は政宗の方を向き怒鳴る。
「政宗、遅いぞ!一体何してた!」
政宗は笑顔で答える。
「すみません!思った以上に天下蝶の不逞浪士が手強くて」
「こっちがやばい状態だったらすっ飛んで来い‼︎」
沖田は歳三に近づき宥める。
「まあまあ、トシさん。そんなに怒らなくても」
歳三は沖田の方に顔を向け怒鳴る。
「総司、お前もだ!」
歳三の姿に近藤は再び鬼の様な形相になって右肩に自分の左手を置く。
「トシ、怒鳴るのは後だ。今は目の前事に集中しよう」
歳三は舌打ちする。そして近藤が前に出て大声で組員達に命令する。
「皆聞け、応援が来た。出来る限り多くの不逞浪士を捕縛しろ」
近藤の命令に組員達が大きな掛け声をする。
「おーーーーーーーーーーっ‼︎」
政宗と沖田、斎藤は勢いよく苦戦している組員のところに向かう。
「それじゃ、俺達も行くかトシ!」
歳三は笑顔で頷く。
「ああ、かっちゃん!」
二人は政宗と沖田、斎藤の後に続く。
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