第331話 新たな共犯者だな
いや待って、仕方ないじゃないか。俺の意思でこうなったんじゃないんだよ。
何て言い訳しても仕方がないな――、
「まあ、
言った瞬間、”あ、セポナを襲ったわ”と思ったけど、あの時はひたちさんもいたからな、うん。
というかミーネルもか? 多少は合意の上とはいえ、考えてみれば案外多いぞ。
「とにかくだ、そういった理由で俺は普通ではありえない程に無茶な状況に放り出された分、通常の召喚者とは比較にならない程に成長した。ラーセットの被害を抑えて救えたのも、反乱した召喚者たちと戦えたのも、召喚した人たちを日本に帰せるようになったもの、全てはその結果だ。特に召喚者を日本に帰す事は、俺がクロノスとなった今の代から出来るようになった事でね。俺が最初の召喚された頃は、召喚者を帰す事は出来なかった」
「それはおかしくないですか? クロノスさんが召喚されて、日本に帰って、今度は過去に召喚されてラーセットを救って、また召喚されてくる自分を帰さなきゃこのループは成り立たないんだよな? あんたは……いやクロノスさんはどうやって元の時代に帰ったんだ?」
「召喚アイテムの時計があるだろう。あれの一部を使ったんだよ」
「一部ですか?」
うーん、毒を食らわば皿までか。この際これも話しておこう。
「秒針が使用された。それを俺に刺して日本に帰したんだ。召喚アイテムだからな、送還にも使えたって事だろう」
「その秒針は帰った時にどうなっていたんです? それと、今のクロノス様が召喚者を帰せる根拠ってなんです?」
「秒針は向こうでは消えてきた。きれいさっぱりね。だけどこっちの世界に戻ったらしっかり刺さっていたよ。多分だが、これが呼び出されるキーアイテムだろうなとは思っている。そんな訳で今この世界には秒針が2つある。もしこれを
「冗談じゃないですね」
「ああ、しないよ。それにこうして改めて考えてみても、お前は記憶を失ってこの世界に来てもクロノスとは名乗らないだろう。それにそのスキルでラーセットが救えるとは限らない。やっぱりこれは俺が代々やっているのだと思うよ。それと俺が帰せる保証に関してだが、実際帰した奴が向こうにいたんだよ。ただ俺も向こうもラーセットの記憶はなかったから、当時は成功を祝う事も無かったけどな」
「なるほど……」
「でもそれだと責任重大ですね。クロノス様が死んだら、過去のラーセットも未来の地球も滅びるって事なのですね」
「端的に言えばそうだ。改めて纏めよう。こちらの世界でラーセットを襲った
「それはどのくらいの時間が残されているんで?」
「色々と歴史の流れが変わっているからはっきりとは言えないが、あと数十年って所だな。以前は召喚が始まってから大体百年くらいと聞いている」
「長い様で短いですね。もう一つだけ聞いていいです?」
「何でも聞いてくれ」
「あたしたちは召喚された日に帰るとして、その時までにその
「それは確実だろうな」
「その時、クロノス様が帰った世界はどうなっているんです?」
「俺は物心ついてからの人生や、召喚され、また戻って、そして今に至るまでの続いた記憶を持っている。これは先代の俺とは違う記憶だ。だから過去を変えても俺の現実は変わらない。帰っても記憶の無い俺は確実に死ぬし人類は滅んで終わりだ。まあ奴にも知能はあるそうだし、新たな知的生命体として地球に君臨するんだろうな」
「やっぱりそうですか。ならどうして、人を騙して、恨まれて、命を狙われて、それでもこんな事をしているです?」
「なんでだろうな……使命感みたいのじゃないと思う。これが百パーセント正しい事だなんて思っちゃいないしな。ただ今後、確実に俺が召喚されてくる。何と言うかな――将来を誓い合った恋人がいるんだ。だけど、その俺も過去のラーセットに召喚されて奴と戦う事になる。だからその時までに奴を倒し、倒し方も教える。そうすれば、少なくとも次以降の俺は恋人と生き続ける事が出来るし、より効率化する事で召喚者の犠牲も減らせるだろう。だからやるんだよ、俺じゃない俺の未来のためにな」
「今のクロノス様には、もう未来はないのですね」
「そうかもしれないが、そうでもない。飽きるまで、何百年でも何千年でもこの世界を楽しむさ。案外、地球で過ごすよりも長く濃い人生を送れるかもしれないぞ。もちろん、地球に現れた奴さえ倒せば、もう新たな召喚はしない予定だ。ラーセットの人達を説得するには少し手間がかかるだろうが、それはその時に考えるよ」
「その時は、私も考えます。そのためにこうして残ったのですから」
ああ、
「それで、貴方がたはどうするの?」
「昔の俺なら帰りましたよ、ええ、今でも帰りたい。でも帰ってどうするんです。死が身近に無かった頃は、死ぬ危険があると言われたら一歩も踏み出せませんでした。でも今こうして、何人もの人が死んでしまった道の上に立っているんです。今更止まれませんし、引き返す事も出来ません。それに――」
「それに?」
「地獄に落ちろと思っていたクロノスさんは、もうとっくに地獄にいるんですよね。なら最後まで見届けさせてください」
「後悔はしないです?」
「そういう
「あたしは最初からもう決めていましたよ。今更です」
そういうと俺の目を真っ直ぐに見つめ、
「あたしは帰りません。この世界への興味が尽きないんです。どうせどちらかの世界で一度死ぬのなら、こっちで死にたいと思うです。そんな訳で、これからよろしくお願いしますですよ」
「ああ、よろしく頼む」
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