第326話 嫌な決着だ
こういう典型的なバカの方が、案外と駆け引き無しにペラペラしゃべるかもしれない。もう自暴自棄になっているしな。ある意味チャーンス。
「参考まで聞いておこうか。俺の言った事が嘘だとか言ったのは誰だ?」
「知るかよバーカ!」
ダメだこりゃ。直感が伝えている。こいつは本当に知らない。おそらく
もうちょっと賢ければなと、さっきの考えをくるりと否定しておこう。
ついでに
まあゴキゴキと音がしたのでそんなに可愛いものでもないが。
さて――と
確かにエネルギー系のスキルをそのまま返すと相当きついようだしな。彼らが持っていた薬では治しきれなかったのだろう。
「もう戦えないようだな、
「侮るな……ここまでしておいて、自分だけ帰るなど……するわけがないでしょう」
「仕方がない。
「確かにもう俺たちに出来る事は無い」
「だけど、あたしたちにも意地があるの。リーダーが帰らないのなら、あたしたちも帰らない」
「ふう……
「……そうだな。ならお前たちだけは――」
「たとえ帰るにしても、お前の力などは借りない!」
そう叫ぶと同時に、
馬鹿な事をする。
「たとえ帰っても、お前の事は忘れるものか! もし向こうで出会ったら、必ず皆の仇はとってやる。忘れない事ね!」
そう言うと、
口元から流れる毒々しい紫色の液体が、何をしたのかを物語っている。
「早まった事をしたものだ」
「早まってなど……いない。これが敗れたという事よ。アンタはどんなに偉くても……我々の敵。情けは受け……ない……」
こんな決着など望んではいなかった。彼女を救う事もスキルを使えば出来る。
だけどそれは彼女の望みだろうか?
そんな事は関係無いと、医者だった頃の俺ならいたかもしれない。地球には地球の常識があった。
けれど、ここは違う。彼女は学生ではない。彼女は召喚者。そして戦士。仲間を率いて裏切り、敗れた。
共に同じ道を歩んだ仲間は全て死に、彼女だけに生き残って日本へと帰れという――ただの
結局何も出来ぬまま、彼女はもう事切れていた。
これによって、ユンスの死から――まあ実際にはもっと前から入念に計画されていた反乱計画は水泡に帰した。
実際には連絡の取れない召喚者の安否や行方が全部分かってからでないと結論は出せないが、もう確定だろう。
問題はリカーンだが、これは今の段階で手を出すのはダメだ。約束したからな。
エデナットも優秀な人間だ。こちらの件は、彼に任せよう。その上で要請があれば動く。
もしくは、同じような事をした時に俺に見つかったらだな。
この後、6人全員を埋葬して俺はラーセットへと帰還した。
今生き残っている全員に全てを話したいところではあるが、さすがにそれはダメだな。
だけど今残ってくれた教官組の3人には、きちんと全てを話すしかないだろう。
そして、その上で決めよう。今後どうするのかを。
今やあの頃とは状況が大きく変わった。同じシステムを踏襲する必要はない。
というかする予定も無かったけどね。
召喚庁の執務室には、予定通り
「あれから
「いないよ。そちらは終わったんだね」
「ああ、終わった。そんな訳で
俺は素直に、深々と頭を下げた。
これから話す事を考えれば、こんな事じゃ足りないだろう。
だけど先ずは、謝罪しておきたかったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます