第379話 奈々も奇妙な立場だったのか
「それで、会ってみてどうだったんだ」
「興味が無かったとはいえ
「二人っきりで会っていたわけじゃないのか?」
「今の話の流れで、そんな事が許されると思うのか?」
「思わないな」
「一応、部屋にいたのは
確かに戦力としては何の意味も無いな。
だが暴れるなら倒さなければならない。良心の呵責用に置かれた羊って所か。
「あと、気配があったな。誰かがいた」
「認識疎外か。クロノスか?」
「今考えても、空気が違うな。別人だろう。だけどどうにも似た感じは今でもたびたび感じてはいるんだ」
俺たちの記憶は風化しない。
だけどそれはラーセットにいる間だけだ。地球ですごした時間の分、やがり記憶が薄れていく。
それでも、
ならば今いる誰かだろうが、当時と今ではそれぞれの立場がまるで違う。
認識疎外はクロノスがかけたのか? だとしたらその点に関しては向こうの方が上だな。俺には出来ない芸当だ。
それにしても、密かに
しかしこれで一つ分かる。
やはり
そして最終的には、
その後どうなったのかを知りたいが、こればっかりは不可能だ。諦めるしかないか。
「それで話を戻したいんだが」
「ああ、会った時の話しか」
「どんな小さな点でも良いんだ。何かないか?」
「無いな。当時の話なんかも色々としたが、特に不自然な点は無かった。知っているだろうことは知っていたし、知らない事は知らなかった。ちゃんと
酷い奴だなー。
「他には何か無かったのか?」
「何も無いな。さっきも言ったが、別段変わった所も無かった。あんな世界で
さっきから胸にぐさぐさと刺さる、言葉とか思い出とか色々な。
だけどちょっと足りないぞ。いや、刺さった物じゃなく話の内容がね。
「その時、
「気にもしていなかったが……確かに付けていたな。左手の小指だ……間違いない」
「
「あいつは左手の薬指に付けていたな。似合っていなかったのでそっちは覚えている」
普通は逆だろう。今更言いたくはないが、もてないぞ、お前。
さてそれはともかく――、
「左手の小指に指輪を付ける意味……
「知るわけがないだろう」
こいつには、あの双子の爪のアカを煎じて飲ませてやりたい。
「指輪を付ける手と指にはそれぞれ意があってな。小指の場合、右手だったら永遠の愛への誓い。左手だったら、幸運を呼びよせる為と言われているんだよ。だから互いに愛し合っているというのなら、
「そんな意味があったとは初耳だ。覚えておこう」
全く――ダークネスさんはちゃんと知っていたのにな。
……って考えてみれば、やはり前の俺も気になっていて
だとしたら納得……いや、やっぱりおかしいぞ。どうにも気にかかる。
「なあ、ちょっと話を飛ばすが、ダークネスさんとは戦ったんだよな?」
「そうだな。あの時の事は、うっすらと覚えている」
「何か気が付いた事は無いか?」
「ふむ……あいつは俺の事をよく分かっていたよ。内面まで完全に言い当てていた。まるで俺自身のようにな。今考えてみれば、それは当然だろう。今の俺が
「それなんだけどな。今まで召喚者を元の世界に戻す手段は無かった。それは、俺だからこそ言い切れる。当時の俺にはまだ不可能だった事だ」
「それはそうだろうな。こっちで死んだら、日本でもやはり本当の死だ。それは言われるまでもなく肌で感じていた。召喚者の多くも薄々は分かっていたよ。だから何度も反乱を起こされたんだろう。その辺りは当時色々と調べたさ」
「ならさ、あの
「おい、俺はどうなった」
「最後の最後だよ。よくいうだろ、こういう時は身内を最後にするものだって」
「女どもは先に帰す気だったようだが?」
「大事な人たちなんだから当然だろ」
「やっぱお前、いっぺん殺すわ」
じりじりと迫って来るが、今ここで
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