第395話 色々と開発しているんだな
こうして着々と反撃の準備を進めながら、ラーセットも周辺国も発展していった。
北方の大国、マージサウルもな。
未だに直接的な国交は無いが、あそこは世界から孤立しているわけでは無い。
どちらかと言えばラーセットが周辺の半分と孤立したままと言って良い。
そんな訳で、ラーセットが南方諸国らに売った発掘品は、数倍の値段に膨らんで北にも流れたわけだ。
それでも多くの人命を犠牲にして発掘を繰り返すより、早くて安い。しかもその時に必要なものを選べる点は大きい。発掘品は何が出るか分からないからな。
今では、北も本格的にこちらと国交を樹立しようとする動きが大きくなってきた。
まあその時は、精々吹っ掛けてやることにしよう。
あそこの同盟国――というか従属国のリカーンがやった行いは今でも忘れてなどいない。
俺たち召喚者は当然だが、ラーセット人もそうだ。恩も恨みも長く残るお国柄だからな。
まあそんな訳で順調に書類を整理していたある日、フランソワに呼び出された。
何だろうと思って行ってみると――、
「……これは何だ?」
場所はラーセットの一角。
区画整理の結果、色々なテストやイベント会場にするため平地にしてある場所だ。
そこに、どこからどう見ても怪しげなものが置いてあった。
「見ての通りの、ガトリングガンとパンジャンドラムです。奥の壁は他所へ被害が出ないようにするための的ですね」
片方は銃身を円形で繋ぎ、回転しながら発射する機関銃だ。
大型の銃弾を連発すると、どうしても銃身が焼き付いて破損してしまう。
そこで銃身を回転させながら順次使う事で、長く撃ち続け事が出来るようにした代物だな。
端的に言うと、物騒な代物だ。
しかしもう片方はまるで意味が分からない。
奥の壁って言うのは設置してある分厚い金属板か?
もう嫌な予感しかしないぞ。
「何でこんな物を?」
「他の召喚者の方や現地の人と話している時に、どうしても銃の話が出るんです。そこで使えるようにならないかと相談されましたので」
成る程ね。前の時代とは多少は違うだろうが、こんな感じで火薬の研究が始まったのか。
何せこの世界、火薬は不安定なんだよな。
俺も昔は、銃が手に入ればいいのにと思ってひたちさんに相談したんだっけ。
けれどダメだった。
大変動などを引き起こすとされている、この星を流れるエネルギー。
そのせいで、一部の化学はこの世界では通用しない。
さほど影響のないものもあるが、火薬はかなり影響される。やはり相性があるのだろう。
だがどっちにしろ、召喚者が銃を使う事はあまり無さそうだ。
何せ攻撃回数に対する重量が半端ない。弾は重いのだ。
そして召喚者として育ってくると、正直銃で撃つより斬った方が早い。
遠距離攻撃も、そこまで成長すると弓矢の方が強いまである。
使うとしたら現地人くらいなものだろうが――、
「何でこれにしたんだ?」
普通は拳銃とかの簡単な方から作るだろう。
「簡単なリボルバーからと思ったのですが、これもこれで簡単ですし。それに短時間で結果を出すには効率が良いのです」
後者は分かるが前者は何を根拠に簡単なのかが分からん。
まあ見るからに単純な造りだが、俺が作れと言われたら無理だな。
なにせ俺は銃の構造なんてネジ一本知らんからな。
「火薬自体はどうなんだ?」
「それを見て欲しいんです」
そう言うと、手元の有線のボタンを押すと、ガトリングガンは自動で撃ち始めた。
最初は空で暫く銃身が回った後、勢いよく弾が出始める――が、
「あらら、やっぱり」
30発ほど撃った時点で、派手な音を立ててガトリングガンが炸裂してしまった。
それに――、
「まともに弾が出ていない事もあったな」
「さすがクロノス様、あれが見えていましたか。普通は銃弾なんて見えませんよ」
そういうフランソワも、ある程度見えているんだよな。何と言うか、いろいろな方面で才能豊かな子だ。
「まあ少しだけだよ。しかし派手に爆発したな」
「普段もそれなりに差があるのですが、大体誤差の範囲に収まっています。ただたまに、火薬の爆発力が10分の1ほどになったり、逆に10倍ほどになったりするんです」
そんな銃、恐ろしくて使えんわ。
「まだまだ改良の余地ありです」
フランソワはやる気の様だ。
銃自体は、一応は完成しているとひたちさんに聞いた。
将来的にはある程度の実用化には成功したんだよな。
まあそこの頃でも不安定だったそうなので、腕一本吹き飛ばす覚悟が無いと使えないな。
「それで、こちらのパンジャンドラムってのは何だ?」
見た所、金属製の糸巻き道具である。
左右に円形の車輪が付いており、その中央もまた円形の筒で繋いである。
規模を考えたら、コードリールと言った方が良いか。何せ車輪の直径は俺よりもでかい。
「これは第二次世界大戦の時に、開発された無人攻撃兵器です。本当は車輪の所にロケットを幾つも付けて、その推進力で進むんですよ」
「巨大な花火で進む糸車か。さぞかし派手で見栄えも良いだろうな――ん? 攻撃兵器?」
「はい、この中央の筒の中には火薬がぎっしりと詰まっています」
この時点でどんな兵器かは十分に分かったわ。
ただ
「これは拠点攻撃用か」
「ご名答です」
満面の笑顔でフランソワは応えるが、作ったものが怖すぎるよ。
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