第394話 思ったよりも聖堂庁の代替わりは早い
こうして情報交換や今後の話し合いを終えて、俺たちは帰路についた。
「あの程度の話し合いで良かったの? もっとじっくり詰めるのかと思ったけど」
「今回は、奴の本体が動いていない事の確認と、そこまでの経路をちゃんと把握できているかの確認さ。それと無茶をしていないかの確認もあった」
ついでに言えば、
その点に関しては、今のところ問題なさそうだ。
「それで結果は満足だったの?」
「現状を考えたら十分に及第点だよ。あとは
「また無茶な事を。大体それ、必要なの?」
「まあ保険だよ」
といいつつ、絶対に必要になるであろう確信はあった。
「それに案外無茶でもないさ。さすがに伝説の時代まで
「なるほどねー。後はその本体が地上の国を襲うのが先か、それともクロノス様の計画が完了するかの勝負って所ね」
「まあそんな所だな」
とは言いつつ、まだ倒すという面に関しては完全な答えが見つかってはいない。
ただ単に倒すだけなら、総力を結集すれば簡単だ。極端な話、俺と
だけど今更だが、必要なのは倒す事ではなく滅ぼす事だ。この世から――というか、この時間の中なら完全にな。
それまでは生かしておいてやるさ。
問題は、活動再開までのタイムリミットだな。
こうして方針は完全に固まった。
さすがにいつも血眼になってアイテムを発掘するのも精神的に疲れるらしく、彼らは結構休む。その時間の一部を使ってもらったわけだ。
当然報酬は弾んだので、案外人手不足になる事も無かった。
特定のチームにしなかったのは、
以前の反乱とまではいわないが、どんな人間がどんな思考で動いているかなんて分かりはしない。
昔軍務庁長官だったユンス・ウェハ・ロケイスとの約束があるから短絡的な事はしていないが、ラーセットには相当数の諜報員が入り込んでいる。
あそこは今や、世界中の謀略が渦のように集まっているよ。
それはさておき、召喚者全体の運営もこれまで以上に順調となった。
それでも更に未知の領域を求めて奥へと行くのは人の性であろうか。
まあ大抵、そんな事をするのは
そんな訳で、彼女のチームは常に行方不明だ。
そして3年の時が流れ、第17期生が召喚される事になった。
死者は驚いたことに0人。チームを組んでいた10人がまとめて帰還する事になったため、10人を召喚した訳だ。
だけど残念と言って良いのか、今回の召喚者には知り合いは誰もいなかった。
まあ以前の頃に召喚された人間を全員把握できているわけでは無いしな。相当死んでいたようだし。
そう考えると、高校生の俺たちが召喚されて来るのは200年後とか300年後とかになるかもしれない。
それはそれで困るんだけどね。奴の本体が動いちゃうだろうから。
□ ■ □
それから更に7年。安定すると、時の流れも速いものだ。
今日は第18期生10人を召喚する日だ。
本当は2人とか3人とか減った時にその数だけ召喚しようという話も出たが、そこまで少数だと確実に孤立する。おそらく定着はしないだろう。
それどころか、知り合いがいない不安から即帰ってしまう危険の方が高い。
だから10人に減るまで待ったんだ。
今回は、15期、16期からそれぞれ一人が帰還。そして17期生から2人死亡者が出てしまい、それで不足が丁度10人になった。
ただ一悶着あって――、
「私が召喚します!」
“先代”神官長のクナーユ・ニー・アディンがまだ召喚したがって困る。
よほど楽しいんだろう。神秘の探究こそが生きる意味だと公言している人だしな。
とても宗教家のセリフとは思えない。
実際、やりたいのだからやらせてあげたいのが人情なのだが――、
「クナーユ様、落ち着いてください。もうご無理の出来ないお歳なのですから」
「失礼な! 私はまだまだ若いです!」
「それは存じておりますが、召喚に堪えられるかは別の問題です。もし途中で倒れられて召喚が失敗したりなどしたら……」
部下にそう言われると“ぐぬぬ”と擬音でも出そうな感じの顔をしたが、さすがにこれ以上の抵抗は出来なかった様だ。
実際召喚は国策の中でも最重要に属する。僅かの失敗も許されない。
かつて50の制限を教えなかったころ、予定数が召喚出来ずミーネルがパニックになりかけたのもそういった事情だ。
実際の所、彼女はまだ34歳。十分に若いんだけどね。
それでも、召喚に堪えるだけの体力はもうない。結構大変なんだな。
そして神官長の後を継いだのは、マーシア・スー・アディン。
かつて俺を召喚したミーネルが産んだ双子の姉の方だ。
妹の方はそれほどの力は無く、ちょっと下の立場――この場合は司教だが――をしている。
あの子たちは、こうやってこの世界で人の営みを紡いでゆく。
だけど今の俺たちは違う。そういったものとは完全に切り離された存在だ。
そして今帰れば、結局は滅亡という現実が待っている。
さて、しっかりやならなきゃな。
俺たちの未来のためにも、帰って行ったみんなのためにもね。
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