第616話 次の候補はもう決まっている
「彼女は最初からあんな感じだったのか?」
「どうかしらね。彼女が召喚された時は、もっと大きな子に紛れたお人形のようだったわ。でも元々武術は習っていたみたい。師匠は
なる程ね。その位の年齢差なら、武芸もそれなりに教える程度は出来そうだ。でもそれは子供の鍛錬程度だろう。
だけど彼女のアレはそんな次元じゃない。
本格的にはこちらで修練を積んだのだろうけど、普通ならあれほど強力なスキルがあったらそれに甘んじてしまう。
だけどそれでは満足しなかった。より上を目指し、記憶にある技をひたすら修練したってとこかな。
その後、
「孤児院の他の人は?」
「はい、全員召喚されましたが……その……」
「分かった。それは今度全員日本へ帰そう」
「それは助かるわ。わざわざ交渉しなくてもいいみたい。やっぱりクロノスは良い人ね。それにあなたは先代よりも優しいし、激しかった。やっぱり若さ? それとも経験かな?」
「このロリコ……」
俺は咄嗟に
その後は丁度戻って来たヨルエナや
ヨルエナの体調に問題が無かった事もあるし、
彼女を本当の意味で安心させるには、実際に彼女の仲間を何人か召喚しておく必要がある。
休むのはそれからだ。
◆ □ ◆
「取り敢えず話は付けた。反乱に参加した中で、教官組は
「二人とも実力は確か。それに
「それはありがたいな」
これから召喚する人間とは出来る限り戦いたくはない。
貴重な戦力であるのもそうだが、こちらに犠牲が出てもおかしくいない連中が来そうだからな」
「それでもう一人の指導者っていう
「本当に何も聞いて来なかったのね」
「彼の身の上話を聞いた後は、ひたすら……ね。こちらの話をする余裕はなかったかな」
「ケダモノ」
「これまでの状況説明を話し終えたら、後は一方的に襲われたんだよ」
「最初だけね。すぐに逆転されて、
「
「まあ落ちつきましょ。
「私の知らない私の話は良いわ。それより
俺も
「どの位こっちにいたんだ?」
「34年です。
「……すみません、私はもうその頃には」
「気にするな。誰かが知っていればいいんだ。それに、だからこそ今この研究があると言える。嫌な出来事だった事は確かだが、今回は良い方向に転がったと考えよう」
「ふうん。
そういえば、その辺りの事情を知らない。
ダークネスさんと彼女の間に、何が有ったのだろう?
「わたしの初めての人だからです! 召喚されたばかりで右も左も分からなかった私に、色々な事を教えてくれました」
「ロリコン」
「それは俺じゃねーだろ!」
今でこそ82歳だが、召喚された時は13歳だぞ。
節操が無さすぎる。
いや、今クロノス時代の俺に跳ね返って来た。この話は忘れよう。
「性格的には?」
「基本的には誰とも話さないかな。最低限の返事をする程度」
どうやって教官なんてやっていたんだ。
しかもその頃は、まだまともに育てて居た頃だろうに。
「フランソワ、
「残念ですが、同期の人は誰も送還も蘇生も出来ていなくて」
「今の段階では無理です」
「まあ数が多いからな。じゃあこうしよう」
「え?」
一瞬だけ塔が光り、そして消える。
「塔に反応が出ました。この痕跡で良いのですか? それに、今いったい何を?」
「まあ何度も話していた事の応用だよ。魂だけ召喚して、また大変動の奔流に戻した」
「凄い事をしますね。それ以前に特定はどうやったんですか? 面識は無いですよね?」
「面識はないが特徴は分かったし、ここにリストもある。だからさっきから。ずっと対象外を外していったんだ」
「それでスキルの紋章が出ていたんですね」
「まあ
「なんとなくの習慣だな」
「それで出来てしまうのが凄いです! わたしのスキルは使い続けるのは無理ですので」
あんな物騒なスキルを使い続けられたら地形すら変わりそうだ。
「その点は風見もだな。アイテムで隠している様だが、ずっとスキルを使いっぱなしだ」
クロノス時代も使っていたトレードマークとも言える丸眼鏡。
だけど当時は、すぐ複製品に変えた。
その点はひたちさんも言っていたが、日本から持ち込んだものは大切に残しておくんだ。
当時も色々と改良したレプリカを使っていたが、今のも別の改良が施してある。スキルを隠すのもそうだな。
俺がクロノスの頃は無かった機能だ。
まあ認識阻害と同じで、俺や育った召喚者にはあまり意味はないけどね。
「……まあ、コピーを解くわけにはいかないのよ」
「そういえば聞いたことがありませんでしたが、大丈夫なんですか? 私の腐敗もある程度は持続できますが、それでも3時間程度が限度です。お二人はどうやって24時間ずっと使い続けていられるんですか?」
「その辺りは特性と考えて貰えば良いさ。真似はするなよ、精神がいかれるからな」
「そんな人を沢山見て来ましたが……」
だろうな。
そこで制御アイテムを失って地上に戻れなかったら、その後は悲惨だろう。
まあ俺と風見はね……条件さえ満たせばケアは楽な方ではある。
それに性質だろうか、他のスキルとはタイプが違う。
今この場だと、俺と風見以外がスキルを使うという事は、先ず水道の蛇口を全力で開くようなものなんだ。
スキルを使用するとなった時点で、もう全力が出せる支度が整うって事だな。
その後調節もできるが、最初の時点でどうしても大きな負担が出てしまう。しかも制御が出来なければそのまま全開で止まらない。
俺も初めての時はそうだったよ。
だけど俺たちのスキルは事情が少し異なる。
俺は基本的に、ほんの少しだが常時発動している。そうでないと、このスキルは意味が無い。
こうなると、他の連中と違って常時発動状態をキープできるわけだ。
ただやっぱり、派手に使わないと成長も微々たるもの……というより無いに等しいのだけどな。
この辺りは、元々特殊なスキルだという事も関係しているんだろうとは思う。
或いは特殊なケアだったからこんなスキルに対応できたのか。
まあ卵が先かなんて話はどうでもいいか。
ただ当然ながらケアは必要だ。だがそれに合わせるかのように、条件はある意味難しく、ある意味簡単となっている。
たまにそのせいで地獄を見るけどな。
そんな訳で、俺たちはある意味似た者同士と言えるんだよな……なんて考えると
なんだか
やはりそれだけ激しい戦闘だったのだろうし、彼女たちにとっては、今この瞬間も戦闘中の記憶がある。
忘れられず、時間の感覚も無い俺たちにとっては、この復活は必ずしも福音ではないって訳だ。
今更やめないけどな。
「ふうん……じゃあもう
「ああ、早速やる。分かっていると思うが」
「
それは反乱をって事だろうな。
やはり彼女を最初に召喚して良かった。
それに昨夜はものすご……っと、気を付けよう。迂闊に思い出してはいけない。
「では再生を始めよう」
こうして
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